死因からの能力
ケイは行ってしまった。
「もしそれが本当なら俺は負ける訳にはいかなくなったな。今までも勝ってたから、これからも勝てば何とかなるだろう……じゃあな、またどこかで」
これからは、大会に前向きに参加するんだろう。
さて、まだ残ってるわたし達は少し用事があるのです。
「瞬間移動をした?」
「みたいなんです」
ケイとの戦いの時、わたしはいつの間にかの移動を何回も繰り返していたらしい。
その謎をハカセに解いてもらおう。
「ふむ……例えこの世界の者でも、通常を越える行動が出来るのは一つしかない。能力だ」
能力か……あれ?
「ですけど、思い形見に能力があるんですよね?」
思い形見はユイカだ。けどわたしから離れていた、それなのに能力が発動したと?
「思い形見の能力を、使い手、カタミビトに移して扱うことも出来なくはない。過去にもそうして瞬間移動をした者もいたな」
「へー」
「だが問題なのは、意図的には発動出来ないということだな」
やっぱりそうなるか。
「あの速さがあれば勝負が楽になるんだろうが、あれ以来出来ねぇんだよな」
「ふむ……」
ハカセは思案顔になる。
「……思い形見の能力とは、要は死因だ。それを忘れているサキだから、きっと発動が不安定なのだろう」
「つまり、死因を思い出せば良いんですね」
「簡単に言えばね、出来そうかな?」
「まぁ、やってみます」
今度はわたしが思案顔に。
「ヒントになるか分からないが、高速や移動の類いは過去に交通事故や電車に轢かれた者が居たな」
「うぇ、ヤな死に方してんな」
交通事故や電車に轢かれて、か……電車なら、駅のホームからとか、後は、踏み切り……
「……踏み、切り?」
「踏み切りがどうしたんだ?」
「うん……今……っ!」
瞬間、頭に激痛が走った。頭を手で押さえてうずくまる。
「サキ!? まさか、また記憶が?」
「だろうね、恐らく今の問題を解決してくれる、そういう記憶だ……あまり、思い出したくはないだろうがな」
カン カン カン カン
踏み切りの音が聞こえる
そろそろ電車が通過して、音が止むと同時に渡れるようになるだろう
でもあんまり意味は無い、だって待ってる車とかいないし
ただ一人、 だけ
それにただ開くのを待ってたら意味が無い
だって、ここには轢かれたくて来たんだから
考え始めたのは、ちょうど一ヶ月前
を無くしてから、立ち直る為に引き込もって
考えて
受け入れて
この先を見て……無理だなって思って……この先が見れなくて
受け入れられなくなって
考えたくなくなって
我慢、出来なくなった
だから、後を追おうと思ってこの人の目が少ないここに来たんだ
カン カン カン カン
そろそろ来る、でも慌てない
恐怖は無いけど、いったら悲しむ人もいるんだろうな、とは思う
まぁそれでも は、 を選ぶけどね
という訳で
バイバイ
一人の女の子が踏み切りの中に入り、電車が……
……あまり、思い出したくない記憶だった。
でも、つまりはそういうことなんだ……
「……わたし、電車に轢かれてここに来たんだ」
「そうか」
「電車かよ……そりゃかなり痛いだろうな」
「いや案外痛み以前の問題だと思うぞ、一瞬で過度のショックを受けて逝けばおそらく痛みは無い。そう簡単に行くとは思わないけどね」
「そうなのか?」
「ただし、残りの処理によりダイヤは大きく乱れて大勢の人を困らせ、引いた運転手はトラウマを植え付けられて職を失うかもしれないがね」
「うわ……そっちのがヤベェじゃねぇか」
「まぁ生き返ればそれは無かった事になるがな」
「え、そうなんですか?」
「そうさ、自殺する寸前、そこに生き返る。ただし次に歩む道は自殺とは異なる道だ」
「そんなうまくいくのか? 自殺直前とか、また死ぬだけじゃねぇのか」
確かにそうかも、まして直前とか人によってはまた自殺してもおかしくない。
「いいや、優勝者には生き返ると同時に、生きる意味を与えるんだ」
生きる、意味?
「例を上げれば、彼氏にフラれたショックで自殺したが優勝した事により彼が駆けつけて助けてくれた。という感じかな」
「居んのかよそんな人」
「あくまでも例を上げたに過ぎない、とだけ言っておこうかな」
何か煙に巻く感じだ。ひょっとして、本当にいた?
「ともかく、記憶が戻ったのならもう一度試してみてはどうだ?」
あー、そういえば。
「部屋の中で良いですか?」
「キミが壁にぶつかって良いならね」
「ちょっと行ってきまーす」
紐を伸ばしつつわたしは一人扉の外へ、遮蔽物どころか何も無い空間が前に拡がっている。
よし、移動の練習だ。
とりあえず、走り出す時のように足に力を込める。タイミングを自分で決めて…………一気に前へ。
「……」
ただ前へ出ただけだった。
「おっかしーなー」
あの時は本当に無意識だったし、無意識の内にしか出来ないのかな?
念のためもう一回……
……やっぱダメか。
「おーいサキー、どうなったー?」
扉の奥からユイカの声、そろそろ戻ろうかな。
「ぜんぜん出来ないよー」
言って一歩踏み出した。
瞬間、わたしは瞬間移動した。
「え?」
あー、なるほど、本当に無意識だと出るんだねー。
というか、コレこのまま言ったらさ……
「いっ!?」
ほらやっぱり。
ドカシャーン!!
「痛っっ……」
「あいててて……」
「いや、痛みの概念は無いはずだぞ」
「あ、そういや痛みはねぇや」
「確かに、でも何となく言っちゃった」
「人の性だね」
「つうかサキ、今の成功したって事か?」
「ううん、ほぼ無意識」
呼ばれて急に歩き出した途端に瞬間移動。制御出来るはずもなく前にいたユイカを巻き込んで壁の本棚に突っ込んだ。
「なるほど、若干糸口が掴めた気がするよ」
「瞬間移動の仕方ですか?」
わたしとユイカでぶつかった時に飛び出した本を閉まっていると、ハカセが呟いた。
「考えられるのは2つだ、1つは必ず無意識でないと使えないということ。よく考えてみれば、電車に意識して引かれには行くが、意識して引かれることは無いだろう。意識する前に電車は引いてしまっている」
なるほどー、じゃあ意識しては出来ないってことか。
でもそれって結構不便かも、知らぬ間に移動してたってのは。
「もう1つは何だ?」
「もう1つは、移動先に対象物があることだ。今のようにぶつかるべき相手がいた時にのみ移動出来る。これならば死因の引きに似ている」
そっか、今もさっきもユイカの所へ瞬間移動してたから……あれ?
「それはおかしくねぇか? ケイと戦ってた時、アタシの所に来たサキはまた元の所に戻ったぞ」
そうだ、そこには何も無く空間だけだった。
「何も対象物とは人に限定したものじゃないだろう、電車だって目には見えないが空気を切って走っている。空間を指定する方法もあり得るだろう。あるいは、働き終え車庫に戻る電車のように、出た場所には戻ることは出来るとかな」
あー、なるほどー。
「ハカセあったまいいー」
「はっはっはっ、もっと誉めてもいいんだよ」
「ハカセかっこいいー」
「それは少し妙じゃないか?」
「言われても仕方ないかと思います」
「ふむ、確かに初見で私を男と見間違えた者は少なくない」
ほらね。
「あえて訂正はしてないが、皆いずれ気付くものだ。しかし一人だけ私から言って気付き、凄い謝られたこともあったな」
へー、過去の参加者の人かな。
「話が反れたな、とにかくこの2つが今可能性としてあり得る。また分かったら教えてくれ」
「ところでさユイカ」
「ん? 何だ?」
「今回ユイカの番と思ってまだやってないんだけどさ、覚えてる?」
「げ、アレまだ継続だったのかよ」
「忘れてたの?」
「うっ……ワリィ」
「仕方ないなー、じゃあ次はよろしくね」
「……へーい」
という訳で。
「ハカセの所でわたし達の能力について少し学び、再び参加者探しに向かうのだった まる」




