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扉を抜けたら

「結局、ユイカが一人でぼこぼこにしてしまいました まる」

「なんだよその変わったしゃべり方」

「ただ何となく」

「そうかよ、とにかく次はサキも戦えよ」

「はいはい……でもさ」

さっきの男の人以降誰も見つからない。遮蔽物は無いけど暗さのせいで遠くまでは見えないからだろう。わたし達を繋いでいる黒い紐ははっきり見えるんだけど。

ちなみに、紐は戦いが終わってから縮まらないか考えてたら急に元の長さに戻った。この紐、わたしの考えで長さが変わるみたいだ。ユイカも試したけどダメだったので、多分わたしだけだ。

「こんなところの何処に人が居るんだろう?」

「さぁな、なんか別のステージでもあんのかもな」

「てことは、何処かにその入り口があるとか?」

まぁそうでもしなきゃこの見つからなさは説明出来ない。

「んじゃま、それを探してみっか」

「おー」

という訳で、探索という名の歩行を続けた。



それから少し行くと、妙な物を見つけた。

「扉だね」

「扉だな」

暗いような明るいような、そんな空間の中に、扉が一つ浮いていた。

普通、扉って建物の入り口に付いてるもんじゃないっけ? でもコレは空間に浮いている。ユイカが向こうに行くと扉を隔てて見えなくなるので透けてもいない。普通の扉だ。

「どうする? 開けるか?」

「いやでも怪し過ぎない? 多分開けても変わりなくそっち側に行くだけだと思うよ」

「にしてはよく出来てないかコレ? わざわざこんな所にある意味も分かんねぇし、サキの言葉が本当だとしたら別に開けてもなんも害は無い」

ユイカが戻ってきて、扉のノブを握る。

「開けてみるぞ? サキはそこで見てりゃいいから」

「はーい」

ユイカはノブを捻った。扉が押されて開き、ユイカはその中へ入った。

瞬間、ユイカが消えた。

「え?」

扉を開けた先は何故か真っ白、空間の中にそこだけ切り取ったように扉枠の大きさに真っ白な四角があった。その先にユイカと繋がっている黒い紐が伸びている。

ということは、あの真っ白の中にユイカが居るのか。

「……ん?」

ふと気付くと、紐が引っ張られていた。先はもちろん扉の先の真っ白な四角の中。

多分、ユイカがこっちに来いって合図だ。

「何かあるのかな?」

周りに他の参加者は見つからない。なら、この先に行ったら何かあるかもしれない。

わたしは扉をくぐった。



「来たな、見てみろよ」

扉の先には、街があった。背の高いビルが建ち並び、車が何台も走っている。まさかあんな扉を抜けた先にこんな街があったなんて。

「人もちらほら見える。きっと参加者も混じってるぜ」

「全員ここに来てるのかな?」

「さぁな、でもあんな薄暗い場所よりコッチのが全然良いだろ」

それは確かに、ここのが倍は明るいし居心地が良い。どうせ戦うなら、ここの方が良いな。

「よし、参加者を探そう」

「お、やる気になったな」

辺りをきょろきょろと見渡してみる。すると、

「ん?」

こちらに歩いてくる女の人の姿が目に写った。他にも人はいるけど、何故かその女の人だけよく見えた。

長い黒髪はぼさぼさで、服も所々薄汚れている。明らかにわたし達と同じ参加者に見えた。極めつけは、その手に持っている裁ち鋏だった。

「アナタも、参加者ね?」

女の人が訊いてきた。

「えぇ、まぁ一応」

「隣のアナタは?」

次いでユイカに訊いた。

「そう言うアンタもだろ?」

「えぇそうよ、ここで会えたんだし、戦わない?」

「だってよ。良かったなサキ、すぐ見つかって」

そりゃそうだけど、何かあの人、不気味だなー。

「ユイカ、やらない?」

「次はサキの番。だろ?」

「……へーい」

前へ歩いてユイカと扉から離れ、女の人に近づいた。

「サキ、もうちょい紐伸ばしといてくれ」

言われた通り紐を伸ばしておいた。地面にたるんで落ちる。

「あら? アナタ一人で良いの?」

「まぁ……そういう約束だったんで」

「ふぅん、私は二対一でも構わないのよ? だって…」

ジャキン 裁ち鋏が音を鳴らした。

「ここに来てもう、6人も倒しもの」

ジャキン

「もっと、この挟で切り裂きたいのよ」

ジャキン

「もっと、もっともっともっともっと」

ジャキン ジャキン ジャキン

「ふふふふふ……」

「……」

うっわー……やっぱユイカと変わるべきだったー。

振り返って見ると、

「頑張れよー」

ユイカは手を振って応援モードだった。

てか、わたしで勝てるのかな? 武道こそちょっとはやってたけど、ユイカみたいな真剣白羽取りとか多分出来ない。

「はぁ……」

仕方ない、やるだけやってみますか。

左手を前、体を斜に構えながら右手を腰の位置で握った。散々叩き込まれた武道の構えだ。

「ふふふふふふ……」

一方の女の人は、さっきから笑いっぱなし。

「ふふ……あっはっは!」

と思った瞬間、鋏を開いて前へ走った。うわ、やっぱちょっと恐い。

女の人は鋏をわたしに向けて突き刺す。

わたしはそれをサッと避けた。すると女の人は続けざまに鋏を振るった。

「あっはっはっはっ!」

笑い声と共に振られる鋏をわたしは避けていく。フェイントとかはなく、一方向への単調な攻撃だから容易だ。あまり周りを見ないタイプの人なんだな。

かといって避けてるだけじゃダメだ、こっちから攻撃しなくちゃ。

何回目かの鋏を避けた時、わたしは左ストレートを放った。

だがあっさり避けられる。間合いを詰めた女の人が鋏を突いた。わたしはとっさに後退した。

あっちの攻撃も当たらないけど、こっちの攻撃も当たらない。どうすれば……

いつもはボッコボッコにされて勝った覚えがないんだよな。やってる年月が長いからって、すごい経験者と相手させられるから。

でも、今は相手が違うから、ひょっとしたら……

振りかぶられた鋏がわたし目掛け降り下ろされた。

それを避けつつ、下げた状態の女の人に半歩近づく、そこで右フックを放った。

「ムダよ!」

だが、女の人はコレもあっさりかわしてしまった。

フックを放った状態のままのわたしに、女の人は鋏を下から上に突き上げるように振り上げた。カウンターのカウンターだ。

このままだと当たる。狙いは方向から見て……顔か心臓辺り。

「サキ!」

ユイカの声が聞こえた。

「……大丈夫だよ」

「へ?」

「え?」

2人の声が聞こえた。その時のわたしは振り上げられる鋏から横に動いた。

しかし、頬を少しかすった。痛みは無い、大丈夫。

わたしは、拳によるカウンターは苦手だ。

けど、カウンターのカウンターで、それが足技なら絶対に外さない。

鋏が通過した瞬間、左ハイキックを女の人目掛けて放った。

「あぐっ!?」

顔に命中、声にならない声を出して女の人は仰向けに倒れた。

コレで勝った、訳は無いよね。多分あっちを怒らせたとは思うけど。

「ふふ……ふふふ……」

ゆらりと女の人は起き上がった。やっぱり怒ってる風だ。

「よくもやってくれたわね……お返ししなくちゃ…」

お返しは結構です。

「あっはっはっはっ!」

笑いながら再びの突進、さっきより動きが単調になってる。コレならカウンターでも入るかも。

鋏が突かれる。わたしは横に避けて……

「甘いのよ!」

ジャキン

裁ち鋏の音、ただ鳴っただけだと思っていた。

しかし、本当は……

「え……?」

「あっはっはっはっ!」

避けた筈の右肩に大きな傷が出来ていた。

「!?」

肩にぱっくりと、大きな傷が、

まさか、避けたはずなのにいやそれよりも傷が大きい痛みが………………ない

きっと痛すぎて麻痺してるんだ。

そうだ、そうだよ、

でも何でだろう?

結構痛そうなのに、

というか当たってないのに?

音を聞いただけなのに?

「あっはっはっはっ! 皆そう! 皆そうだったわ! 油断してコレに殺られたのよ!」

ジャキン

女の人が鋏を鳴らすと、今度はよく見えた。

鋏の先から赤い何かが飛び出していた。

それを避ける間もなく、もう片方の肩に当たった。そこにまた傷が出来る。

何なんだろ……アレは。

「両肩を切ったわ、コレでパンチなんてもう出来ないわよ」

確かに、今更気づいたけど腕が上手く挙がらない。この傷のせいか。

「どうせならこの能力で首に傷を付けたいけど、それじゃダメなのよ。そこには直接鋏を入れないと、私の気がすまないのよ!」

女の人が走った。狙いは明らかにわたしの首だ。

「サキ! 避けろ!」

「遅いわ!」

鋏が迫る。

しかし、

「だから大丈夫だって」

鋏は空を切った。

女の人が驚きながら、瞬間にしゃがんだわたしを見た。

「コレは、キツイよ」

女ゆえに一撃の威力が少ないわたしの、多分一番強い一撃だ。

立ち上がる要領で右膝を伸ばしながら、左足で腹に蹴りを叩き込んだ。

「っぐ!?」

くの字に曲がった女の人はそのまま倒れ込んでしまった。

着地して女の人を見ると、ピクリともしなかった。

「ふぅ……」

多分、勝ったっぽいね、コレは。


サキ、ユイカ、まさかの肉弾戦。二人の想い形見はいったい何なのでしょう……?

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