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過去の参加者

「いつでも来たまえ、鍵は開けておくから。まぁ気づかない時もあるがな」

わたし達はハカセの部屋を出た。

「しっかし……色々教えてもらった筈なのに、妙な謎が残っちまったな」

「……神に、お目通り出来ると思っていたのだが」

ユイカは自分の正体を知らされて妙な気分。ヒカルは神に会えなくてショックのようだ。

そしてわたしはと言えば、

「んじゃま、ハカセの欲しそうな謎探しに行こっか」

特に何も変わりはなかったのだった。

「いや環境適応力高過ぎだろ」

「だってさ、今さら悩んでも仕方ないじゃん。だったらそのまま進めば、自ずと全部分かるようになると思わない?」

「まぁそうだけどよ」

「ヒカルもさ、戦ってけばどっかで会えるかもしれないよ?」

「む……そう、だな。戦っていればいずれ、神にお目通り願えるかもしれないな」

2人も元通り、思ってたより深くは考えてなくて良かった良かった。

「では、私はここで」

「え? ヒカルも一緒に行こうよ」

「いや、ハカセの助手として動くには固まって動くよりバラバラの方が良いだろう」

ヒカルはハカセの助手やる気満々のようだ。

ちなみにわたしは……まぁ…………うん。

「なるほどそうだね、その方が効率良さそうだね」

「実はあんまやる気無ぇだろ?」

「ま、まさかまさか。何言ってるのさユイカ」

「まぁいいけどよ。とりあえずヒカル、またどこかで会おうぜ」

「あぁ、ユイカもサキも、共に勝ち抜こう」



こうしてヒカルと別れ、再び2人きりになったわたし達は暗い世界を歩いていた。一応、扉を探してるんだけど。

「無いな」

「無いね」

一つも見つからなかった。さっきから結構歩いたと思うんだけど、こんなに見つからないものかな。

「参加者は居んのにな」

「うん」

ハカセの所から今までで6人。なんとか全員に勝利した。

「でも一向に扉は見つからない……次会った人に聞いてみよっか」

「あー、良いかもな。その前に戦いになるだろうけどな」

と話していると、前から人が、

「じゃ、あの人だね」

「よし、まずは宣戦布告だな」

少し歩くと人の姿がよく見えた。

「そこのアンタ! アタシ達と勝負だ!」

よく確認する前にユイカが指を突きつけた。

「ちょ、ユイカ早いって」

「どうせ戦うだろ? なら聞くのは後でも遅くねぇって」

戦うのも後でも遅くないんだけどなー。

「あ、いえ、私は…」

しかし、相手の人は両手を振って戦いを拒んだ。

へぇー、珍しい人もいたな。いつもなら彼方から襲いかかってくるのに。

「そうして油断させる作戦か? アタシは騙せれねぇぞ! 行くぜサキ!」

ユイカが一人突っ走った。わたしは冷静に紐を伸ばして引っ張られるのを回避する。

わたしがついてきてないのに気づかずにユイカは相手へと近づく。

「オラァ!」

右ストレートが放たれる。

「っ!?」

すると相手は体を横にして避けた。

おぉ、あの早さのストレートを避けるとは、あの人中々やるかも。

改めてよく見る。相手は女の人だ。

背はユイカと同じくらい、ウェーブのかかった髪で、年齢は……三十代後半くらいかな? そんな人まで自殺するとは、いったい何があったんだろう。

と、今までユイカのラッシュを避けていた女の人が動いた。

「はっ!」

大きく下がると、服の裾から何かを取り出して投げつけた。

「おっと!?」

ユイカが止まった目前に投げられた何が突き刺さった。見てみると……

「なんだコレ? コレがアンタの武器か?」

それは線香だった。

でも線香って地面に突き刺さるほど硬かったっけ?

「落ち着いてください。そして、私の話を聞いてください」

線香を指の間に挟んで投げる体制のまま女の人は告げる。

「あ? 話ってなんだよ」

こちらも拳を握ったままのユイカ。三歩踏み込めば間合いに入れる距離だ。

「私はですね…」

「と見せかけてパンチ!」

その三歩を踏み込んでユイカが女の人に殴りかかった。

「……聞いてください」

しかし、



ドカァ!



「いっ!?」

「おー」

ユイカのパンチが届くことはなかった。

女の人の手から、長い棒が現れてそれをユイカは腹に食らってすっ飛ばされたからだ。

ユイカはわたしの隣に滑り落ちた。

その棒というのが、なんか線香に見える。

でも線香ってあんなに大きかったっけ?

と、ユイカの心配しなくちゃ。ダメージは無いらしいけど。

「ユイカ、大丈夫?」

「心配すんの遅ぇよ……しかも、お前ただ見てただけかよ」

「何で話を聞かずにパンチ?」

「いや、隙つけばあっさり勝って話出来ると思ってな」

まぁなんともユイカらしい。

とりあえず、こちらが攻撃しなければあちらはしてこないみたいだから、あちらの話を聞こう。

「話とはなんですか?」

すると女の人は線香を縮めた。まるで如意棒のような線香だ。

でも線香ってあんな如意棒……いや、もういいか。

思い形見っていう、普通ではない道具なんだろう。

「あなた方は、今回の大会の参加者の方ですね?」

「はい、サキといいます。こっちはユイカ」

「あら……その紐は」

女の人はわたし達をつなぐ黒い紐を見て呟いた。

「ひょっとして、あなた方が噂の一組の参加者ですか?」

一組の参加者?

「まぁ……多分、そうです」

一人の参加者と一人の思い形見、それで一組の参加者か。

「そうでしたか……今、私が飛ばしてしまったのはどちらですか?」

「えっと……ユイカは、思い形見、でしたっけ?」

「そうですか……でしたら一安心です」

「一安心、じゃねぇだろ、人のこと吹っ飛ばしておいて」

「でも、ユイカはダメージの概念が無いんでしょ?」

「まぁ痛くはねぇけどな、けど飛ばされておいて良い気持ちじゃねぇよ」

ユイカは立ち上がった。

「それはすみませんでした」

女の人は深々と頭を下げて謝る。

「ですが、話を聞かずに突っ込んできたあなたにも非はありますよ?」

「うぐ……」

まぁそりゃそうだ。

「自己紹介が遅れました。私の名前はアロマ、過去の大会の、元参加者です」

過去の大会の参加者……

「ハカセと同じだな」

「ハカセさんをご存知でしたか。私も、ハカセさんと同じように過去の参加者にして、この世界における例外的な存在なのです」

「ということは、戦っても意味が無いってことですか?」

「そうなります。私に勝ってもカウントされません。簡単に負ける気はありませんけどね、何せ私は過去に準決勝まで進みましたので」

アロマさんはやんわりと微笑んだ。結構凄いこと言ってたけど。

「へぇ……逆に戦ってみたくなるな、それ」

ほら、ユイカの戦闘意欲上げてるし。

「あなた方のことはすでに私達、他の例外の皆さんに伝えられています。だからといって贔屓されるわけではありませんが、時により声をかけられる場合がありますのでその時は訴訟を隠さずに話してくださいね」

「例えば、どんな人がいるんですか?」

「そうですね……」

アロマさんは顎に人差し指を持って来て思案すると。

「マントをつけて高笑いする方と、全身黒ずくめで寡黙な方と、いつでもニコニコ笑っている方と、携帯電話を扱うサキさんくらいの方とかですね」

えー……っと、聞く限りじゃ普通な人は後の2人くらいかな?

「皆さんそれぞれ役割を担っていまして、私は警備員のようなことをしています。公平に戦いをしていない参加者に注意したり、時に力づくで……こほん、言葉で穏便に和解させたりしています」

時に力づくなんですね、分かりました。

「ところでアロマさんの能力って何ですか?」

「ふふふ、それはヒミツです」

やんわり断られた。

「では、アロマさんは幾つ何ですか?」

「ふふふ、それもヒミツです」

やんわり断られ……

「女性に年齢を簡単に聞くものじゃありませんよ?」

後ろに鬼を見た気がした。わたしも女だから平気だと思ったんだけどなー。

「怖ぇ……」

ユイカもビビるほどだった。

「何か他にご質問は?」

「えっと……じゃあ、この辺りに扉はありますか?」

「扉ですか? それならここを真っ直ぐと行けばありますよ」

アロマさんが来た方向を指差した。

「ありがとうございます」

わたしはぺこりと頭を下げた。

「だってさ、ユイカ」

「あぁ、行くか」

アロマさんの隣を歩いて行く、

「他の皆さんに出会ったらよろしくお願いしますね」

「はーい」

ハカセみたいな人、これからも沢山会うのかな。


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