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光の神に愛された精霊使い

ゼナと一つ目の神様 ~闇夜で出会った闇の神と精霊の乙女

作者: 月杜円香

 その日精霊族の乙女が、闇の神の腕の中で息を引き取った。


 ♦️


 古の時代、闇の神ディハルドが大地に降り立ち、その眷属たる魔族達が生まれた。

 世界は闇が支配するかに思われた。

 創世神は、闇が支配する世界に憂いを感じ、闇と真逆の光に属する精霊族を作り、地上に誕生させた。


 それが面白くない魔族は、精霊族を目の敵のようにして襲うようになった。

 世界は、混沌とした。

 その中で人族が生まれ、精霊族は何の力を持たぬ人族の守護をするようになった。


 精霊達の王は、幾度か闇の神のディハルドに魔族の横暴を諫めてくれと頼んでいたが、心根の優しい神は眷属を無下にも扱えなかったのである。

 結果、静観していることしか出来なかった。


 一つ目で醜い姿で生まれてきた神は、滅多に魔族の前にさえ姿を現すことは無かった。

 こんな姿に創造した創世神を恨んだりしたが、どうすることも出来ない。

 地上を護れとに言われたから、言われた通りにしているだけなのだから。


 ある新月の夜、

 香りたつ花の匂いに誘われて、神は地上に降り立った。

 花は、大輪で香りが高く真っ暗闇だというのに形が分かるほど輝いていた。


 神は、その花園の中程に影を見つけた。


 《姿を隠さねば!!》


 姿を見られたくない神がそう思った瞬間、影が振り返った。


 美しい精霊族の乙女だった。

 叫ばれると思ったが、乙女は神に近付いて来てニコリと微笑んだ。


『闇の神様ですね、私はゼナと言います。この花畑を任されているんです』


 精霊族のゼナは、淡白く光る大輪の花を摘んで、風に乗せて花びらを巻いていた。


『なにをしているのだ?』


 神は聞く。


『旅人にここのオアシスの場所を教えているのです』


 暗闇で顔が見えないと思っていた神は、少し興味をそそられた。


『我にもさせよ』


『はい』


 ゼナが大輪の花を神に渡したが、花は悉く枯れてしまった。

 神は、それを見て悲しくなった。


『神様にも、人を守る力があればよろしいのに……』


 ゼナは、ボソリと言った。


 新月で暗闇のはずなのに、この花園の周囲は薄暗い程度だ。


『我がここにいれば、花を全滅させてしまうな。帰るとしよう』


『一つ目の優しい神様、どうか気にされませんように』



 ♦



 魔族と精霊族の戦いは続いていた。


 ディハルド神は、あの花が気に入り、あの精霊族が気に入り、幾度か地上に下りてはあの花の咲くオアシスを訪ねていた。


 精霊王からは、引っ切り無しに和睦の交渉を求める親書が届いていた。だが、それが神のもとへ届くことは無かった。

 魔族の邪眼族の王に握りつぶされていたのだ。


 どんどん、同胞を失う精霊族は、一致団結して肉体に宿る力を精霊王に与えた。

 そして、神に等しい力を得た精霊王は、天上界に赴き創世神に自らが光の神だと名乗りに行ったのだった。


 事件は、光の神が天上界に行っている隙に起こった。


 ゼナは、寿命ある花の精霊なので肉体を手放す儀式に出なかったのだ。

 幾人かの、人間に関わる重要な地域にいた精霊は、肉体を持っていた。


 魔族が、こんな機会を逃すはずが無かった。


 ゼナの所にも、有翼種の魔族が大群で来た。

 ゼナは、地に隠れたが鋭い爪を持った種族である魔族に見つけられた。

 背中に痛みを感じ、血を吸われていることが分かった。

 遠のく意識に、魔族が全滅して、一つ目の神が来ているのが分かった。


『一つ目の神様‥‥‥』


『我の眷属が許しておくれ‥‥‥』


『いいえ、魔族が精霊族の血を飲むという事は、寿命を縮めることです。

 お願いです。一つ目の神様、このオアシスのお花だけは枯れない様に、私の最後の力をお渡しします。守って下さい。人々が安心して夜の砂漠の旅が出来ますように……』


『ゼナ!! ゼナ!!』


 こうして闇の神は、ゼナと呼ばれる大輪の花をシンボルの夜に砂漠を旅する人族を守護するの神になっていった。


 (完)

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