色忍クロ
「クレヨンの能力とクナイを組み合わせた我流戦術……名付けて色忍術! 特とその身にくらってみるといい!!」
両腕を交差しつつ、長めの台詞を言ったクロは、
「はっ!」
交差を解くと同時、両手に持っていた十何本のクナイを放った。
よく見れば、クナイの内数本、箇所は全部異なるけど何かしらクレヨンで塗られた色がついている。
それを確認した直後、色のついたクナイに変化が起こった。具体的には、赤色は燃え盛り、黄色はバチバチと電気を帯びてる。
「クロのいた山奥でも電気はあったんだね」
「そこ感心してる場合か!? 来るぞ!」
多分色のついたクナイは触れただけでもダメージだ。それ等は避けて、ついていないのは弾き飛ばす。
「まだまだ!」
クロの言葉通り、新たなクナイが放たれた。今度のも色付きと色無しが混じっている。わたし達は再び同じことを繰り返す。
「どうするユイカ、キリがないよ」
「だな、仕方ねぇ……飛び込むぞ。アタシの後ろに回れ」
言われた通り、ユイカの背へ回ると、
「行くぜ!」
ユイカは走り出した。わたしもその真後ろに続く。
ユイカは参加者ではない、だからダメージを受けないので……前から飛んでくるクナイに当たりながらも倒れずに距離を詰めることが出来る。
「悪いね、ユイカ」
大部分は弾いてるとはいえ、腕を霞めたり色付きの影響を受けてたりと当たっている。
「気にすんなよ。アタシだから出来ることだ」
などと話してる間に距離は詰まり、まずはユイカが攻撃の範囲内へ。
「今度はコッチの番だ!」一足で飛び込み、クロへ左ストレートを放つ。
「む!」
クロの反応は素早く、すぐに後退され先ほどと同じ距離が開かれた
「な、早ぇ!」
「さすがは忍者だね」
「感心してる場合か。もう一度だ」
ユイカは突撃。わたしは後に続く。
「二度は効かないよ!」
クロはその場で跳躍。かなり高く上がったクロは上からクナイを飛ばしてきた。わたし達はそのまま前に駆け抜け、なんとかクナイの雨は回避した。
「うーん、動きが多彩で思い形見との相性もいい。強敵だね」
「あぁ、けどそう簡単には負けねぇ。サキ、駆けつけで行くぞ」
「はーい」
わたしは黒い紐を伸ばし、ユイカは一人でクロへと突撃。攻撃を避けて、わたしとクロを挟むような形になった。
「挟み撃ち!?」
「ちょっと違うぜ」
接近したユイカがクロの腕を掴んだ。
「しまっ…!」
「今だサキ!」
ユイカの合図にわたしは足に力を込め、
瞬間、クロの背中に拳を叩き込んだ。
「うぅ!?」
ユイカが手を離したので、クロは吹き飛んで地面を滑っていった。
「やったか?」
「どうだろう、手応えはあったけど」
「とぅ!」
しかし。クロは高く飛び上がってその場に着地。
「やるね2人共! 特にサキ、あんなに速く動けるなんて!」
「いやー、それほどでも」
「いや素直に褒められるなよ」
「こうなれば、ワタシも本気を出すよ!」
クナイを指に挟んで、やる気満々になった。
「ヤベェな……忍者ってことは、忍術とか使ってくるんじゃねぇか?」
「それはそれで、見てみたくない?」
「まぁ確かに……じゃなくてだな、厄介になるってことだ」
「うーん……」
まさかそんな魔法じみたものを相手にすることになるとは。
せめてこっちも、能力を使いこなせれば……
「……あれ?」
なんだろ? 妙な感覚がある。
感覚というか、気配というか、そんな感じのもの。それがクロから感じられる。もしかして……
「ねぇユイカ」
「ん? どうした」
「ちょっと、わたし一人にやらせてくれない?」
「やるって……クロと一人で戦う気か?」
「うん」
「……何か、考えがあるってことか」
「うん、多分」
この感じ。今まで感じてなかったのがおかしいくらいにある。
もしかしたら、これがキーなのかもしれない。
「そういうなら、やってみろ。けどな、負けそうになったら割り込むぜ」
「おっけ、ありがとうユイカ」
わたし一人、クロへと一歩近づく。
「む? サキ一人?」
「うん、ちょっと試してみたくて」
届かない距離だけど、ちゃんと構える。
「行くよ、クロ」
足に力を込め、前へ飛び出す。
「はっ!」
クロがクナイを飛ばす。前へ向かうわたしに近づいてくるし、もちろんわたしからも近づいている。
クナイの下を抜けるつもりで体勢を低く。
更に足に力を込めると、
わたしはクロの元に駆けつけた。
「えぇ!?」
驚くクロに右ハイキック。見事にヒットした。
「うっ! ま、負けないよ!」
素早く立て直したクロがクナイを両手に、左右から切りかかる。
けど、その攻撃は空を切り。
わたしは先ほど駆け出した場所に戻っていた。
「えぇぇ!? な、なんで!?」
「サキ……まさかお前」
「うーん、こういうことなのかな」
今、ユイカではなく、クロの元へと駆けつけた。
つまり、これがわたしの能力なんだろう。
クロに拳で攻撃してから、多分、行けるなと思った。
だからきっと、相手に触れることが能力の、駆けつけることの条件。そして駆けつけた後は、必ず元々の場所に戻るようにもなっているみたい。
「んー、まぁこれで良しとしとこう」
という訳で、もう一度足に力を込め。クロへと駆けつけた。
ただ、さすがにクロも二度目は慣れていて。
「次はくらわないよ!」
色を付けた、赤で燃え上がったクナイを両手に攻撃体勢だった。
「覚悟!」
火に燃えるクナイが両側から振られる。
しかし、クナイはまた空を切った。
わたしが戻った……からではなく。その場にしゃがんだからだ。
「しまっ……!?」
振り切ったクロは隙だらけ。
そこに、上がる力を加えたカウンターパンチを叩き込んだ―――
「不覚……! でも、良い勝負だったよ!」
「こっちこそ、ようやくわたしの能力が分かって助かったよ」
わたしとクロは握手を交わした。隣ではユイカが1人腕を組んでいる。
「クロもなかなか強かったが、アタシ達のが一枚上手だったな」
「うむ、まだまだ鍛練が必要だね。ここで修行を続けるよ! サキ達はこの後どうするの?」
「アタシ達は行かなきゃいけねぇ所があるんだ。とりあえず、扉のあった場所に戻ってみるか」
「だね」
「じゃあそこまで一緒に行こう!」
わたし達3人で、扉が消えた場所まで行ってみることに。
「戻ってるかな? 扉」
「戻っててもらわねぇと困るけどな」
数分かけて、扉が消えた場所へ到着。
そこに扉は―――
「あ」
「あったな」
あった。
入ったのと同じ、模様のない扉が浮いていた。
「よし、コレで闘技場に向かえるな」
「そういえば、さっきの人達はどうしたんだろ?」
ここへ入ってきた人に勝負へ挑んでいた三人組は、ここに来る間も、今辺りを見回しても見当たらない。扉から出ていったのか、もしくはわたし達だから出てこないのか。
「どうだっていいだろ。今は先を急ぐんだ」
ユイカが扉を開き、一足先に出ていった。紐で繋がれたわたしも、引っ張られて扉を抜けた。
「おや〜?」
扉を抜けた先は、見慣れた暗い空間。でもそこにはいつもと違う景色があった。
「アンタ、扉入る時に入った」
「またあったね〜」
キキさんが立っていた……その脇に、一枚の扉を抱えて。
「ほ、本当に扉をかかえてやがる……」
冗談で言ったつもりだったんだけどなー。
「サキ、この人は?」
初めて会ったクロは首を傾げている。
「この人はね……えっと、この大会の係員さんだよ」
「おお、なるほど」
「そんな説明だったか?」
「まぁ大体あってるからそれでおっけ〜だよ。にしても、出てくるの早かったねぇ」
「早いもんか、急に扉が消えるもんだから時間食ったんだぞ。アタシ達は闘技場に行かなきゃいけねぇのに」
「闘技場〜? それなら今の扉を引けば行けるよぉ?」
キキさんが指さしたのは、今わたし達が出てきた扉だった。
「やっぱり引く方が正解だったんだね」
「つか、それ言っていいのか?」
「別に良いんじゃないかなぁ?」
「疑問に疑問で返さないでくれ……」
やっぱりユイカはキキの波長に合わないみたいだなー。
「でも良かったじゃんユイカ。当たりの扉見つかって」
「あ、あぁ。……よし、行くぞサキ」
「おー。クロはどうする?」
「ワタシは、他の場所でもっと鍛練を続けるよ。サキ、ユイカ、またどこかで会おう!」
「うん、またどこかで」
「元気でな」
「それじゃ!」
ぴしっ、と手を挙げて走り出したクロは、あっという間に見えなくなった。さすがは忍者、足が早いな。
「じゃ、行こうか」
「まだ四回目が終わってないことを願うぜ」
「気をつけてねぇ〜」
扉を脇に抱えるキキさんに見送られながら、わたし達は扉を引いて入った。




