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標識のシキ

「あ」

ふと思った。

「どうした?」

「あのさ、シキの攻撃方法って…」

言いかけたその時、

「え、えぇい!」

シキの思い形見である、標識が軽々と振られた。

うわー、そう来たかー。

「おぉ! そう来んのか!」

わたし達は後退して標識を避けた。

「ヤベェなアレ、拳銃よりリーチが読みづらい」

「うん、まさかああ使うとはね」

距離こそ拳銃以下だけど、標識から棒の部分にまで当たり判定があるから飛び込み難い。相性悪いな、あの思い形見。

「でも攻撃を当てない事には勝てないぜ、サキ、アタシがいつも通り前へ出るから後ろから飛び込め」

「おっけー」

「よし、行くぜ!」

ユイカが飛び出した。わたしはいつもより少し後ろ、シキの攻撃の範囲外から付いていく。

「て、てぇい!」

シキの標識が横薙ぎに迫る。わたし達はジャンプで飛び越える。

着地と同時、ユイカはリーチに入った。

「オラァ!」

右ストレートを放つと、

「ふぇぇ!?」

シキは標識を引きずりながら後ろへと下がった。

何というか、回避というよりは逃げな感じだ。きっと標識が重くて軽い動きは出来ないんだろう。多分。

ユイカは更に間合いを詰めて再度ストレートを放つと、シキの肩に当たった。

「うっ……えぇい!」

シキは標識を振るう、ユイカはジャンプで後退した。

「今だサキ!」

え? あー、そっか。能力だね。

足に力を込めてみる。

「むん……」

……ダメだ、動かない。

「ゴメン、ムリだった」

「気にすんな、次頑張れ」

ユイカがシキへ肉薄するように向かう。あのままインファイトを仕掛けるつもりか。

「ご、ごめんなさい!」

すると何故かシキは謝った。それと同時に、標識を引き寄せて板に手を触れた。

次の瞬間、標識が収縮した。

ナイフ程度の大きさになった標識をユイカに向けて突く。

「ちっ!」

ユイカは肉薄を諦め、標識のリーチから下がってわたしの隣へ。

「そういや、最初見た時もあの大きさだったな」

「アレが能力なのかな?」

標識の伸縮とか? でも飛び降りが死因なのにどうしてそんな能力になるんだろう。

「分からねぇ、けどそうだとしたら更に厄介だな」

「でもさ、ユイカはダメージ受けないんだから」

「分かってっけどな、そうするとサキばかり狙われるようになるだろ? どうにかそれを避ける為にこうして避けてんだ」

「なるほどー」

「つう訳で、能力を仮定した上で、行くぜ!」

ユイカは再び前へ飛び出した。

能力を仮定か、なら、わたしも能力を解明しなくちゃな。

えっと…………あ、そういえば、ユイカに向かっては移動が出来るんだっけ。

じゃあ……




ユイカがシキへと攻め、小型化した標識と拳で攻め合いが続いている。

「へぇ、中々やるじゃねぇか」

「あ、ありがとうございます」

「? 何でお礼?」

「い、いえ、その……」

と会話している2人。

の中にわたしは飛び込んだ。

「あ」

「あ?」

ただしそれで止まらず、



ドンガラガッシャーン!



ユイカにぶつかって巻き込んで転がった。

「あー……大丈夫?」

転がって止まった結果上になったわたしが、下になったユイカに訊ねる。

「まぁな……でもよ、今何があった?」

「えっとね、前にユイカへ突っ込めることは分かってたから、それを実践」

「それは今やんなよ! つかこの状況、狙われ放題だろ!」

あ、確かに。

わたしは振り向きつつ体制を立て直してシキを見た。そこには今まさにわたし達に攻撃を仕掛けようとするシキの姿……

「あ、あわわ……」

はなかった。

代わりに、わたし達を見て口をあわあわさせているシキの姿があった。

「なんだ? シキの奴どうした?」

「さぁ」

妙な視線を感じるような……なんだろ?

「いい、いきなり飛び付いたりして、ててて、そして転がった結果馬乗りになったりしててて……」

さっきもあんな感じになってたような……

「おーい、大丈夫か?」

「はう!? あ、はは、はい! だだ、大丈夫です!?」

「大丈夫には聞こえねぇけどな」

「すす、すみません! あ、あたし、よくこうなったりして!」

よくこうなるって、どうなる?

「はぁ、よく分かんねぇけど、バトル再開でいいか?」

「はは、はい! も、もちろんです!」

シキは小型標識を握った。

ユイカも立ち上がり、拳を握る。

「サキ、さっきはあぁ言ったが、撤回だ。アタシの合図の後に使え」

「え? あー、うん、分かった」

何か思いついたのかな?

「行くぜ!」

ユイカが前へ飛び出し、シキと攻防を続ける。それをわたしは、とりあえず合図待ちで見ている。

ユイカは何かを狙ってるみたいだけど……

「あ」

分かったかも。

わたしは少しずつ動いてみる、すると、

「今だサキ!」

やっぱり、合図来た。

わたしは足に力を入れる。と、ユイカへ向かい瞬間移動した。

「え!?」

ただし、ユイカの前にはシキがわたしに背を向けた状態でいるので、必然的にシキへと向かう。

「と、止まっ…」

「逃がさねぇよ」

動こうとしたシキの手をユイカが掴み、移動を封じたそこへ、わたしの左手がシキへと突っ込んだ。


ドグッ


妙に深みのある音でシキの背中へと拳は入り、そのタイミングでユイカが手を離したので弓なりになってふっ飛んだ。

「やったか?」

しかし、シキはゆっくりと起き上がった。

「さ、サキちゃんの速さには驚きました」

どうやらわたしのアレをただ早いと見てるみたいだ。

「で、ですけど、次は当たりません!」

しかも、もう対策も出来ているらしい。

「て言ってるけど、どうする?」

「なら、それが本当か試してみるべきだな」

ユイカは前へ跳び、先ほどのようにシキと攻防を続ける。

わたしはゆっくりとシキの間に入れてユイカの正面に来るように動いていく。

ユイカに合図を出させたらシキは絶対その対策をしてくるだろうから、わたしは自分の意思で飛び込もうと思う。

そして、ぴったり重なった。

瞬間、わたしは前へと跳ぶ。

よし、これなら当たる……と、思っていた。

しかし、

「!?」

シキはわたしに気付き、こちらを振り向いた。

けど、この速さを避けることは出来ないだろ…

「と、止まってください!」

ガッ!

シキがしたのは、予想外の行動だった。

まさか、手に持っていた標識を地面に突き刺してわたしの前に出すとは。

標識の『止まれ』が正面に見えるの前で、

わたしの動きが止まった。

「え……? あれ?」

本当に止まった。

というか、わたし浮いてる。

「サキ!? お前浮いてんぞ!」

「うん、みたいだね」

「反応薄いなオイ!?」

「でもさ、別に初めてって訳でもないし」

今まで戦ってきたヒカルやケイも、こんな感じに止められたから。なんというか、慣れた。

ふむ……ヒカルの時みたいに喋れるけど、微妙に体が動かせる訳ではない。でもケイの時みたいに完全に止まるけど、喋れなくなることもないか。

「ヒカルとケイの足して二で割った感じかな」

「のんびり分析してやがる……」

でもここまでのんびり出来るのは、シキが攻撃してこないからだ。

「それが能力?」

「は、はい、あ、あたしの標識は、書かれたことを再現するんです」

なるほどー、『止まれ』だからか。

さっきの『縮め』もそういう能力なんだな。

「ひょっとして、刺してないと効かない?」

「うぅ……」

だろうね、そうじゃなければ標識を抜いてユイカと戦ってるだろうし。

「つか、それアタシみたいな別に動くヤツがいたらどうするんだ?」

「そ、それは……はぅぅ……」

シキは縮こまってごにょごにょと何か呟いてる。

まぁわたし達みたいのは予想だにしなかっただろうけど。

「え……えぇい!」

何か決めたのか、シキは標識を引き抜いた。

すると、わたしは動けるようになり、地面に降り……ず、

「あ」

「いっ!?」



ドンガラガッシャーン!



またユイカを巻き込んですっ飛んだ。

シキの能力がわたし達に効かないのは分かったけど、何でだろう?

勝率は五分五分っぽいのは。


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