第一話・爆笑姉妹ヴァンパイアの城へ行く
あらすじ
今日も今日とて、彼女達の旅は続く。
すべては、レアな魔術書のため。
徒歩五分のところにあるヴァンパイアの 城に行った彼女達。
果たして、ヴァンパイアは無事に生き残れるのか?
え? 彼女達の心配?
そんなの無用です。
「ヴァンパイアの城に行こ★」
この一言が、すべての始まりだった。
「……は?」
いきなりな姉——スフィア=ラービスの言葉に、妹のマヤ=ラービスは眉をひそめた。
「聞こえなかった?」
スフィアの言葉に、マヤはふるふると首を横に振る。
「……ヴァンパイアって……?」
「そうだけど?」
「……なんで……?」
「決まってるじゃないっ!」
スフィアは、びしっ! と、あさっての方を指さし、
「魔術書があるから★」
………………………………………………………………………
「またあぁぁぁっ!?」
「さぁ、行くわよ★ マヤ」
そう言うと、スフィアは問答無用でマヤの髪を引っ張り、ヴァンパイアの城へと出発した。
スフィアの魔術好きは、一体いつから始まったのか?
それは、永遠の謎である。
マヤが、スフィアより三年ほど遅れて生まれ、物心ついた時には、すでにスフィアは魔術に染まっていた。
……一体何があったの……?……姉さん……?……
当然の疑問てある。
マヤは、答えが怖くて今まで一度も聞けないでいたが……
それに対して、マヤの方は魔術にはほとんど興味がなかった……のだが、姉が姉なだけに、マヤにも魔術の知識などが、結構……いや、かなり身についてしまった……
……え?……マヤにどんな能力があるか……?……
まあそれは……そのうちってことで……
と、とにかく! そういうわけで、姉妹はヴァンパイアの城へと向かったのだった。
ひぅうううう
冷たく乾いた風が吹きすぎる。
スフィアのショートカットの紫色の髪と、マヤの腰より長い水色の髪が、静かに揺れる。
「……とうとう……着いたわね」
「歩いて五分でしょ」
ぐぎぃっ!
「ぐぴいっ!?」
いきなり髪を引っ張られ、奇妙な声を出すマヤ。
「マぁあああヤぁあああっ!」
スフィアは、ジト目でずずいっと顔を近づけ、
「せぇええっかく人が徒歩で五分ってあほらしさを隠して、場を盛り上げようとしてるのにぃいい!」
「わかっ……姉さんわかったからっ……髪はなして………いたひっ……」
ぎ……きぃいいい………
きしんだ音を立て、城の扉が開いた。
そして中には、死屍累々と並ぶ死体……ではなく……
『チャイナドレス!?』
思わずハモるマヤとスフィア。
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「きゃん★ よく見ればセーラー服もあるぅ★」
「あるぅ★ ってちがうからっ!」
マヤは、びしぃっ! と、並ぶ服を指さし、
「問題は、なんでこんなとこにこんなものがあるかってことでしょっ!」
「趣味じゃないの?」
「ってゆうか、どんなヴァンパイアなの!? それは!? ……って……そういえば……この世界にセーラー服なんてあったっけ……?」
「へ!?」
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しばしの沈黙。
「……ふっ……さあ、先を急ぎましょうか」
「ちょっと待って、今さらっと……」
かちゃっ
マヤの言葉の終わらぬうちに、スフィアは次の扉を開け、中に入っていった。
慌ててついて行くマヤ。
そして……
「うわぁ」
中を見て、思わず感嘆の声を上げた。
広さは、ちょっとした食堂くらいはある。
だが、驚くべきはそこではない。
驚くべきは、部屋の中にぎっしり並ぶ本の数である。
……おそらく、百は軽く超えているだろう。
「これ……全部ここのヴァンパイアが……?」
「……多分……ね……ん!?」
スフィアは、本棚をぐるり、と見渡し、ある部分に視線を向けたまま硬直した。
「どうしたの? 姉さん?」
マヤの言葉に、スフィアはぎこちなく振り向き、
「……これ……なんて読む……?」
「え? えーと……どれどれ?」
マヤは、スフィアの指差した本に視線を……って……
へ!?
「どうじんし!?」
本の表紙には、確かに『同人誌』と書かれていた。
それからよく見てみると、所狭しと並べられた本のすべての題名が、同じようなものだった。
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「ねえ……姉さん……」
「何……?」
「ここって……本当にヴァンパイアの城………?」
呆然として問うマヤ。
「……知らない……」
『お姉ちゃん、次はどんなお話をしてくれるの?』
わたしは小さい時、よくお話をねだった。
すると、姉は優しく微笑み、ゆっくりと話し始めた。
……怪談を……
夜、道を歩いているとうしろから……。
真夜中に、鏡をのぞくとその中に……。
そんな話を、三歳の頃から十一年間も聞き続けたわたしである。
怪談など、今ではさっぱり怖くない。
だから、ヴァンパイアの城へ行く、と言われても、別に恐怖感はなかった。
ヴァンパイアが出てきても、姉は鬼を超越する魔力と破壊力を持ち、わたしも多少は魔術を扱える。
多分……いや絶対、死にはしない。
姉も、
『ヴァンパイア? そんなの束になってかかってこい!』
と言う勢いである。
……でも……これはちょっと……
所々に飾られた絵。
……アニメの……
明かりの灯ったロウソク……
……カラフルな……
「……帰る……」
「待てっ!」
ぐわしっとスフィアがマヤの襟首をつかむ。
「あ・ん・た・ねぇぇ。まさか、ここまで来て、怖いから引き返す、なんて言わないわよねぇぇ★」
ちなみに、現在位置は、ヴァンパイアがいると思われる部屋の前。
「そんな……別に怖くはないけど……」
「けど?」
「もう持てない★」
マヤは、今までの部屋にあった同人誌やイラストなどのぎっしり入った鞄を見せつつ言った。
「……も……持ってくるなぁぁ!」
怒鳴るスフィア。
「だってねぇ……おもしろそうだったし……ほら、特にこのペ〇〇ナとか………」
「……はいはい。とにかく中に入るわよ」
スフィアは呆れたように言い、扉を開けた。
さっき入った、図書室くらいの広さはある
その部屋の奥に、一つのカンオケがあった。
部屋全体にもやがかかっており、それがより一層不気味さを引き立てていた。
人の気配は、ない。
「部屋……間違えたかな……?」
「まさか……でも、こんなに暗くちゃ何も見えないわね……」
言って、小さく呪を唱え……
「よっ……っと!」
スフィアの手に、小さな光の玉が生まれた。
そして、それを頭上に投げる。
「さーて、これで見やすくなったし……さっそくヴァンパイア探しを始めるわよー」
「はーい」
のんきに言い合った。
その時!
……かり……かりかり……
「何!?」
あたりを見回せど、人の姿はない。
かり……かりかり……
ただ、不気味な音が続くばかり。
「あ、あそこ!」
マヤの指さした先に、ぼんやりと灯りが見えた。
なんと! そこには!
………………………………………………………………………
ずざざざざっ……ばん!
マヤとスフィアは、まったく同時に後ずさり、扉を閉めた。
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「……マヤ……」
「……何……?」
やや放心気味に返事をする。
「ごめん……あれ……何に見えた……?」
「……原稿書いてる男の人……」
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「……と……とりあえず、さ……もう一回入ってみよう……か?」
「そ……そうだね……姉さん……」
二人で頷き合い、ためらいながらもう一度扉を開ける。
すると、
「やぁ、どうも」
ずしゃぁぁぁっ
床に思いっきり突っ伏すマヤとスフィア。
扉を開けて、すぐ目の前には、さっき原稿を書いてた男の人が立っていた。
「……ね……姉さん……夢じゃなかったね……」
「……そ……そうね……」
よろよろと身を起こしながら言う。
そんなマヤとスフィアを見て、男の人は不思議そうな顔で、
「どうしたんです? いきなり転んだりして」
「誰のせいだと思ってんのよ!」
「……はい?」
「大体ねぇっ! なんでヴァンパイアの城にチャイナドレスや同人誌が置いてあんの!? それにあろうことか、『やぁ』なんてフレンドリーに出てきてぇぇぇ! なんかの間違いでも、せめてマントなびかせて『ふはははは、よく来たなっ』ぐらい言いなさいよ!」
「……いや……そんなこと言われても……」
「……姉さん……後半なんかちがう……」
「ともかくっ!」
スフィアは、男の人をびしっ! と指さし、
「あんたヴァンパイア!? だったら、持ってる魔術書を全部出したら命まではとらないであげるわ!」
………………………………………………………………………
「……は……?」
ややあって、男の人がまぬけな声をもらす。
「……ヴァン……パイア……? 誰が……?」
無言で男の人を指さすマヤとスフィア。
「……なんで……?」
……いや、なんでって言われても……
「……ちがうの……?」
マヤの言葉に、男の人は首を縦に振る。
「じゃあ……あんた……誰?」
と、ジト目のスフィア。
「おれは……トウヤっていいますけど……」
「ええっ!?」
男の人の言葉に、マヤは驚いて声を上げる。
「ど……どうしたの……? マヤ……?」
「まさか……トウヤって……」
マヤは男の人をびしっ、と指さし、
「あの噂の『美しきコスプレイヤー』の!?」
ごずっ!
なぜか、いきなり柱に頭をぶつけるスフィアとトウヤ。
「なにしてんの? 二人とも?」
『好きでやったんじゃなぁぁい!!』
ハモる二人。
「大体なんなんだ!? その『美しきコスプレイヤー』って!?」
トウヤの言葉に、マヤはきょとん、として、
「え? ちがうの? 前にチャイナドレス着てた人……自分でそう名のってるって……」
「名のってない名のってない。確かにチャイナドレスは着たけど……」
「……二人とも、何の話してるの……?」
スフィアはややとまどい気味に言った。
話がわからないらしい。
「つまり……わたし、前にこの人に会ったことがあるの」
「……いつ……?」
「前にやった、ちょっとした集まり。その時、その人チャイナドレスを着てたの……って……あれ?」
マヤは、あることに気づき、首をかしげる。
「どうしたの? マヤ?」
不思議がるスフィア。
当然だろう。スフィアは知らないのだから。
「……ここ……前のイベントの会場……」
「は!?」
………………………………………………………………………
冷たい空気が流れる
「ここ……ヴァンパイアの城じゃ……ないの?」
「それ、隣」
トウヤが窓の外を指さす。
……なるほど……
確かに、その指さす先に、古びた城があった。
「じゃぁ……ヴァンパイアって……?」
「俺だけど?」
ショートカットの、見た目十六歳くらいの黒ずくめの少女が答えた。
……って……
『どえええええ!?』
全員の声がみごとにハモった。
「あ……あんた誰!?」
スフィアの問いに、少女はあきれ顔で、
「……だから、ヴァンパイアだって」
「今……昼だけど……?」
と、マヤ。
空には、太陽がさんさんと輝いている。
……こんな真っ昼間に、出て来るものなの……?……ヴァンパイア……って……?
「ま、気にするな」
……いいの……?……それで……?……
軽く言うヴァンパイアに、マヤは呆然とした。
「……姉さん……?」
どうしよう? と言ったマヤに、スフィアはただ一言。
「……つかれた……」
「……わたしも……」
他に、返す言葉は思い浮かばなかった。
——その後、ヴァンパイアは何事もなかったかのように自分の城へと帰り、トウヤも次のイベントの原稿を必死で書いているらしい。
そして、マヤ達は、と言うと……
「ヴァンパイアの城に行こ★ 今度は歩いて十分のとこ★」
「……またああっ!?」
「さあっ行くわよマヤ!」
ぐきっずるるるっ
有無を言わさず、マヤの髪を引っ張り引きずっていくスフィア。
「……も……もういやだぁああ!」
マヤの叫びが、晴れわたった空に、虚しく響く……
……誰か……この姉を止めて………
(第一話:完)
あとがきと言う名の和平会談
(黒月真名(作者)・スフィア(スフ)・マヤ)
スフ:始まりました、新連載!
全四話立てとは言うものの、本当にそれで終わるのか!?
黒月:……………
マヤ:現在進行中の『呪いバンザイ!』と『肝っ玉母ちゃん』の執筆はどうなるのか!?
と言うか、そっちがネタ切れ気味でこのシリーズを始めたのではないか?
という疑惑を持たれるかもしれないけど、とにかく出ました第一話!
黒月:…………
スフ:…………
マヤ:…………
スフ:………なんだか静かだけど、どうしたの? 作者さん?
黒月:……………
マヤ:う〜ん………脈よし、息あり、これは………
スフ:これは?
マヤ:寝てるみたい。もうぐっすりと。
スフ:え〜!? 今!?
まだあとがきが残ってるでしょ!
ほら起きた起きた!
黒月:う〜………まだ眠い〜……
スフ:いいから早く起きなさいよ!
あとがきはどうするの?
黒月:う〜……、あと二日ほど時間をください………
マヤ:いや、それ確実にあとがきが終わってるからね!?
黒月:………春眠暁を覚えず…………
スフ:もう暦の上では夏よ!
ほら起きて!
黒月:………年眠暁を覚えず…………
マヤ:返しがうまい!
スフ:なるほど!
……って、感心してる場合じゃないでしょ!
黒月:……良いお年を〜……
マヤ:え?
まだ半年……どれだけ寝る気なの!?
黒月:ぐぅ。
マヤ:起きて! 作者さん! お〜い!
黒月:zzzZZ……………
マヤ:あちゃあ。
スフ:駄目なの?
マヤ:うん。どれだけ眠いんだか、これはしばらく起きなさそう。
スフ:さーて、どうしたものだか………
マヤ:いつもなら、次回作の紹介をするとこだけど、肝心の作者さんがこれじゃあね。
スフ:うーん………
?:では、ここからの作品紹介はこちらが引き受けましょう。
マヤ:うわっ、どこから現れたの!?
っていうか、誰!?
?:それはさておき。
スフ:さておくな。
?:第二話は、一人の少女が主人公。
マヤ:うわっ、あの姉さんのツッコミをうまくかわしてる!
?:少女にはある事情があって、あちこちを旅していたが、ある時とんでもない事故(?)に巻き込まれてしまい………
マヤ:ふむふむ。
?:以下、次号本編に続く。
スフ:言わないのかーい!
?:それは、作者さんがぼーっとしてて、次回作がまだ完成してないか……っ、げふげふっ!
それでは皆様、次回作でお会いしましょう!
マヤ:あ、逃げた。
スフ:最後にとんでもないことを聞いたような気がするけど……
マヤ:でも、一応作品紹介はできたし、あとは作者さんが——!?
スフ:マヤ? どうしたの?
マヤ:姉さん、大変。
今、ものすごい情報が入ってきた。
スフ:な、何? 改まって。
……そんなに凄いの?
マヤ:うん。絶対に姉さんもびっくりする。
スフ:……そ、その情報とは………?
マヤ:——実は、このあとがき…………始まってから、もう二日経ってるの!
スフ:……ぇえええっ!?
まだ一時間くらいしか経ってないでしょ!?
ここの時間の流れってどうなってるの!?
マヤ:あとがきを書きながら寝ちゃった……とか、かな?
……ありえそうだけど。
で、さっき作者さん、あと二日寝るって言ってたでしょ?
だから、そろそろ………
黒月:っくあぁぁあっ!
あ〜良く寝た〜、もう頭すっきり!
さ〜て、さっそくあとがきを………って、あれ?
スフィアさんとマヤちゃん、なんで床で寝てるの?
風邪ひくよ〜? お〜い。
スフ:……もう疲れた………帰って寝たい…………
マヤ:二日くらいね………
黒月:…………はい?
注・このあとがきを書くのに二日かかったのは実話です。
(あとがきと言う名の和平会談:とりあえず、終わりということで)




