ステータスオープンっ!!
『というわけでお腹が空いたのじゃ。』
突拍子もない空腹宣言に魔王や魔族への怒りを思い出し始めていたオレこと黒トカゲ ニールも毒気を抜かれる。
え、ていうかその状態でもお腹空くの......?
『違うのじゃ。お腹が空いてるのはわらわではなく、おぬしなのじゃ。』
その結果、感覚がリンクしてるわらわもお腹が減ってるのじゃ。 との事。
言われてみればオレもかなり空腹だった事に気付かされる。
ん......?感覚がリンクしてる??
って事はさっきオレがやってたヘドバン(地面に頭叩きつけ)も無意味じゃなかったんじゃ??
『痛覚はリンクしてないのじゃ。』
なんでやねんっ。
都合がいいなこんちくしょう。
どうやら他がリンクしてないというより、空腹感が特別にリンクしている。という形らしい。
なんでも、
『ドラゴンにとって、空腹感というのはめちゃくちゃ大事な要素なのじゃ。』
との事だ。
そしてなぜ大事なのかと言うと.......
『我らドラゴンは、食べれば食べる程強くなるのじゃ!!!』
え、何そのチート能力!?
そりゃお姫様があれだけ食い意地張ってるのも頷けるわ。
『よし、良い機会じゃ。獲物を狩りにいく前におぬしは自分の能力を一度知っておくのじゃ!!』
確かに。戦力の確認、大事。
『先に話したように、ドラゴンには食べた獲物の強さに応じて成長する。という特性がある。』
ほほう、その特性がオレにも遺伝してるのじゃな???
『なんじゃ、変な喋り方をするでないわ。』
てめぇの真似だよてめぇの。
それにしても改めて聞いてもめちゃくちゃ強い特性だな。
獲物に困らない限り、能力に伸び悩む事はないってことだろ?
しかもその特性を種族全体が持ってるなんて。
魔族と対等というのも頷ける。
『そしておぬしは、わらわと同じく黒龍じゃ。』
はい、オレ、黒いトカゲです。
『ドラゴンの王である黒龍は、ドラゴンの持つ特性とは別にある強力な特性を持って生まれる。それはお主も例外でないはずじゃ!!』
おぉ!まだあるのか!!!しかも王族の特性だなんて......! どんな能力なんだ!!!
『その能力とは......』
黒龍の姫ティアマトはドヤっと擬音が出るほどに自信満々に、すっっっごい溜めて言い放つ。
『......眼が良くなる能力じゃあ!!!!』
......はい?
そんだけ黒龍だの王族だの言って期待させといて、視力が良くなるだけ????
そんなもんメガネでええやろがいっ!!!!
期待を裏切られたと言わんばかりの黒トカゲ。
『誰が視力の話をした。』
いやおめぇだよ。眼が良くなるって視力以外になにがあんだよ。
『たしかに、これはわらわの言い方も悪かったかの。』
なんだよ、勿体ぶらずに言えよ。
『まあまあ、これは実際に試してみるのが早かろうて。』
ほれ、唱えてみぃ。
オレとティアマトの声が重なる。
「『ステータス』」
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【黒トカゲ】ニール Lv 1
HP : 20/20
MP : 5/5
SP : 10/10
攻撃力 : 5
防御力 : 3
魔法力 : 0
素早さ : 8
ー種族特性ー
・ドラゴンの食い意地
・黒龍の邪眼
・魔力への羨望
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唱えた瞬間、目の前に文字やら数字が浮かび上がる。
おおおおお!!!
なんだこれ!!
自分の強さや今の状態を数値化してくれてるのか!!
それに見なれないHPやMPといった文字もなぜか自然と理解できる。
HPは残りの体力、MPは残りの魔力、SPはスタミナを表してるみたいだな。
たしかに、これは便利どころじゃないぞ!
自分の正確な状態を把握できるっていうのはかなり大きなアドバンテージになる。
それにドラゴンの食べるほど強くなる特性も合わさったら敵なしじゃないのか......?
『本当に敵なしじゃったらよかったんじゃがのぉ.......』
あぁ、こんなチート特性をもってしても魔王には敵わなかったんだよな
『やはりおぬしにもドラゴンの悪い方の特性が遺伝してしまったようじゃの......』
魔法力 : 0
あっ、ホントだ.......
え、これってこっから伸びるとかではなく......?
『1ならともかく、元々0のステータスは才能なしの証。伸びる事はないのじゃ......』
え、ていうかこれまずくない???
魔王には魔法しか効かないんだよね???
『うむ......そのせいで我らドラゴン族は奴の軍門に下るしかなかったのじゃ。』
うん。前に身をもって体感しました。
『あわよくば魔族の高い魔力適正が遺伝するかと思ってたのじゃがのぉ.......』
うわぁ、まさかの最序盤で詰みですか.......?
ニール先生の次回の転生にご期待下さい!ですか?
『いや待てよ、おぬし魔法力は0なのに どうしてMPがあるのじゃ.......?』
そう言われてオレはもう一度ステータスへ目を向ける。
MP : 5
ほんまやああああ
魔法使えへんならMPとかあっても意味ないやんけ!!なんやこれ!!!
煽ってんのかこいつ!!!
ステータスに向かってヘドバンをしだす黒トカゲ。
『いや、ステータスはそんな無駄な事はしないのじゃ。』
確かに。自分の種族特性に煽られるって意味分からんもんな。
『......それじゃ黒トカゲ! 種族特性じゃ種族特性!!!』
ん?言われてみれば下の方なんか色々書いてあったような。
『おぬしは黒龍であるのと同時に、魔族の子供でもあるのじゃった!!』
つまり、黒龍やドラゴンの特性だけでなく、魔族の特性も遺伝してるって事!?!?
なにそれ、オレってば凄過ぎない???
『だから凄いのはおぬしじゃなくてわらわじゃて。
元々そうなるようにわらわが転生させたんじゃから。』
いやでも、それお前も忘れてたじゃん。
イテッ!! だからその都合悪くなったら壁に激突させるのやめてもらえる???
『ええい、うるさい。とにかく魔族の特性というのはドラゴンや黒龍の特性とは違い、個体によって完全にランダムじゃ。魔族のアホ共の間では"特性ガチャ"なんて呼ばれておる。』
"特性ガチャ"か良いじゃねぇか。
こちとら龍のお姫様と魔王の息子ぞ???
激レア排出待ったなしやろ!!!!
『本来なら魔族の特性は専用の魔法を使って判別するらしいが、おぬしには黒龍の眼、ステータスがある。』
持ってて良かった。ステータス。
『ステータスを観ながら念じればその特性の効果が分かるはずじゃ!!!!』
念じる?えらく抽象的だな。
まあ、とにかくやってみるか。
黒トカゲは念じる。
((ステータスさん!!種族特性 詳しくみーーせてっ!!!)
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ー種族特性ー
・ドラゴンの食い意地
・・・ドラゴン族固有の特性。その驚くべき食い意地で、食した獲物の能力の一部を引き継ぐ事ができる。その代わりすごいお腹が空く。
ただし、この特性で魔力を得る事はできない。
・黒龍の邪眼
・・・ドラゴン族の王たる黒龍が持つ固有の特性。自身及び敵の状態や能力を可視化する事ができる。自分の実力以上の敵の能力は可視化できない。
・魔力への羨望
・・・魔族の特性により【黒トカゲ】ニール が得た固有特性。前世から続く、果てしない魔力への羨望により 倒した相手の魔力の一部を得る事ができる。
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あ、ドラゴンがお腹空くのって特性のせいだったんだ.......
ってそんなことより!
見ろよティアマト!!この特性!!!
『こ、この特性は.......!!』
声だけでもティアマトが震えているのが分かる。
『控えめにいっても、大当たりじゃ!!!!』
だよなーーーーーー!!!!
敵を倒す度に魔力が伸びるってことだろ???
しかもオレにはドラゴン族の特性もある!!
これだけの力があれば、間違いなく届く。
故郷を好きな人を奪い去ったくそ魔族共に、その親玉に。
「ーーー待ってやがれ魔王ぉぉおお!!!」
『だからその前にまず生き残ることじゃて。まだトカゲじゃぞおぬし。』
あとお腹空いたって言ってるのじゃ。はよ食糧を探してこい。
ごちゃごちゃ言ってる脳内はらぺこドラゴン姫を無視して、元剣聖であり現黒トカゲ ニールはメラメラと闘志を燃やすのであった。
という訳で、皆大好きステータスさんを登場させてみました〜!
なんなら、このステータスを登場させるバックボーンの為に黒龍っていう設定をつくりました笑
(全員が全員ステータスを観れるなんていうチートスキルもってるとバランス崩壊しちゃうので、ただでさえ数が少ないドラゴンの中でも王族しか持っていない事にしちゃいやした。)
黒龍は成長しやすいドラゴンの中でも自分の能力や相手の能力を正確に測って成長できるっていう種族だった訳ですね。
ステータスは一種の逃げかなーと思って少し忌避感もあったのですが、成長や成り上がりというのをこれだけ分かりやすく、面白く可視化できるのはそれ以上に強みだなーって結論に至りました。
ステータスに頼り過ぎるとそれはそれで単調になっちゃうので、ニールと同じく頼り過ぎないようにしないとね!!
次回、どきどきサバイバル!
はたして"死の森"とか呼ばれる場所に黒トカゲが食べられるモンスターなんているのか!? 乞うご期待!!