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2人の相方

テルと別れた後、能力の発動条件を探りたいというユイカと、そういえば紐が無いなら離れて動けるなー。と思ったわたし達は、珍しく離れて動いてみることにした。

ユイカは先ほどの場所で能力の発見。

わたしはとりあえず、辺りを歩いてみた。

「うーん、何かかなり久しぶりだなー、1人で歩くのって」

ブレスレットを付けた左腕を回して、本当に紐が無いのを改めて実感する。

そしてそれだけ、ユイカと一緒にいたということも。

「……さて、どうしよっかな」

歩き出したは良いものの、特にやることは無い。

扉の外には出ちゃダメだし。この中を歩き回るくらいしか…

「あ」

ふと、前にヒカルとシキを見つけて近づいていった。

「おーい2人共ー」

「お、サキと……む?」

「さ、サキちゃんだけですか?」

「まね、実は……」

わたしは先ほどのことを2人に話した。一瞬迷ったけど、2人共ハカセを知ってるから平気だよね。多分。

というわけで、かくかくしかじか。

「なるほど、ユイカも能力を持つのか」

「い、いったいどんな能力なんでしょう?」

「さぁ、今それを確かめてるところだよ」

爆発、てのは分かってるけど、出し方がさっぱりだ。わたしも苦労したからなー。

「そもそもヒカル達みたいな道具なら分かりやすかったのにね」

後、記憶が所々忘れているのがなければ。

「それは仕方のないことだな。そもそもこんな場所があるということを知る術が無かったのだから、対処など不可能だ」

「そうですよね……初めは戸惑いました、なぜ標識を持ってたのか分かりませんでしたから」

あちらもあちらで、大変なんだな。

「ところで、2人も大会にエントリーしたの?」

そういえばテルは、この後流れるアナウンスに従えって言われてたけど。

「あぁ、くじを引かされてな」

ヒカルとシキの手にはわたし達も貰った白い紙。ヒカルのは2、シキのは9、とそれぞれ書かれている。

「ここでの戦いは、どうやら2人一組が決まりみたいです」

2人一組、わたし達と同じ条件だ。わたし達が出るからそうなのかな?

「同じ数字を持つ者がペアでな、その者を探していたのだが」

「全く見つからず、ヒカルさんと一緒に探していたんです」

えーっと、わたしとユイカが16番だったから、番号順として最低でもここには32人いるってことになる。ここ以外と広いし、確かに見つけるのはちょっと大変かな。

「向こうから来てくれたりしないかな?」

「ふむ、相手も私達を探しているのは確かだ。だがしかし、私達も動いていては鼬ごっこになってしまう。今まで動いていたからな、少し止まっていてみるか」

というわけで、わたし達3人はその場に立ち止まって三方向を見回し、誰かを探しているっぽいヒカルとシキの相方を探してみた。

「うーん……いないね」

「こっちもだ、皆二人組になっている」

「シキの方は?」

「あ、あの……ひ、1人の人、見つけました。そそ、それも、こちらに来ています」

おー、多分その人はどっちかの相方の人だね。

わたしとヒカルもシキの方を向く、すると、

「あらアナタ、お久しぶりね」

そこに居たのは、この世界に来てわたしが初めて戦った女の人だった。

ぼさぼさの黒髪に薄汚れた服を着て、手には裁ち鋏。ヒカルと出会ったあの街で会った時と同じ姿だ。

「あら? よく見ればお一人? もう1人の方はどうしたのかしら」

ユイカのことだ。でもこの人はハカセを知らないから。

「その辺りにいると思いますよ」

「そう」

……うーん、この人と話のちょっと怖いんだよな。あの時、良いやつ喰らわせてそのまま放って来ちゃったから。

「ふふふ……そう身構える必要はないわ。私、別に気にしてないもの」

感づかれてたみたいだなー。

「そうなんですか?」

「えぇ、むしろ感謝してるわ」

感謝?

「あの敗北を糧に……次からの相手をもっと、もっともっともっともっといたぶって倒すことが出来ているからね……ふふふふふふ」

「そう……なんですか」

うっわー。スッゴい根に持ってるー。

「……」

「は、はぅぅ……」

ヒカルとシキも引き気味だった。でも2人共、

「ところで、アナタ達の中にこの番号の人はいるかしら?」

女の人は自分のくじを見せた。そこに書かれた数字は……9。

「はは、はいぃ、あたしが9番、です……」

おずおずと、シキは手を挙げる。女の人はシキを見る。

「そう、アナタが私のパートナーね。ヨロシクお願いするわ」

裁ち鋏を持たない左手を前に出すと、

「は、はいぃ……」

シキもおどおどびくびくしながら手を取り、握手を交わした。

「ふふふ、そう怖がらないで、パートナーにまで身構えられてたら、私も落ち着けないわ」

「す、すみません。き、気を付けま…」

「あぁ、早く始まらないかしら……早く、誰でもいいから、刻みたいのに」

ジャキン! 右手に持った裁ち鋏を鳴らす音が響いた。

「ひ、ひぃぃぃ!」

シキの悲鳴も、同じように響いた。

「さて、シキの相方は見つかったから」

「あぁ、次は私の相方だな」

とりあえず2人はそのままにしておいて、ヒカルの相方を…

「ちょっと良いかしら」

わたし達の後ろから声がかけられた。

振り向いて見ると、声で予想していた通り、女の子が立っていた。

黒いワンピースを着て、長い焦げ茶色の髪を、黒いリボンで頭の左右に結んでいる。同い年っぽい女の子が腕を組んでわたし達を見ていた。

「あなた達、ペア?」

今の言葉と1人でいることから、この人も相方を探してるんだと分かった。

「いや、私は1人だ。もしかして貴女も」

「えぇ、2番なんだけど」

あ、それって。

「私も2番だ」

「ふぅ。やっと見つかったわ」

「そうだな、共に頑張ろう」

「えぇ」

ヒカルが出した手を、女の子はしっかりと取った。

「アタシの名前……と言ってもここでのだけど、ミミよ」

そうだった。参加者は皆、名前は忘れているんだよね。わたしみたいなレアや、ケイみたいに名前の付いた物を持って来てない限り、本名は名乗れないんだった。

「ヒカルだ。そう呼んでくれ」

「よろしくヒカル。……ところで」

ミミと名乗った女の子は、視線を横に、

「ふふふ……あぁ、早く切りたいわぁ」

「は、はぅぅ……」

裁ち鋏を鳴らし続ける女の人と、その横で震え続けるシキに向けられた。

「……アレ、あのままで良いの?」

「うん、あんまり良くないね」

「だがしかし、あの2人はペアだからな」

そう考えれば、戦い前のコミュニケーションに…

「ふふふふふふ……」

ジャキン! ジャキン!

「はぅぅ…………」

ガクガクぶるぶる

「……やはり、止めた方が良いだろうか?」

「だね」

とりあえず鋏の音を止めれば大丈夫だろう。そう思って声をかけようとした時、

空から、声が聞こえてきた。

内容は、ペア毎に闘技場の中央に集まってくれというもの。

「わたし、ユイカと会わなきゃ」

「あぁ、シキは私達に任せてくれ」

ヒカル達に別れを告げ、わたしはユイカのところへと戻った。




「ユイカー、調子はどう?」

「お、戻ったかサキ。今の聞いたか?」

「うん、闘技場の中央に集まれって」

ユイカはテルと別れた、人気の無いところにいた。声の言った通り、集合場所へと並んで歩き出す。

「どこ行ってたんだ?」

「ヒカルとシキの所だよ」

道すがらさっきあったことを話すと、災難だなシキ……という感想を言った。

「そういえばユイカ、能力は分かった?」

訊ねると、ユイカはばつがそうに頭の後ろをかいた。

「いや……何やってもダメでな。一応出来る技全部試したんだが、ただそれだけだ。サキみたいに相手が必要なのかもな」

「じゃあいきなり本番で使えるようになるしかないね」

「だな……しっかし、テルが言うには爆発の類いが能力なんだろ? どうすりゃいいのかさっぱりだぜ」

自らの手を見ながら呟くユイカと共に、

「ま、なるようになれだよ。頑張ろ」

わたしは集合場所へと歩き続けた。


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