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プロローグ

……前が見えない。


それに、真っ暗だ。


目の前がまるで目をつむったように真っ暗で……あ、


……目、つむってるや。それなら真っ暗な筈だよ。



――、――ろ



ん? 今、何か声が聞こえたような?



おい、起きろ



今度はちゃんと聞こえた。


起きろ? あー、目をつむってるからだね。

「……ん」

わたしは少しずつ目を開けた。それで分かった、どうやらわたしは寝ていたみたいだ。

目を開けた先は、真っ暗、けど妙な明るさのある空が広がっている。夕方かな?

「やっと起きたか。もうとっくに終わったぞ」

顔を右に向けると、起きるように言った人が……人? が立っていた。

腰まで届く長い金髪に、造り物のような青い瞳、服も黒を基調として白と黒だけの、飾りの多い上に下はロングスカート。

まるで、西洋人形のような出で立ちの日本語ペラペラな人が腕を組んで立っていた。

「あー、えっと……おはようございます?」

寝てたみたいだし、一応そう言ってみた。

「なにがおはよう、だよ。ここには昼夜の概念は無いらしいぞ?」

昼夜の概念が無い? この人はいったい何を言って……

「あれ?」

上体だけ起こし左右を見た。

……ここ、何処?

見える範囲全部、荒れ地のような雰囲気の真っ暗な場所、一応屋外っぽいけど、何処なんだろう? この人なら知ってるかな?

「あの……ここ、何処ですか?」

「ここか? ここは簡単に言えば、死後一歩手前の世界ってところだな」

「…………はい?」

意味が分からず首を傾げた。死後一歩手前の世界?

「だから、アタシ達は一応死んでるんだよ」

え……?

わたし達が、死んでる?

「―――っ!!」

その時、頭に激痛が走った。

何だろう、何か、思い出している―――







ヨウコソ キミタチハエラバレタンダ


マズハ ヨセンヲハジメルヨ


ココデ サンカニンズウヲハンブンニサセテモラウカラ



妙に聞き取りにくい声が聞こえる。

そして、目の前には青い服を着た男の人が手に金槌を持って立っている。

何だろうコレ……わたしが見てる景色みたいだけど、


と、その時、



ガッ



男の人がわたしの頭を撲った。

そのままわたしは仰向けに倒れていき、男の人は更に金槌を振り上げて……



ガッ!



当たる寸前、横から伸びた白い手が金槌を受け止めた。

目を閉じようとしているわたしが最後に見たのは、金槌を受け止めた、あの金髪の人の姿だった……。







「……い、今のは?」

忘れていた記憶を思い出したみたいだった。そうか、だからわたしは倒れてたのか。

「おい、大丈夫か?」

急に苦しんだわたしを心配して金髪の人が訊いた。

「はい、なんとか」

「そうか、なら良かった。そうとなりゃ、行こうぜ」

「行く? 何処へですか?」

「決まってんだろ、願いを叶えてもらいにさ」

願いを叶えてもらいに?

「さっき金槌持った男をボコボコにしたら急に消えてな、そしたら妙な声が聞こえてこう言ったんだよ。『全員と戦え、見事優勝したらなんでも願いを叶えてやる』ってな」

妙な声って、さっきの聞き取りにくい声かな?

「だからな、さっさと優勝して、なんでも願いを叶えてくれるとやらで生き返させてもらうんだよ」

なるほどー、あれ?

「今、全員と戦えって言いました?」

「言ったぞ」

「てことは……わたしとも戦うってことですか?」

というか今さらかもだけど戦うってどういうことなんだろう? わたし実は武道をちょっとやってるけど、いっつも負けまくりなのに。金槌を持った男の人をぼこぼこにした人と勝負になる訳ない。

「いや、それは多分無いっぽい」

「へ?」

金髪の人は髪の中に手を入れた。そこから何かが取り出される。

それは黒い紐だった。どうして頭の中から紐が?

「なんか知らんけど、コレで繋がってんだよ。アンタとな」

「わたしと?」

金髪の人が紐を引くと、引っ張られる感覚が左手に感じた。改めてよく見てみると、左腕にブレスレットが着いていて、黒い紐が伸びていた。その紐の先は、もちろん金髪の人に繋がっている。

「アタシが考えるに、多分二人一組だと思うんだよ」

「二人一組?」

「理由は分からねぇけど、コレのせいで互いに遠くへ離れられないみたいだし、そうなら二人で戦えば良いんじゃないかって思ったんだ」

なるほどー、確かに楽かも、ちょっとズルい気もするけど。

「まぁなんにせよ、繋がって離れられないんだから一緒に行こうぜ」

「そうですね」

ここでじっとしてても仕方ない、なら歩いた方が何か見つかるかもしれない。

「よし、これからよろしくな……えっと」

あー、名前言ってなかったね。

「サキです。あなたは?」

「あー……あのな、実は名前が思い出せないんだよ」

「名前が?」

「それ以外にも記憶が思い出しにくいところが少しあんだが、こんな所へ来たくらいだから記憶を忘れたのもおかしくは無いかとは思ったな。しかしいざ無いと困るもんだな」

思い出せないにしては前向きだなー。

ふと、わたしも記憶を思い返してみる……

うん、さっきのもあるし、わたしも所々記憶が思い出せない。重要な部分な気がするけど、思い出せなくて困ってないし、それにその内思い出すかも。

わたしもこの人みたいに、前向きに考えよ。

「つう訳でさ、なんか良い名前ないかな?」

「自分で考えないんですか?」

「面倒くせぇし」

凛々しいなーこの人。

名前、名前か……

「…………ユイカ」

「ユイカ?」

何故だろう、この人を見たらそんな名前が浮かんだ。

「へぇ、良い名前じゃん。気に入ったぜ」

どうやら好評だったみたいだ。

「それじゃ改めて、よろしく、サキ」

「はい、ユイカさん」

「ユイカで良いぜ、言葉使いも軽めでいいからよ」

「じゃあ、よろしく、ユイカ」

わたし達は握手をした。


名前を覚えていたサキ。記憶を無くしていたユイカ。黒い紐で繋がれた2人が主人公の『オモイノカタミビト』

参加者となった2人の戦い方は? 思い形見は?

そして、無くした記憶は……?

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