住み込み
玲 ……で、俺、これからどうすればいいんだ?
戦いの後、肩で息をする玲音。
紫 残念だけれど、私は外の世界に送り返す力を“すぐ”には使えないの
玲 え、じゃあ戻れるんだな?
紫 ええ。ただし――一度こちらに呼んだ以上、送り返すのには一年ほど準備が必要になるわ
玲 ……一年!?
幽 じゃあその間、白玉楼に泊まっていけばいいじゃない。玲音、妖夢と一緒に暮らすといいわ
妖 ゆ、幽々子様!? 勝手にそんなこと……!
幽 いいでしょ? 妖夢のお手伝いもしてくれるし
玲 ……まあ、宿がないと困るし、世話になるよ
妖 むぅ……仕方ありませんね
翌朝。
妖 幽々子様、起きてください!
幽 んー……あと三日……
玲 ごはんだぞー
幽 ……ごはん?」ぱちりと目が開く。
玲 ほらな、起きた
妖 ……余計なことを
昼、廊下。
玲雑巾がけなら任せろ!
勢いよく滑り出して――「わっ!?」柱に激突。
妖 だ、大丈夫ですか!
玲 ……掃除も命がけだな
妖 そんな必要はありません!
夕方、台所。
妖 包丁、扱えますか?
玲 まあ、料理くらいは
玲音が手早く野菜を刻む。
妖 思ったより上手なんですね
玲 一人暮らしが長かったからな
妖 ……じゃあ、これからもお願いします
数日後、食材が尽きてしまった。
幽 妖夢、そろそろ人里へ買い物に行ってきて。玲音くんも一緒に
妖 えっ……私一人で十分です
幽 だめ。二人で仲良く
玲 よし、じゃあ付き合うよ
妖 ……はぁ
人里。
玲 おお、人が多いな。思ったより賑やかだ
妖 ここは人間の生活の中心ですから
玲 じゃ、荷物持ちは任せ
妖 当然です
野菜を選ぶ妖夢の横で、玲音は真剣に見ていた。
玲 この大根、安いな。お、こっちの方が新鮮そうだ
妖 ……主婦みたいですね
玲 一人暮らしの知恵ってやつだ
魚屋で玲音が値切ると、店主は笑って負けてくれた。
妖 ……慣れてますね
玲 商店街で鍛えられた
妖 う、羨ましい……私はそういうの苦手で
玲「じゃあこれから俺が担当な」
妖勝手に決めないでください!
だが妖夢の頬は少し赤かった。
帰り道。
玲 結構楽しいな、買い物
妖 ……まあ、嫌いではありません
玲 さっき魚屋で笑ってたじゃないか
妖 そ、それは……
玲 素直になればいいのに
妖 う、うるさいです!
夜、食卓。
幽 まあ、美味しい! 妖夢、腕を上げたわね
妖 いえ……今日は玲音さんが手伝ってくれました
玲 いやいや、妖夢がいたからだ
幽 ふふ、仲がいいのね
妖 なっ……!
玲(……一年か。長いけど、ここでならやっていける気がする)
こうして玲音は白玉楼で暮らす覚悟を決め、妖夢と共に過ごす日々を始めた。
戦いとは違う穏やかな時間が、少しずつ心を満たしていくのだった。




