伝えてくれる者
「…………はっ!」
倒れ込んできた人は、がばりと起き上がった。
「あ、起きた」
「あ、あれ……? 今の声は、誰ですか?」
「とりあえず、椅子を開けてあげるといい」
「へ?」
倒れ込んでそのまま気絶した人を、わたし達は座っていた椅子を3つ並べて寝かせておいた。だから今のところわたし達は立ってその人を見ていた。じーっと。
「あ、あわわ、ごめんなさいです」
どことなくシキに似ている女の人……かな? 同い年に見えるから、女の子ってことにしておこう。
女の子は並んだ椅子から立ち上がってペコリと頭を下げた。女の子の赤色を帯びた黒い髪のショートカットがばさりと揺れる。
「初めまして、私の名前はミカといいますです」
「彼女もまた、この世界における例外の人物。その中でもまた異質な存在だ。それについては話すと長いから割愛させてもらうよ」
割愛と言われると気になるけど、要は自殺してしかし生き返ろうとしなかった人ということだろう。
わたし達も順に自己紹介していく。
「あなた方が噂に聞いた二人組の参加者さんですか」
やっぱりその名前で通っているのかー。
「ミカにだって通り名があるぞ」
おー、さすがは例外な人物。
「あ、あの、ハカセ、それは言わないで下さいで…」
「ちなみにどんな?」
「ですます砂使い、だ」
「そんなあっさりと!?」
ですます砂使い?
「何だよ、ですますって」
「た、多分、ミカちゃんの言葉使いだと思います」
なるほどー。確かに、ですとかますとか使ってる。
「あぅぅ……ハカセ酷いですよ、言わないでって言ったですのに……」
「はっはっはっ、ところで、何か新しい情報が入ったんじゃないのかい?」
「あ、そうでした! 先ほど二回戦免除の対戦、三回目が終了しましたです」
「な!? オイ! そりゃマジか!」
ユイカがミカへと詰めよって訊いた。
「ふひゃい!? は、はいです。拳銃の思い形見を持った男の人が勝ち上がりました」
「拳銃持った男って……」
「ケイだね、多分」
全員に会った訳じゃないから断定は出来ないけど、知る限りではケイしかいない。やっぱり強いんだなー、ケイ。
「クソッ……もう三回ってことは、後一回しかねぇってことじゃねぇか」
「慌てることはないさ、まだ一回あるのだからな」
「それだっていつ始まるか分かんねぇんだろ? ならさっさとそこに行かねぇと。おい、アンタ、ミカって言ったか」
「は、はいです」
「その場所、案内してくれねぇか? 今そっから来たんだろ?」
「え、で、ですが……」
ミカは助けを求めるようにハカセを見ると、ハカセは肩をすくめ、腕を組んでユイカを見た。
「悪いけど、優遇し過ぎるのはタブーなのでね。場所は自分達で見つけてくれたまえ」
「うっ……まぁ、そうだな……ここに来てルール聞いてるだけでも、普通に他の奴らより有利だしな」
「分かってくれてなによりだよ」
「で、では、ユイカさんとサキちゃんは、その対戦に出るんですね?」
「アタシはそのつもりだ」
うん、ユイカは出る気満々なのは今までで分かる。
けど、
「さ、サキちゃんは?」
「うーん……びみょーだね」
わたしはそこまで乗り気ではなかった。
「何でだよサキ? 勝てれば二回戦免除で優勝の確率が上がるんだぜ?」
うん、それは分かってるんだけどさ。
「でもわたし達、すでに戦いに有利な状態でしょ? 別に絶対勝てるとかは言わないけど、出るのは少し悪いなー、と思わなくもないんだよね」
「そんなの別にいいだろ。参加者と思い形見、条件は一緒なんだからよ」
まぁそうだけどねー。
「そう言うなら、それを解決してあげようか?」
ハカセは椅子から立ち上がり、椅子の後ろにある壁に手を触れると、波打った壁に手が潜り込んだ。
「え、えぇぇ?!」
シキが驚いて悲鳴をあげていた。わたしとユイカは初めてここに来たとき、その壁から出てきたハカセを見てるので、驚かない。
「よっ……と」
壁から抜いたハカセの手には、電話の受話器があった。コードは波打った壁の中に繋がっているけど、どうなってるんだろ、あれ?
「あぁ、私だ。うん、実は今二人組の参加者が来ていてな……あぁ、ミカも居るよ、情報も聞いた」
誰かと話してるみたいだ。
「それでな、二人組の参加者が出ようと考えてるのだが……うん、確定ではないがおそらく出るだろう……それでもしもそうなった場合は……あぁ、キミは話が早くて助かるよ。ミカは少し聞き取り難い時があったりしてな」
「本人の前でヒドイですハカセ!?」
「あぁ、ではそのように頼む……うん、見た目は……まぁ繋がってるから分かるだろうが……」
ハカセはわたしとユイカを上から下へ見て、
「共に女性、身長はキミと同じくらいと少し大きい、内一人が腰まである金髪に黒ゴシックの服だ…………あぁ、長句にゴスロリと、若干ミスマッチな姿だ」
「まさかずっとそう思ってたのかハカセ!?」
「最たる特徴は、やはり繋がっているところだ。左手が参加者、頭の中が思い形見だ……あぁ、もし来たらよろしくな、ではな」
着信が終わったのか、受話器を壁の中に投げ捨て、壁が波打って受話器は飲み込まれた。
「という訳で……ん? どうかしたのか?」
「……いや、なんでもねぇ」
「はい……です」
きょとんとした顔でハカセは、妙な表情のユイカとミカを見た。
「む、無自覚みたいですね、ハカセさん」
「そだね」
結構2人に対してすごいことさらっと言ってたんだけどなー。
「ふむ、まぁいい。とりあえず今しがた電話して、サキの問題は対策を取ってくれるようだ。だから気にせずに参加してくれ」
「だってさ、ユイカ」
「お、おぅ……けどまずはその場所から探さないといけねぇな」
「頑張りたまえ。いつ開かれるか分からないが、キミ達が出れることを祈っておくよ」
「お二人は闘技場を目指すのですよね?」
「あぁ、でも案内は出来ないんだろ」
「案内は出来ませんが、少しだけお手伝いを」
ミカはある方向を指差した。
「ここからしばらく行きますと扉が一つありますです。まずはそちらを目指してみてはどうですか?」
「あー、どうする? サキ」
「うーん……」
ミカは異例な存在で、地の理はあって教えてくてれるんだろうけど……それが本当に闘技場に行く、とは教えてくれられないからな。
でもま、
「行こっか、せっかく教えてもらえたし」
「では、ご武運をお祈りしますです」
ハカセの部屋を出たわたし達とシキ、
「そ、それではあたしはここで失礼します。ユイカさん、ミカちゃん、またお会いしましょう」
「おぅ、シキも元気でな」
「お互い勝とうね」
まずシキが去っていき、
「ミカに教えてもらった方向へ、わたし達は闘技場を探して歩き始めた まる」
「ハカセ、情報がもう一つあるのです」
「ん? なんだい?」
「はいです、実は……あーーー!」
「? いったいどうしたというんだ」
「あわわわわ、た、大変なことをしてしまったのです……」




