外の世界
「加勢が入って三対三になった勝負は、わたし達の勝利で幕を閉じた まる」
とりあえず倒した人達が起きてきた時に面倒なので離れた場所に来てみたんだけど。
「ふふっふー、他愛も無かったね」
変わった口調で変わった格好の変わった女の子は、変わった笑い声で、何故かわたし達と一緒に行動していた。
「えっと、助けてくれてありがとう。でいいのかな?」
「いやいやなんのなんの、お気になさらずに」
「にしてもお前、何であんな場所にいたんだ?」
女の子、クロがいたのは木のてっぺん。普通の人はまず登れないし、ましてやそこに立つなんて不可能だ。クロはそれをやってた訳だけど。
「アレは簡単に言うと、待ち伏せだよ」
「待ち伏せ? さっきの3人みたいにか」
「あの卑怯者な輩達とは一緒にしてもらいたくないねぇ、ワタシはちゃんとあの扉から出てきた人と一対一で正々堂々戦うつもりだったよ」
「それで、わたし達が囲まれてるのを見て降りてきたんだね」
「そゆことだよ」
ふむふむ、この子は正義感のある子だね。
「クロ、今いくつ?」
「急に話変わったな」
「14だよ」
「おー、若いね」
「アタシ等と二つしか変わんねぇだろ」
「ということはお2人は16才か」
「そういうこと。ところでさ」
一番訊きたかったことを訊いておこう。
「その格好は?」
「これ?」
クロは両手を拡げて自分を大きく見せ、着ている物をよく見せた。
うん、やっぱり本で見た忍装束とかいうのに似てる。色といい、形といい。
「忍装束?」
「おぉ!? まさかバレ……おとと」
……バレ?
「ひょっとして、本物の忍者?」
「うぇぇぇ!? な、何でバレたの!?」
狼狽え様がスゴかった。
「あ、やっぱ本当なんだ」
「誘導尋問!?」
そのつもりは無かったんだけどなー。
「つかちょっと待てよ、忍者なんて昔のもんだろ?」
「きっと山奥の隠れ里とかで外部との接触を極力避けながら自給自足で暮らしてたんだよ」
「なぜそこまで!?」
あ、本当なんだ。
「でもなんでまた」
自殺なんてしたんだか。
「……そこまで分かってるなら、隠す必要はないね。全部話してあげるよ」
いや、分かってたつもりはないんだけど。
「まぁ話し始めたからいっかー」
「軽いなオイ、そういう話じゃねぇだろ」
ワタシ達でないと分からないような、木に記された模様
それが円状に配置されていて、その範囲内が隠れ里の枠
そして、ワタシが知っている世界の枠だ
簡単に言って…………狭い!
もっと広い場所を走りたい!
もっと色んな物を見たい!もっと様々なことを知りたい!
この枠から出て、もっともっと広い場所へ、ワタシの知らない向こう側へ……行こうとして
あっさりバレて
それで……自害を命じられた
言われるがままに、ワタシは謝罪の文を……外への憧れとなった。外からの物で書いて
刀で、自らの腹を―――
「という訳」
「ふむ……」
自分で腹を切る。まさに自殺だ。
「なんつうか……まだそんなのが居るんだな」
「だね、まさに忍ぶ者」
「いやぁ、それほどでも」
あ、照れてる。
「別に褒めてねぇぞ?」
「でも忍者なら、戦いも楽勝だろうね」
さっきの戦いでも中々の身のこなしだったし。
「むぅ、それがそうもいかないのさよ」
「? というと?」
変わった言葉使いはスルーで訊いてみた。
「すっごい強い女の人がいてさ。さっきの3人組がいたでしょ? 加勢しようと思ってたら、何と3対1で勝っちゃったんだよ」
「へー」
3人を1人で、それはかなりの強者だ。
「でもその人は倒した直後にまた扉を開けて出ていったんだよね。だから実際に戦ってはいないけど……きっとアレだね、なんとか候補ってのだよ」
「なんとか候補?」
それはえーっと……
「優勝候補?」
「そうそうそういうの」
「……さっきはあんだけ言葉使って登場したのに、何で優勝って言葉は知らねぇんだ」
「きっとアレだよ、生きてた場所が場所だから」
知識の片寄りとかあるんだろう。
「それにしても、ここは凄いところだね。扉を抜けたら高い建物ばっかりだったり灰色の水ばっかりだったりで」
高い建物って、あの街? 灰色の水は、海の所かな。
「でもここが一番落ち着く。前にワタシが居た場所に似ててさ」
「え? でもそれってさ」
「あぁ、外に出たいって言ってたわりには、元居た場所が良いんだな」
「あ……うん、そうだね。ここに来てから、ずっとここにいるし……それに…」
クロはある物を取り出した。
それは、赤色のクレヨン。すでに使われていて、先が丸くなっている。
「コレをくれた、姉上と歩いた場所に似ていてね」
姉上。それがきっと、クロを想っている人だ。
「ワタシは、優勝したら生き返らせてもらって、姉上の所に帰るんだ」
クレヨンをぐっと握って、真っ直ぐと前を見た。
「生き返らせてもらって、か。その願い、優勝したら絶対叶うよな」
「だね。そもそも優勝の願いってそれしかないし」
「という訳で2人共!」
クロはクレヨンの先をわたし達に向けて、宣言する。
「全力で行くからね!」
それにわたしとユイカは互いを見て頷き。
「おぅ、アタシ等も負ける気はねぇぜ」
「2人一組だから若干卑怯っぽいけど、全力で行くよ。クロ」
場所が悪くなかったので、わたし達はこの場で戦う為間合いを開けて構えた。
わたしとユイカはいつも通り背中合わせで拳を。
クロは、右手に小刀。左手に赤色クレヨンを、どっちも逆手に持って。
「忍見習い、クロ。参る!」
お、名乗りカッコいい。
「わたし達もする?」
「今から考える気か?」
うーん、ちょっとは考えたいかな。
「じゃ、次の機会にでも」
「……コイツならその頃には絶対考えてそうだ」
ユイカの呟きを耳に入れつつ。
「じゃあ、行こうか」
「おぅ」
わたし達は前に立つクロへと、駆け出した。
間合いはすぐに埋まり、拳のわたし達と小刀のクロは至近距離でバトル開始。
先手はクロ、小刀がユイカへと振られる。それにユイカは左ストレートで正面からぶつけた。ダメージ概念が無いから出来る受け身の防御方法だ。
ギィン! 刃物と人の手が当たったとは思えない音を立てる。というかそもそも、貫通してない。
「おぉ! ユイカさん、その腕」
「悪いな、アタシはサキの思い形見。参加者じゃねぇんだ」
「では、攻撃を加えるなら、ばっ!」
真後ろから近づいていたわたしに反応して百八十度回転。小刀を向けて突きを放つ。
真っ直ぐと来る小刀、これなら……
わたしは左斜め前に回避。その場から一足で飛び込みカウンターの右ハイキックを。ユイカは後ろを向いたクロに対して右ストレートを放つ。
「むっ!」
クロはハイキックを小刀、ストレートを後ろ手にクレヨンで受け止めた。
「おー、やるね」
「感心してる場合か?」
「油断大敵だよ!」
そう言うと、クロはクレヨンを触れているユイカの腕に走らせた。
「大変だー、ユイカの手が真っ赤にー」
「現場見といてなんだその棒読み!?」
まぁ害は無いだろう。ユイカはダメージ概念無いし、ましてやクレヨンを塗っただけ…
瞬間、ユイカの手に炎が現れた。
「いっ!? なんだコレ!?」
近くにいたクロが下がり、わたしの前のユイカは手に現れた炎を消そうと振り払っていた。
「どうしたのユイカ? 燃える鉄拳でも覚えた?」
「冷静に見てないで消すの手伝え!」
ユイカは地面に手を擦り付け、わたしはその上に土を被せて、どうにか炎を消した。
「今の、クロの能力かな」
「だろうな、見ろ」
土で汚れたユイカの手には赤いクレヨンが塗られた後がうっすらと残っていた。
「多分色を付けた場所に炎を出すんだな」
「赤は炎なら、他の色はどうだろ」
「ふふっふー」
クロの変わった笑い声に振り向くと、
「他の色は、これだけあるよ!」
両手の指の間に、赤、青、黄、緑、オレンジ、紫、水色、灰色と、手一つずつに白と黒のクレヨンを持っていた。
「もちろん全部が全部、違う効力だよ!」
「……」
「……」
「え? どうして黙ってるの?」
そりゃあ……
「それ、あっさりばらして良かったの?」
「あ!」
手の内さらしたと気づいてなかったー。
「あと言っとくが、アタシに使ってもダメージは無いぜ?」
「あぁ!」
さっき言ってたのに気づいてなかったー。
「な、なら、サキを集中して狙ってやるんだからー!」
あー、クロの標的がわたしに集中し始めた。
「サキ、覚悟!」
ふむ……まぁクロはわたしを倒さないと勝てない訳だし。それが普通か。
「でもユイカ、ちょっとは責任取ってよね」
「へーへー、まぁサキがやられたらアタシ達が負けだからな。やれる限り守ってやるよ」
気持ち新たに、わたし達は戦いを開始した。




