ここに居られるのは
「……」
「……なぁ、サキ?」
「……なに?」
「そんな根詰めて待つ必要はないんじゃねぇか?」
「わたし、そんな根詰めてるように見える?」
「あぁ」
そっか、そう見えるのか。
「そんな地面に体育座りで倒れてるケイ見てたら、誰だって思うだろ」
「うん……そっか」
「別に絶対起きんだから、のんびり待てばいいだろ」
「そうだけどさ……ちょっと、考えてる事もあって」
「考えてる事?」
「うん……」
さっきから考えてるけど、答えは見つからない。
「んだよつれねぇな、アタシに話してみろよ、なんか解決案見つかるかもしれねぇぞ」
「ユイカ……」
「一人で考えるよりは二人の方が案は出やすいだろ」
「……そうだね、ありがとう」
「気にすんなよ」
「うん……それでさ」
「おぅ」
「…………やっぱり、次の番もわたしが変わった方が良いかな、って」
「……は?」
ユイカはきょとん顔。
「だからさ、次はユイカの番だって言ってたけど、さすがに急だったから、やっぱり次もわたしがやった方が良いかなー、と。その辺りユイカどう思う?」
「………………はぁ!?」
「いやだから…」
「ちょっと待て! ケイの事で悩んでたんじゃねぇのか!」
「え? いや、別に?」
どうせヒカルみたいに起きるだろうし、ただ立ってるの暇だから座って、何となく考えてただけなんだけど。
「おいおい……珍しくしおらしいと思ったら、いつも通り過ぎんだろ……」
「しおらしいのはわたしらしくないからね」
「はぁ……心配して損したぜ」
「ドンマイ、ユイカ」
「おぅ……」
その時、
「う……」
ケイが起き上がった。
「お、起きたか」
「お前等……まだ居たのか、てっきり行ったものだと思ってたぞ」
「まね、ちょっと話したい事もあって」
「そうか……俺もだ」
立ち上がったケイは周りを見て拳銃を拾い、ポケットに納めた。
「もう一つはここな」
先ほどわたしが弾き飛ばしたもう一丁をユイカが投げ、ケイは受け取った。
「……」
拳銃を見て、わたし達を一瞬見て、拳銃を閉まった。まぁ、射たれてもおかしくはなかったね、今。
「で、話したいことってなんだ?」
「それはな……サキ」
「うん。何か、気持ちよくない負け方させてさ、悪いと思って」
「……はっ、そんなことかよ」
ケイに鼻で笑われた。
「勝ちは勝ちだ、オマエ達は基本殴りなんだろうが、俺や他の奴は武器だぞ? 首締めくらいで謝るな」
そういえば、鋏で首切ってるって言ってた人もいた。なら、まだ怖さがなくていいのかも。
いや、逆に時間かかって怖いかな?
「それだけか?」
「うん、一応」
「そうか、なら次は俺だ」
ケイはわたし達に近づいた。
「倒れてた時、あの子供の声を聞いた。それで、黒い扉を探せと言われたんだ」
「サキ、それって」
「うん、ハカセの所だ」
「さっき言ってたこの世界に詳しい奴か。場所知ってるんだろ? 案内してくれないか?」
「おぅ、別に良いが……」
「……」
ユイカと顔を見合わせる。
「どうした?」
「いや……なんつうか、さっきと違い過ぎねぇ?」
目に見えて明らかにケイの雰囲気が変わっていた。戦う前は舌打ち多めの戦闘狂だったけど、今ではかなり普通で、若干軽い。頭打って性格変わる人は聞いたことあるけど、首を絞めて性格って変わるのかな?
「……気持ちは分かる、けど普通の俺はこっちだ。アレは仕事モードだ」
なるほど、戦いに適したモードチェンジャーなのか。
「まぁいいか、案内するぜ、ハカセの所」
空間を出て暫く歩き、黒い扉に到着。ユイカ、わたし、ケイの順番で中に入った。
「なんだここ……書斎か?」
「いつ来ても驚くね」
「いやまだ二回目だろ」
「誰だい?」
部屋の奥の暗闇からハカセが現れた。手に本を一冊持っている。
「おや、キミ達か、それと……初めて見る人だね」
「アンタがハカセか」
「ほう、名乗っていないのに名を呼ばれるとは、私も有名になったものだ」
「いやアタシが言ったからだぞ?」
「まぁいい、掛けたまえ、話はそれから聞こう」
ハカセが本を閉じると、床から椅子が現れた。
紐の理由から、わたしが真ん中でユイカは左、ケイが右側に座った。
「アンタが2人の言ってたこの世界の生き字引だな」
「生き字引と名乗った覚えは無いね、何せ生きてはいないから。ただ、知識において私以上の者はいないだろう、第一人者だからな」
「いきなりだが、この大会に優勝すると生き返るってのは本当か?」
「事実だ」
ハカセは一言で返した。それを聞いたケイは肩を落として顔を伏せた。
「チッ……何でだよ、せっかく死んだってのに! 自ら死を選んだってのに! 何で生き返らされなきゃいけねぇんだ!」
「生き返るのは優勝した者だけだぞ? まぁ過去に例外なら沢山あったが」
「……ハカセ、教えてくれ」
「何かな? キミは言わずとも私をハカセと呼んでくれて機嫌が良い、大方のことは教えてあげよう」
ハカセ、呼び捨てが好きなのか。
「……何で、わざわざ自分から死を選んだ奴を生き返らせるなんてことをするんだ」
「それはな……ふむ、キミ、親はいるかい?」
「あ? 当たり前だろ、ここ数年会ってもいないけどな」
「なら、一緒に暮らしていた誰かとかは?」
その言葉を聞いたケイの肩がぴくりと動いた。すっと顔を上げてハカセを見る。
「…………一人、いる」
懐中時計を取り出して開いた。
「俺の名前の下の奴だ」
「よく見せてもらっても?」
「……あぁ」
ケイは立ち上がり、ハカセに懐中時計を手渡した。
「なるほど……」
懐中時計に彫られた名前を見てハカセは呟く。
「この人との関係は?」
「……仕事仲間だ。来る前も一緒にしていた……そこで、殺されたんだ」
「ほぉ……それで相手を殺し、自らは自害と」
「それがどうしたんだ、俺は何で生き返るかを聞いてるんだよ」
「生き返ったら、その人に会えるからだよ」
「……は?」
ケイの体が固まった。
「私達が出来上がるには、自殺したことに加えて、誰かに思われている事が必要になる。キミの一番近くで思っていたのは、恐らくその人だろうね」
「……だ、だが、アイツは確かに射たれて殺されたんだ」
「殺されたと言ったが、本当に死を確認したのかな? 言っておくが、別に拳銃で射たれても一瞬で死ぬわけじゃない。むしろ下手な刃物より助かる可能性は高い、ただ穴が空いた。それで死ぬほど人は軟弱じゃないよ、まぁ、血を流し過ぎたら別だが」
「……じゃあ、アイツは、まだ生きてるのか?」
「キミ自身がその証拠だね、キミを思っているのが、この人以外あり得ないとしたら」
「…………そうか」
ケイの肩が震える。
アレは、ひょっとして泣いてるかもしれない。わたしやユイカの位置じゃ見えないけど。
しかし、ケイはこう言った。
「……何で、涙が出ねぇんだ?」
「仕方ないことさ」
それにハカセはこう答えた。
「私達は、涙を流せないからね、この理由も、今だ研究対象なんだ」




