きらきら染まる
「いっくよー!」
開始早々。キララが人差し指を立てると、その差している方向、上空に何か光る物が現れた。
それはガラスの破片のような物。形が様々で、ガラス瓶か板ガラスを適等に割った破片みたいなものが十数個、夕方みたいな空の色をキラキラ反射して浮いていた。
そうか、アレが名前の由来なんだ。
「いっ、けぇー!」
キララは合図と共に手を下げる。瞬間、ガラス片が降り注いできた。
「そういうことか!」
ユイカも理解したらしい。わたし達はガラス片の雨から避けるため左右に別れ、前へ走った。
「サキ! お互い正面が相手でいいな!」
「うん、りょーかい」
わたしの向かう前にはキララがいた。
「もーっと降れー!」
キララは新たなガラス片を空に生み出し、今度はわたしだけにめがけて降らしてきた。
「よっ、ほっ、はっ」
わたしはひょいひょいっと避けながら、キララとの距離を詰める。
後一歩進めば手が届く。そこまで来た所で目の前に落ちてきたガラス片に阻まれて距離を取った。
うーん、これはマズい。
能力を、駆けつけるためには一度は相手に触れないといけないし、そもそも格闘技しか攻撃方法のないわたしは近付かないことにはダメージも与えられないし。いつも通りならユイカがいるからなんとかなるかもだけど、今は違うし。
つまりは……どうすれば良いんだろう。
などと考えている間もキララの攻撃は続き、わたしは除け続けるしかなかった。
そういえばユイカの方はどうなったんだろう。気になったので、ガラスの雨を避けながら見てみると。
「へっ、なかなかやるじゃねぇか」
「それはどうも」
ユイカと相手……アカナの距離はわたしとキララよりも近く。二歩も進めばお互いの攻撃が当たる位置に立っていた。
ユイカはもちろん握り拳。その前に立つアカナは、
「それでは、続きといきましょうか」
両手にキラリと輝く、ガラスの破片を持っていた。
キララが降らせているような大きくても手のひらサイズの物じゃなく、30センチはある大きめのガラスの破片を両手に持っている。
両手にナイフを持ったようなアカナと無手のユイカがぶつかった。
ユイカはガラスを弾き、アカナは拳を避ける。数回の攻防の末、2人は再び離れた。
「これほどの攻防、素晴らしく思います」
「オマエもな」
なんだか友情が芽生えそうな雰囲気だなー。こっちは避けるので精一杯だけど。
幸いなのは、キララの攻撃は上からしか来ないってことかな。これが色んな方向からだったら危なかったと思う。
「それでは、本気で参ります」
アカナはガラスを握る手に力を込める。すると、持ち手の部分からゆっくりとガラスが赤く染まっていった。
そして透明だったガラスの破片は……血のように鮮やかな赤に染まった。
「な、なんだよ、それ…」
「すぐに分かります」
アカナは素早くユイカとの距離を詰めた。すぐに気付いたユイカは両手を交差して防御の体勢を取り、アカナは構わず交差された真ん中に赤いガラスを突き込んだ。
次の瞬間、ユイカは後ろへ吹き飛ばされた。
「おゎ!?」
「おっと」
その飛ばされた先はちょうどわたしのいる場所で、飛ばされてきたユイカをなんとか受け止めた。
「大丈夫? ユイカ」
「おぅ、ワリィなサキ。ちょっと油断した」
「別に良いけど、今はちょっと、上見て」
「あ?」
ユイカが見上げた先には、キララが生み出したガラス片がわたし達目掛けて降り注いでくる所だった。
「何だこんなもん……こうだ!」
そこへユイカは手のひらを向ける。降り注ぐガラス片にちょうど届かないようにすると。
爆発が起こり、ガラスの雨は粉々に砕け散った。
「おー、きれい」
「見とれてる場合かよ。そっちも苦戦してるみたいだな」
「うん、全然近づけなくてさ」
「こっちは、あっちから近付いてきてくれるが、今の攻撃がよく分からねぇ」
ガラスが赤く染まってから、まるで威力が上がったみたいにユイカは吹き飛ばされた。
さっき言ってた、赤く染まった時に相手が青くなる合図とかいうの、つまりそういうことなんだろう。ガンガン攻める系のユイカが苦手にするタイプだ。
うーん、お互いに相性の悪い相手とぶつかったみたい……ん?
「あ、そっか」
「なんだ? 何か思いついたみたいな顔して」
「まぁ、一応」
今思いついたことを簡単に説明すると、
「そういやそうだな。よし、チェンジだ」
わたしとユイカは互いの位置を入れ替え、目の前の対戦相手をチェンジした。
「よし、仕切り直しだ!」
わたし達はさっきと違う前に立つ相手へと走った。
「させないよ!」
キララはガラス片を空に生み出し、向かってくるユイカに向けて降らせる。
「ワリィが、それはあたしには利かねぇよ!」
走るユイカは前に手を出す。ガラス片に手が届かない位置に来ると、爆発が起こり後ろに続くガラス片を巻き込んで全て砕け散った。
「えぇ!? さっきもだけど何それ!?」
「言うとでも思ってんのかよ!」
ユイカはあっさりとキララの距離を詰めてしまった。あちらはきっともう大丈夫だ。
となると、わたしの方だね。
「改めて、参ります」
アカナの方から前へ進んで攻防が始まった。
先制はリーチのあるアカナから、赤いガラスを突き込んでくる。
わたしは攻撃を避け、カウンターで右ハイキックを放つ。避けきれないと思ったのかもう片方の腕で防いだ。
よし、用意は出来た。わたし攻撃の届かない距離まで下がり、構えを取る。
「なかなかですね」
アカナも再び構えの体勢を取ったを見た。
瞬間、わたしはそのアカナの元へと駆けつけた。
「!!」
表情に驚きが見えた所で右ストレートを叩き込む。後ずさったアカナへ二撃目の左ハイキックを飛ばすと。
「次は、無いです!」
体を反らしてハイキックを避けると、両手のガラス片で突き込んでくる。
しかしその攻撃は当たらず、元の位置に戻ったわたしは空を切るガラス破片を見て再び距離を詰めた。
攻撃直後の隙を逃さずにハイキックの状態から更に足を上げてアカナの目の前に駆けつけ。
「これで、どうだ!」
脳天めがけ、踵落としを飛ばした。
決まったあー!
準決勝第一試合! 勝者は番号16番!
爆裂拳を持ったドール ユイカ選手と!
距離無しインファイター サキ選手だ!




