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村をあげたサプライズ

 皆様は山菜についてどれくらいの知識をお持ちですか?

 から始まる山菜トークをニールにさせていたらそれだけで3話が終わってしまいそうになったので慌てて全カットしました。 なんやったんやあの時間。


  「こんなに山菜集めてどうするのよ。広場に新しく()でも作る気?」



 どんな気だよそれは。



 「だって、2時間も山菜取りしてる設定なんだよ?それなりの量が集まってないとおかしいじゃないか」



 もし、ヒルデがサプライズに気付いていて山菜を採らずにいた なんて知った日にはサプライズ好きなヒルデパパが哀しむじゃないか。

 


 「変な所は律儀よね。」



 そしてボクが上手く誤魔化せなかったせいだと言われて母さんにシバかれるじゃないか。



 「そっちが本音ね。」



 うるせぇ。最近は肩が痛くなってきたからって言って棒でシバいてくるんだぞ。痛いんだぞ。



 「あのシバき棒ね...... 元はと言えばあんたが変な事ばかりするのが悪いんでしょ?」



 ボクが何をしたって言うんだ!最近やった事といえばあのクソ勇者の家(村長宅)に毎日山菜を届けた事くらいじゃないか! むしろ褒められるべき善行だよ!



 「それで?毎日山菜と間違って、食べたら気持ちよくなっちゃう草を届けてたんでしたっけ?」



 こら!ヒルデ! 年頃の女の子が"気持ち良くなっちゃう" なんて言うんじゃありません!!



 「あの棒、魔力付与しておくわね。」



 ......ごめんなさい。それほんまに死ぬやつやヒルデさん。







 「で、そろそろ2時間経ったんじゃない?良い加減お腹が空いたわ」

 


 「そうだね、もうあたりも暗くなってきたしそろそろ帰ろうか。」



 にしても大人が2時間かけて用意したサプライズだ。いったいどんな盛大なモノがヒルデを待っているのだろうか.....




 それに将来、勇者と共に魔王を倒しにいく賢者様の10歳の誕生日だ。 もしかしたら村総出でってこともあるかもしれないなぁ......


 

 ヒルデとクソ勇者は12歳になると王都にある学院に入学し、魔王を倒す修行を開始するらしい。


 つまりはヒルデの誕生日を祝えるのも今年を入れてあと2回だ。


 だから今年はボクも少し気合を入れて準備したんだ。ボクはヒルデへのプレゼントを入れた内ポケットに手を当てる。




 喜んでくれるかなぁ。なんて思いながら山菜を山盛り持って歩いていると村が見えてくる。




 ......ん? 辺りはもう暗いのに遠くからでも村が見える。 なんかめっちゃ明るくない???





 「おいおい、どれだけ盛大なモノを用意したんだよ村の連中は......」




 「何のんきな事言ってるの馬鹿ニール。どうみてもあれ、燃えてるわよ。」

 



 ......え?

 



 「燃えてる......?キャンプファイヤー的な......?」



 「誰が村中に火をつけてキャンプファイヤーするのよ!!」


 

 ですよねー。


 て事は山賊か何かの襲撃か......!?




 「とにかく急ぐよ!ヒルデ!!」



 これは本当に嫌な予感がする。ボクは山菜を放り投げ走り出そうとする。



 「待ちなさい馬鹿ニール!」



 クラウチングスタート一歩手前(四つん這い)のボクの手をヒルデが足払いする。すなわち顔面から地面にダイブ!!



 ......ってなにすんねんっ!!



 「何!?まだ何かあるの!?」

 


 あとめっちゃ痛いんだけど!!鼻もげてないよねこれ!?




 「少しは頭を使いなさい。あの村にはシグルが、勇者がいるのよ。」

 



 そうだね。いなきゃ良かったのにね。

 イテッ 転んでいる人の手を踏むな。立ち上がれないだろう。




 「まだ10歳とは言え、勇者は勇者よ。少し大きめの魔物なんかは1人で倒せるくらいの力はあるし、既に王都の騎士団と比べても遜色ない実力はあるわ。」




 ......え?あのクソ勇者ってもうそんなに強いの??

 王都の騎士団って18歳からしか入団できない、エリートの集まりだよね......?





 「......その勇者がいてあの惨状なのよ。想像もしたくないけれど、私達が慌てて帰っても無惨にやられるだけよ。」




 「だからって逃げろって言うのかよ!村には母さんも、ヒルデの父さんだっているんだぞ!」




 「だから落ち着きなさいって。ようは無策で帰るのがダメなのよ。」




 少しじっとしていなさいね。

 そう言ってヒルデの手が僕の肩に触れる。



 「これは......?」



 「気配遮断の魔法をかけたわ。これでもし何かに出くわしたとしても、滅多に見つかる事はないわ。」




 ......さすが我らがヒルデ様だぜ!!!!




 「つまりこの魔法で賊の後ろに回り込んで絞め落とせば良いんだね!!」



 「馬鹿、そんなに近付くと流石にバレるわよ。それに相手が1人な訳ないでしょうが。」



 ......ですよねぇ。



 「とにかく、もたもたしている暇がないのは確か!走るわよ!!」




 あいあいさーーー





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 ーーー見渡す限りの赤、赤、赤。


 

 村が、ボク達の村が真っ赤に染まっている......。

 


 「ど、どうして...... 」



 不思議な事に口をついて出たのは、怒りでも不満でもなく、疑問だった。 ボク達が、村の人達が何をしたって言うんだ......




 「なに呆けてるのよ馬鹿ニール! ショックを受けるなんて後でもできるわ!今の私達がやるべき事はなに!」




 頼もしいヒルデの声で遠くなりかけていた意識を取り戻す。




 「そ、そうだ 母さん達は......!」




 ヒルデの気配遮断の魔法を頼りに走り出す。

 



 ......そしてボク達はあと少しで家へと着く大広場にてあるモノを目にする。




 いや、あれだけ大きなモノだ。視界には随分と前から入っていた。でも、頭が、脳が理解を拒んでいたんだ。



 

 でも、現実はすぐ目の前にやってきて(そら)す隙間なんて与えてくれない。



 

 ーー山だ。




 山があったんだ。


 血に(まみ)れた、大きな山が。

 

 そして、その山をカタチ作る身体達には明らかに何かが欠けていた。

 



 「首が、首が.......」



 「ニール、見ちゃだめ。」

 



 視界を覆うようヒルデの胸に抱きしめられる。



 いつもならヒルデの胸の感触を脳に焼付ける場面だが、今のボクの脳内は先程のクビを失った人々の山でいっぱいだった。




 そんなボクらを現実は待ってはくれない。

 少し離れた所から声が聴こえる。



 「た、助けて、助けて下さい......!」



 血に(まみ)れ這いつくばり、何者かに命乞いをする村人の姿がそこにはあった。


 そして乞われた者は告げる。



 「答えろ。賢者のガキはどこにいる。」

 


 剣を村人に突き付け、辺りに首を転がしている男の頭部には、禍々(まがまが)しい(つの)が生えていた。

 山菜トークを全カットしても長くなり過ぎたので2話に分けました。続きはまた明日か明後日あたりに。


 ちなみにお気付きかとは思いますが、村に到着したニール達の目を覆った"赤"には火以外の色も含まれております。魔族ってこわいねー。


 そして広場には山菜じゃなくて、死体の山ができちゃったね。魔族ってこわいねー。

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