鍵番とか加勢とか
ミカの指差した方向に歩いている途中、
「わたしの能力について話してみようか」
「んだよいきなり」
「だって、ヒマ過ぎて」
さっきから誰にも会わないんだよ。
「まぁいいけどよ、能力か……」
一応出来るのは、ユイカのところへ高速移動すること。
「駆けつける、ってのが当たりだったんだよな?」
「うん、でもそれだけじゃないと思うんだよね」
ケイと戦った時、ユイカのところへ行ったのはそれだけど、元の場所に戻ったのは説明出来ない。
多分、他に何か隠された能力があるんだと思うんだけどー……
「どうでしょ、そこんところ」
「んー……ひょっとしたら、アタシ以外の人んところへも行けるんじゃねぇか?」
「おー」
なるほどー、一理あるかも。
「よし、次で試してみよう」
「次か、きっと闘技場で……いや、今すぐだな」
ユイカが前を指差した。その先に、初めて見る扉と、その前に立つ人がいた。
「ん〜……ここから始めるとしようかぁ」
その人は腰に手を当てて、扉を見て何か呟いていた。
「オイ、そこのアンタ」
ユイカが宣戦布告を含めて声をかけると、
「ん〜? 私のことぉ?」
女の人は振り向いた。
ボブカットの髪で、わりと長句、言葉使いとかも見て、年上のお姉さんって感じだ。
「あれ〜?」
女の人はわたし達を、具体的にはわたし達の間にある繋ぐ紐を見て言った。
「ひょっとして〜、2人組の参加者さんですかぁ?」
その呼び名を知っているということは、
「ひょっとしてアンタ、ハカセと同じ…」
「そうでぇす、私はキキ、ヨロシク〜」
「お、おぅ……」
キキの独特な雰囲気に飲み込まれそうになっているので、わたしが引き継ぐとしよう。
「そこで何をしてるんですか?」
「お仕事だよぉ」
「仕事?」
「それはお話し出来ないけどねぇ、とにかくお仕事なんだよね〜」
「へー」
「サキ、よく普通に話してんな」
「コツは上手く波長に乗ることだよ」
「それが分かりゃ苦労しねぇよ」
まぁとにかく。
「その扉、通してもらえますか?」
「別にいいよ〜、私の仕事はその後で良いしぃ」
「では、失礼しまーす」
キキの横を通って、わたしとユイカは扉を押して入った。
「それじゃまぁ、お仕事しますか〜」
ガチャリ
「よっこいしょ〜」
扉を抜けた先は、田舎町。遠くには紅葉した山々、木々の並ぶコンクリートの道路には車一台走っていない。
まぁつまり、闘技場ではなかったのでした。
「ハズレか」
「きっと引く方だったんだね」
「長居は無用だ、さっさと戻って扉を引いて…」
引き返すため、背を向けていた扉の方を向く。
瞬間、扉が消えた。
「なっ!?」
扉のあった場所までユイカは走るがそこには何も無く通り抜け、今入ってきた筈の扉は、完璧に無くなっていた。
「今、ここに扉があったよな?」
「うん、わたし達入ってきたもん」
「じゃあ今消えたのは……」
「もしかして、さっきのお仕事と関係あるとか?」
扉の前にいたってことは、つまりそういうことだと思う。
「きっと扉に鍵かけて入れないようにして、小脇に抱えて運んでるんだよ」
「いや鍵かけんのは分かるが運ぶ必要ねぇだろ。運んでどうすんだよ」
「えーと……引っ越し?」
「扉だけか?」
「でも扉しかないし」
「クソッ、こんな所で道草食ってる暇はねぇってのに」
「ふぅむ……」
原因はなんとなく分かったけど、いったいいつまで扉が消えてるかは不明だ。
「まここで立ち止まってても仕方ないし、ちょっと歩いて時間経ったら戻ってくればいいんじゃない?」
「はぁ……しゃあねぇな、時間使ってる場合じゃねぇのに」
その時、
「そこのお二人さん」
声に振り返ると、前から参加者っぽい人がやって来た。
それも2人、どっちも男の人。
「何でしょう?」
まぁ分かるけど、一応訊いてみる。
「分かってるでしょう? そちらも2人っぽいけど、一対一でいいよね?」
「ということらしいけど、いいかなユイカ?」
まだ後ろを向いているユイカへ訊くと、
「はっ、何が一対一でいいだ」
「え?」
ユイカが向いている真後ろを見ると、ユイカは前を指差して言った。
「そこの木の影、隠れてんなら出てきな」
すると、
「……」
本当に木の影から男の人が現れた。多分、後ろの2人と仲間だ。
「大方、ここにあった扉を壁にして狙う気だったんだろ? 残念だったな」
偶然の産物だなー。
「サキ、三対二っぽいが、良いよな?」
「うん、頑張ろっか」
ユイカが後ろを向いて2人を、わたしはユイカに背を預けて出てきた1人の方を向いて構えた。
「アタシがコッチ押さえてる間にソッチをのしちまえな」
「別にそっち倒してくれてもいいのに」
「そのつもりさ。けどそれじゃあアッチに勝ち目ねぇだろ?」
「そんじゃま、成り行き次第で」
わたし達だけに聞こえる声量で話し、互いの正面の相手を見た。相手の人も自らの思い形見を持っている。
「よし……行くぜ!」
ユイカの声を合図に、わたし達は前へと走り…
待てぇぇぇい!
…出して急停止した。
男の人達も、謎の声に周りを見回している。
「サキ、聞こえたか?」
「うん、待てぇぇいって」
どっちかと言えば高めの声が木々の奥、林の方から聞こえてきたけど、いったいどこに……
「あ」
見つけた。
「ユイカ、あそこ」
わたしが指差した先……木のてっぺんに、人が立っていた。
「戦いとは正々堂々と行うべき! だが貴殿らは二人に対して三人で挑むとは……不届き千万!」
見事なバランスで木の上に立つ人、太陽を背負ってるから姿は逆光で分からないけど、なんか言葉は古風。ヒカルよりも変わった言葉使いだ。
「よってこの勝負、ワタシが二人の方へ加勢する! とぅ!」
声の主は掛け声と共に、木の上から……
「飛び降りた!?」
しゅたっ! とわたしとユイカの間に降り立った。
「おー」
「な、なんだよコイツ……」
ようやく姿が見えた。声の主は……わたしと同じか下くらいの女の子だった。
けど、その格好は変わっていた。
黒い髪はポニーテールに結び、口元は長いマフラーで隠れていて、服は……何て言うんだろ、コレ?
一番近いので例えるなら……忍者、かな。
忍装束、とか言うやつだと思う。それに身を包んだ女の子はマフラーをばさばさたなびかせて、
「我が名はクロ! そこのお二人、加勢させてもらうよ!」
声高らかに宣言した。
わたしは、改めて思った。
この世界、変わった人が多いんだなー、と。




