5-3.「着せ替える」
死にたくないし、捨てられたくもない。
そのためには、どうするべきか。
(ダイエットするべきかしら・・・・・・)
・・・などと考えないでもなかったのだが、残念なことにそれは禁止されている。
ご主人様は、あたしのことを生きた着せ替え人形扱いしているが、意識の上では「愛玩物」即ちペット扱いのようで、手ずから餌をやるのが、ことの外お気に入りらしい。
この年で「あーん」とやられるのはやっぱり抵抗があるのだが、諦めるほかなさそうだ。
あたしが美味しそうに食べていると満足そうな顔をする。
食べるのを減らせない以上、運動量を増やすという選択肢しか残っていないわけだが、あたしの体力はご主人様の「遊び」に付き合うだけで尽きてしまう。
八方塞だ。
(このまま、もしあたしの体が育ちきってしまったらどうすればいいの?)
答えをくれない鏡を人差し指の爪の先で軽く弾いて、後ろを振り返る。
大量の衣装が積まれていた。
全部使用済み。
長時間着用したわけではないから、あと、ニ、三度着せられてから洗濯室行きとなるのだろうが、その前に処分になるかもしれない。
あの服の半分くらいは、もう一月もしたらきっときれなくなっているだろうから。
----胸がきつかった。