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これが、ボクの才能......?

 

 ーーあの忌々しき予言から3年。

 ボクことニールは一流の農民を目指し日夜(にちや)農業に(いそ)しんでいた。




 「普通、修行とかに専念しない?」


 うるせぇ。結局人を支えるのは食事、つまりは農業やろがい。



 「でも、魔王が来ちゃうじゃない。」


 うるせぇ。結局魔王を支えるのも食事、つまりは農業やろがい。



 「魔王を支えてどうすんのよ......」 


 あ、ほんまや、、、




 「......うるさいなぁ!!! 人のモノローグに口出ししてくんなよ!!バカ賢者!!」




 「バカなのか賢者なのかどっちなのよそれ......」




 このバカ賢者ことヒルデは予言から3年を経て賢者と呼ばれるまでに成長していた。




 「だいたい、賢者なんて村の人たちが勝手に言ってるだけよ。王都に行ったら鼻で笑われちゃうわ。」



 そういうもんかなぁ。



 「でももう色々な魔法が使えるんだろ?ボクたちからしたらもう十分に賢者だよ。」




 「そりゃあんたみたいな農民には手品師も賢者も分からないでしょうよ」



 「おん??農民差別か??やんのか????」



 「なんでそんな喧嘩っ早(けんかっぱや)いのに農民やってんのよ......」





  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 




 ーー今から2年前、あの予言から1年ほど経ったある日。



 「勇者がなんぼのもんじゃい!!魔法使いがなんぼのもんじゃあああい!!!」




 ボクことニールはグレ始めていた。




 「だいたいなあ!神聖力やら魔法やらに頼るんは弱者のする事やねん!!漢なら(こぶし)よ!(こぶし)!」



 「昨日まであんなに魔力やら神聖力やら、ひねり出そうとしてたくせに。」



 うるせぇなぁ、、、


 この1年で魔法やらなんやらの勉強をしまくった結果、すっかりドジっ子属性を忘れやがって。あの愛らしいヒルデを返してくれ。



 

 「なんだったっけ? 神聖力が芽生えないのは雑念がある証拠だから雑念を消す為に先に勇者をヤっちまおうだったっけ?」



 いや、それはほら.....

 どうせボクが勇者になるなら今いる勇者はいらないかななんて...... あはははは



 「それで?返り討ちにされた時の怪我はもう大丈夫なの?」


 あ、はい もう大丈夫です。ご心配ありがとうございます。


 


 「それで拳なんか鍛えてどうすんのよ。今度は寝首でもかく気?」



 誰がそんな卑怯な事するかよ!


 ただ、剣だと勝てる気しないし......

 (おとこ)なら(こぶし)で勝負しろって言ったら素手で戦ってくれるかなって......



 「武器なしでも勇者は強いわよ。」


 え?そうなん......?



 「実はあの剣がとてつもない力を秘めてるとかではなく......?」



 「どうみてもただの木刀だったでしょ。」

 


 「剣を持った瞬間、力が溢れてくる!とかでもなく......?」



 「こないだ素手で丸太割ってたわよ。」



 素手で丸太.....?




 「斧は湖に落としちゃったんだって。」

 


 女神がいないタイプの湖だったのか......


 

 「そういえば、あいつやけにキラキラ光った斧を家に飾ってたわね。なんだったのかしらあれ。」



 女神おるやんけ。おい、どこの湖だ!答えろ、どこの湖なんだ!



 「何よ急に、そんなことより今は勇者の話でしょ?」


 ごもっともでございます。後で勇者に聞きにいこ。

 


 「とにかく!あんたも素手で丸太を割れるくらいにならないと勇者と勝負にすらならないって訳!!」





 (中略)

 



 このへんでよくも悪くもボクの心は折れてしまったのだ。


 だって丸太を素手でだぜ.....? そんなの人がやっていい事じゃないよ......



 「よし。決めました。」



 「何よ急に。」



 こうしてボクは高らかに宣言した。



 「農家になる!」

 


 「......え?」

 目を丸くするヒルデ。



 「この一年、色々な事に手を出し その度に勇者のやろうに返り討ちにされて 薄々(うすうす)気付いてはいたんだ。」



 「え、でも一緒に......」



 ぼそぼそ何かを言っているヒルデの言葉を遮って続ける。



 「ボクには戦いの才能がないっ!!!」


 自分で言っててすごく哀しいけど、もう目を背けられないくらいには色々な事をやったんだ。



 「そして、昨日母さんの手伝いをしていて気付いたんだ!!」


 手伝いというのは、母がヒルデのお父さんとやっている畑の収穫だ。




 「ボク、農業にめっっちゃ向いてる!!!」


 まさか勇者を倒す為に鍛えた足腰があんなにも収穫をスムーズにさせるとは。


 なんなら最後の方は農業で使う筋肉ばっかり鍛えられていたんじゃないかと疑っていたくらいだ。



 「最高の農家になってヒルデのお弁当でも作るさ!」



 「お弁当は嬉しいけど、私は......」


 

 ヒルデは何かを言いかけてやめた。



 「そうね、あなたがそう決めたんだものね。応援するわ。」




 そう言ったヒルデの瞳はどこか潤んでいるように見えた気がした。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 「今の回想必要だった? 結局必要だった情報、農業の才能があるって部分だけだったじゃない。」



 「うるせぇ!マイルドに見えて実はめちゃくちゃな葛藤(かっとう)があったんだよ!!(さっ)しろ!!」




 本当に、あの日々は今思い出しても地獄だった。


 剣に手を出しては勇者にボコられ、槍に手を出してはボコられ、魔法や神聖力を覚えようにもほとんど身に付かず、ヤケクソで魔法書で殴りかかるもボコられ......


 

 そんな日々で唯一身についたのはちっぽけな火を出す魔法。なんやこれ。何に使うねん。




 何かに挑戦する旅に勇者にボコボコにされ挫折し、 自分が応援するほど傷だらけになっていくボクを見て ヒルデの声援は日に日に小さくなっていった。



 それでも いつの日か魔王を倒すべく旅に出るヒルデについていけるよう 必死で、必死で、必死だったんだ。



 その結果は散々なモノだったけど、今思えばあれはただでさえ諦めの悪いボクが 大事なモノを諦める為に必要な時間だったのかもしれない。




 でも決めたんだ。戦いじゃない部分でヒルデを支えられるようになるって。



 ほら、一緒に旅には出られないかもしれないけど 前線に仕送りとかは出来るかもしれないじゃん......?

 



 「よし!では気を取り直しまして、ヒルデ!」



 「なによ?」



 「山菜を取りにいこう!!!」



 「なによそれくらい、1人で行きなさいよ。」

 


 「いやぁ、最近森の魔物が活発になってるみたいで怖いじゃん?ついてきておくれよぉ」




 今日はヒルデの誕生日パーティー。


 サプライズ好きなボクの母とヒルデの父にヒルデを一度連れ出すよう言い付けられているのだ。



 まあ、毎年の事なのでヒルデも薄々勘付いているとは思うが......




 「しょうがないわねぇ、おばさまもお父様ももうはしゃぐ歳じゃないでしょうに......」


 ため息を吐き、やれやれといった様子のヒルデ。



 「こういうのは様式美だよ様式美。」



 「それで?今年はどれくらいの時間山菜を取ればいいわけ?」



 「なんと!今年は2時間だ!!」


 ちなみに去年は1時間でした。




 「10歳の誕生日だからってかなり盛大にやるつもりねあの2人.....」



 こうして別に採らなくても良い山菜を探しに裏山へと出掛けるボクと賢者だった......

 <<<次週、魔王軍襲来予定!!>>>

 おかしい。魔王軍襲来くらいまでは2話目でやるつもりだったのに。

 山菜を取りに行くのにこんなに前置きが必要だなんて聞いてませんでした。

 ももたろうのお爺さんとお婆さんも芝刈りと洗濯へ行くまでに凄い葛藤があったはずだ と思い込む事で自己肯定する事にします。



 ちなみにですが ニールは母子家庭、ヒルデは父子家庭です。家が隣で境遇が似ている家庭どうし 協力し合って子育てしてます。

 一応、勇者にはシグルっていう名前を付けているのですが 今後活躍させる予定は一才ありません。NTRを少しでも感じるとアナフィラキーで死にますので(作者が)


 とても大事な描写を入れ忘れていたので、少しだけ加筆しました。(12/5)

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