雨・憂鬱・幸せ
三十分ほど前から降り始めた雨は、短い時間でその勢いを増した。
頭痛がするほどじめっとしたトンネルには、陰湿な空気が立ち込めている。
もうすこしで、空気だけでなく水も流れ込んでくるのだろう。
この辺の土地は傾斜が激しいから、僕が水浸しになるのも目に見えている。
そうしたら、楽に眠ることが出来るのだろうか。
薄暗いトンネルの中ほどで、僕は暮らしている。
今までにも、こんなことはあった。
激しい雨、やってくる水。
そのたびに眠りにつこうとした。そして、その都度失敗してきた。
歩く気力も、逃げる気力も、立ち上がる気力もない中。何度楽になれたらいいと思ったか。
今回も、どうせ失敗に終わるんだろう。
口の端が上がっていたことに気付く。僕は笑っていたのか。
憂鬱な気分が僕を包んでいたのは、最初のうちだけ。今じゃもう慣れた。
人間の適応能力って、恐ろしいね。考えるだけで悪寒がする。
僕はどうしてここにいるんだろう……
不意に、感情が戻ってきた。
腰まで水につかっていることに気付く。
もう、こんなところまできたんだ。
早いな。
この先、僕が生きていていいことなどあるのだろうか。
僕に幸せは訪れるのだろうか。
僕の求める幸せって、なんなんだろう。
珍しく遠ざかっていく意識の中で、思う。