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第3話 社畜男、邂逅

リリムは俺の元に戻り、「お待たせしました」と一言。

さっきは取り乱してるように見えたが、今は冷静だ。

俺の差し出した手には見向きもせず、「女神様のご指示によりオキタソウジさん、あなたのお手伝いをさせて頂きます」

「すっごく不服ですけど(小声)」

「え?」何か聞こえた気がするが小さい事は気にしないでおこう。

「それでリリム?俺たちはこれから魔王を倒すための冒険をしていくんだろ?まずは何からすればいいんだ?」とリリムに問いかける。

「オキタソウジさん、先程から魔王魔王と仰ってますが一体何のことですか?」と訳のわからないといった様子のリリム。

「俺のことは蒼司でいいよ!だって魔王がいてそいつが世界を滅ぼそうとか支配しようとかしてるから、それを倒して俺がこの世界のヒーローになるって話だろ?」

「先程の頭のダメージが残っているのでしょうか?」と真顔のリリム。

「俺は正常だわ!」

「ソウジさん、まずその魔王とやらはこの世界にいませんよ?」

「へ?そうなの?」

「はい」まだ真顔のリリムは続ける。

「先程も話しましたが、あなたが…kろされかけt……戦っていたような魔物が異常に増えて凶暴化しているんです」

何か今酷いこと言いかけてた気がするが、まあここはしっかり聞いておこう。

「実際凶暴化した魔物に壊滅させられた町や村もあります」

「マジか…町や村の中って安全圏じゃないんだ?」

「小さな町や村には警備の兵士は少ないので、大量の魔物に襲われたら厳しいのかと」

「なるほどなー」

「そこで、魔物の大量発生の原因を突き止める為、1人でも多くの人を助ける為、私達女神様に仕える巫女がそれぞれの選ばれし戦士達のご助力をするよう命じられたのです」

「私達ってことは、リリムと同じようなのが他にもいるっことか?」

「そうですね」

「俺の他にも異世界からの奴がいるのか?」

「全部が異世界からではありません。私のように異世界からの選ばれし戦士に付く者もいれば、この世界で秘めたる大きな力を持つ者に付く者もいます」

「ほぇー」

「まあ、、私はハズレだったようですけど(小声)」

「え?」また何か聞こえた気がするが...そんなことよりも俺には聞きたいことがあった。

「なあ、俺がこの世界に選ばれて来たってことは俺には何か特別な力とかあるんだろ?」

そう、俺の知ってる異世界転移といえばチートだ。

今は何も出来なくても、特別な何かで俺はチートになってこの世界を救う!と考えていたのだ。

「ちーと?」リリムは聞いたことのない言葉に首を傾げる。

「だっかっら!俺には特別なめちゃめちゃ強い力がとか俺にしか扱えないすっげー武器があるとかさ!」

「ソウジさんはソウジさんのままですよ?」

「そりゃあ俺は俺だけどさ、ほら、リリムから見て俺に何か特別な才能があるかとかないの?」

「うーん...」考え込むリリム。

「ではお聞きしますが」

「おう!何でもこい!」

「あなたはこちらに来る前の世界では何をされてましたか?」

「会社員だな」

「カイシャイン?」

「まあなんだ、、働く人みたいな」

「ふむ、何か特技とかはございましたか?」

「いや、これといって何も」

「他の人と比べて誇れるもの等ございましたか?」

「うーん、身体が頑丈みたいな」

「身体が頑丈?」

「ああ!俺いわゆる社畜ってやつだったんだけどさ」

「シャチク?」

「なんて言うのかな...会社に飼い慣らされて意思も心もない、ただただサービス残業を繰り返す働く毎日みたいな?」

「よくわかりませんが、大変そうですね」

「ああ!でも俺3ヶ月間休み無しで毎日サービス残業が続いても全然身体は元気だったぜ!」俺はガッツポーズを決める。なんか悲しい。

「わかりました」とリリムは言う。

「お、俺に何の才能があるかわかったのか!?」

「はい」

「あなたには...」

ちょっとドキドキしながらリリムの言葉を待つ。

「あなたには奴隷の才能があるようです(笑顔)」と明るく言い放った。

「……え、、と?」聞き間違いじゃないよな?ともう一度聞いてみる。

「リリム、もう一度いいか?」

「はい、あなたには奴隷の才能があるかと」

「ノォォォォォォ!!!!」俺は発狂した。

「社畜抜け出して世界のヒーローになれると思ったのに!異世界に来たら今度は奴隷かよぉぉぉ!!!!」

「まああくまで今のあなたの話を聞いて言っただけですけど…」

「え?何か女神様から預かった力で何か見たとかじゃなくて?」

「確かに女神様から特別なお力を授かってはおりますが…(何でこの人そんなことまで知ってるの?)」異世界モノへの憧れナメんな!

「じゃあそれを使って…」

「え?コイツに使うの?なんかやだなぁ、、もったいな…(小声)」

こいつ、出し惜しみしてやがる…

「ほ、ほら、私の女神様から授かった力は限りがありますから、なるべく温存しておきたいのです」

苦し紛れにも思えるが、そういうことにしておこう。

そんな会話をしていると、ある気配に気付く。

「嘘だろ?」と俺は思わず声に出す。

先程撒いたと思ったスライムが目の前にいるのだ。

「臭いでも辿ってきたんですかね?ソウジさん昨日お風呂入りました?」

「昨日までネカフェ泊まりが続いてたからな!3日は入ってないぞ」

「うわぁ…」明らかに引いているリリム。

「引いてんじゃねぇ!!」

そんなことより、今は目の前にいるこの魔物をどうするかだ。

「リリム!その女神様の力とかで何とかなんねーの?」

「え…本来はあなたが倒すものであって、こんなことで力を使いたくn…」言うてる場合か!

とにかく今はこの状況を何とかしなければ。逃げても時間をかけてまた追いかけてくるのであればやはりこいつは倒すしかない。

「俺が何とかする!」と俺は覚悟を決める。

「リリム、お前のその力で俺が魔法使えるようにとかならないの?」一応聞いてみる。

「ソウジさん、まだ頭のダメージが残っているのですか?」

「俺は正常だわ!!」とつっこみながらスライムに飛びかかろうとしたその時だった。

「ジャキン!」という音と共にスライムが真っ二つに。

ハッと見上げるとそこにはスラッと背の高いブロンド髪の女性が剣を収めるところであった。

「え、えーと?」恐らく助けてくれたのであろう。

女性は小声で何かを言っているようだったが、日本語でないことはわかった。

「リリム、お前の力でこの人が何て言ってるかわかるようにならんの?」と問いかけた、と同時になぜこいつは俺と日本語で話しているのか、ふと疑問に思ったがここはファンタジーの世界だからということにしておこう。

「はい!そのくらいのことなら簡単にでき…」ん?どうした?

「あー、ちょっとそれは力の範囲外というかなんというか…

ゴニョゴニョ」

(こ、こいつは…)

仕方なく俺は何とか彼女にお礼を伝えようと伝わりそうな言葉で話し始める。

「ア、アノ、タスケテクレテアリガトウ」ジェスチャーを交えながら必死に伝えてみる。

「まだ頭のダメージが残っているのですか?」

「やかましいわ!!」

すると彼女が口を開く。

「大丈夫だったか?君達は何故こんなところにいるんだ?」と問いかけてきた。もちろんこれは日本語ではないが俺にはなんと言ってるかわかった。なので俺も彼女と同じ言語で話し始める。

「ああ、何とか大丈夫だったよ!助けてくれてありがとう!」

リリムが呆気にとられた顔をしている。

「え?ソウジさん彼女の言葉がわかるのですか?」

「うん、ギリシャ語だったみたいだからな!俺ギリシャ語はわかるんだ」

「あなたの世界ではギリシャ語というのですか…まさか話せるなんて驚きです」

「ちょっとしたキッカケがあってな」

「キッカケですか?」

「俺ゲームが好きでさ、よくオンラインゲームやってたんだけど」と過去の自分について話し始める。

「そこでギリシャ人の女性と出会って仲良くなってさ、話す時はチャットで翻訳機能使ってたんだけど、俺彼女のこと好きになってさ、それで俺がギリシャ語覚えて実際の声でVCで話せたらって思って、ちゃんと話せるようになったら彼女に告白しようって頑張って勉強したんだ」

「なるほど、何だかよくわかりませんが愛した女性の為にソウジさんは努力をしたということですね?」

「まあ、そういうことだな」と少し照れくさそうにリリムに返す。

「素晴らしいことですよ!そこまで相手を想って頑張れるなんて!」

「そりゃあ、、な?」

リリムは先程とは違い、俺を尊敬の眼差しで見ている。

そんなリリムに俺はグッと拳を握り言い放った。

「俺の童〇捧げる相手は彼女だと思ってたからな!!それならば寝る間も惜しんでいくらでも頑張って…」「あ、もう結構です」

先程までのリリムだ。

しかし、その想いを伝える前に彼女はゲームに来なくなってしまい、俺の努力は無駄になってしまったと思っていたが、まさかこんなところで役に立つなんて。世の中わからないものである。


さて、そろそろ真面目に。

再び助けてくれた彼女に向き合うと、

「俺は置田蒼司、蒼司って呼んでくれ」と彼女に

握手の手を差し出す。

「ソウジか、私はアリシアだ」と握手に応えてくれた。

どこぞのフワフワ浮いてるやつとはえらい違いだ。

そしてこれが俺のこの異世界で最も重要と言える1人、アリシアとの出会いであった。

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