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勇者と魔法使い

 

 「いつまで寝てんのよ馬鹿ニール!」



 パチンッ

  響く乾いた音。

 痛い...... 頬に伝わる熱さがまだ寝ていたいと必死に訴える脳を覚醒させようとする......

 というかビンタされたなこれ。



 「痛いなあ、起こすならもっと優しく起こしてよ......」



 そう言って薄目を開けた先にいるのはベッドの前でふんぞり返ってこちらを見ている可愛い女の子。


 金髪に碧眼、(よわい)7歳にしてこの身体つき......悪くない......というか幼馴染のヒルデだ。





「こんな可愛い子に起こされて文句?いいご身分ね......あと視線がキモイ。」



 寝起きから美少女に浴びせられる罵声。悪くない。



 「だいたい、休息日だからっていつまでたっても起きないあんたが悪いのよ! おかげで私は1時間もここにいたんだからっ!」



 ほほう。1時間もボクを起こす為にここにいたと......?




 ボクは自分が寝ているベッドの空いているスペースに手を伸ばす。うん、まだ暖かい。まるで誰かがさっきまでここで寝てたみたいだなーー。

 




「へー、そんな長い間ボクを起こす為に?」


「そうよ!」



 あくまでそのスタンスを貫くと。ならこちらにも考えがある。





 ヒルデの可愛いほっぺ(薄ピンク)を指差し


 「よだれ付いてるよ?」



 「ウソ!さっき確認したのに!」




 慌てて頬を拭うヒルデ。 

 この部屋には鏡なんて高級なモノはない せいぜい水を汲んできたタライを鏡代わりにするしかない。



 まあ、寝ぼけまなこでゆらゆら揺れる水面を観て身だしなみを整えろという方が無理な話だ。



 それはそうとヒルデに追い討ち



「珍しいね、いつも身だしなみに気を遣ってるヒルデが朝に顔を洗わないなんて。ちょっと髪も跳ねてるし」

 


 「きょ、今日は時間が無かったのよ!!」


 「1時間もそこにいたのに?」


 「うぐ...」


 「まるで、今さっきまで寝てたみたいじゃないかっ」



 ハッハッハー とわざとらしく笑ってみせる



 


「う、うるさい!!とにかく!!朝ごはん!!早く起きなさい!!!」



 顔を真っ赤にして駆けていくヒルデ。


 


 「うん。ボクの幼馴染は今日も可愛いなぁ」



 本当に、ボクなんかには勿体無い幼馴染だ。 








 それはそうと、そろそろ起きないとヒルデだけじゃなく母さんまで怒らせてしまいそうだな。

 んーーっと伸びをしベッドから立ち上がる。



 部屋から出てリビングへ向かうとさっきまで近くで聴いていた声と母との話し声が聞こえる




 「あら、ヒルデちゃん よく眠れた?あの子寝相悪いから大変でしょう?」

 


「おばさま!だから私は寝てなんかいませんっ ニールの馬鹿が全然起きなかったんです!」


 

 「あらそう?ヒルデちゃん、ニールを起こしにいったっきり 全然戻ってこないんだもの。

 私ったらてっきり一緒に寝てるもんだと......」



 「おばさま!!!」

 



 うん......さすが俺の母親だ。やり口から趣向まで俺に似てやがる。 怒ってるヒルデ、可愛いよね。





 いつまでもこんな所で耳をそばだててる訳にもいかないな。お腹すいたし。




 「おはよ〜」


 

 「おはようニール、遅かったじゃない」


 せっかく作ったご飯が冷めちゃうでしょ と少しおかんむりの母。おかんだけに。



 「いてっ」

 

 なぜしばいたおかんよ。




 「あんた、また変な事考えてたでしょ」


 なぜ分かったおかんよ。

 



 「ふんっ」


 そんなボクを横目にヒルデはまだ不機嫌みたいだ。




 「ほら、あんたが全然起きてこないからヒルデちゃん怒っちゃったじゃない」



 謝りなさい? と母。

 というかこの不機嫌の半分はあんたのせいだよな間違いなく。




 「ごめんよヒルデ、君はずっとボクを起こそうとしてくれていたのに」



 仕方ないからフォローを入れよう。



 「ずっと優しく、ベッドの前で、決して寝たりせず声を掛け続けてくれたのに......!」


 やべ つい煽りみたいになっちゃった。

 



 「ふんっ分かればいいのよ、分かれば」


 あっ、気付いてない 良かった単純で。




 おいこら母よ必死に笑いを堪えているのがバレバレだぞ ここで吹き出すと間違いなくまた不機嫌になる。というか殴られるぞ。ボクが。





 「あぁ、お腹すいた 早く食べよう!」


 「あんたを待ってたのよ馬鹿ニール!」


 「ごめんごめん」



 いただきまーすと手を合わせ、各々食事にありつこうとすると......

 




 バーンッ!


 と大きな音を立てて我が家の玄関のドアが開け放たれた




 「おーーい!大変だ!!王都の大教会より予言があったんじゃ!」




「村長、落ち着いて下さい、今は食事中ですから話は終わってからに...」




 母が慌てる村長を宥めながら言う。


 うん。食事はともかく 村長は一度落ち着くべきだろう。 

 人の家のドアをノックもなく開け放ちやがって。 おかげでボクの服は驚いたヒルデが溢した水でべちゃべちゃじゃないか




 「これが落ち着いていられるか!!予言だよ!!」




 あぁ、ヒルデが溢した水を必死に拭いている。いいんだよボクは君になら何をかけられたってかまわないんだ。

 イテッ だからなんでしばくんだ母よ。




 「予言?」


 これは話を聞かなければ朝食を再開できないと判断したのか 母が村長に尋ねる。




 「あぁ、予言だ。 その予言によると数年後おそろしい魔王が魔族を引き連れて進行してくるそうだ。」




 「魔王......!?」


 ヒルデが怖がっている。可愛い。




 「そうだ、魔王だ。そしてその魔王を倒すべく立ち上がる魔法使いがこの村にいるとも予言されたのだ!!」




 ほほう、魔法使いとな。うん。心当たりはある。

 ボクは物心ついた時から魔法について学んだきた。



 村長の家にあるという魔法書を読む為にヒルデとよなよな村長宅に忍び込んだりもした。すごい怒られた。




 「その魔法使いとは......」



あいにくその魔法書はボクの肌に合わなかったみたいでボクは魔法を習得できなかったがこの村で魔法書に触れたのは村長以外でボクとヒルデくらいのものなのだ。 


 ふん、世界を救う魔法使いか...... 悪くないじゃないか。





 「ーーーその魔法使いとは、ヒルデおぬしじゃあ!!」



 「え、私!?」



 ですよねーーーー。知ってました魔法書を読んで"ボクは"魔法を習得できなかったのだ。




 ヒルデはめっっさ習得してました。不貞腐れたボクが魔法書をぶん投げた結果 村長宅にあるツボを割ってしまいめちゃくちゃ怒られたのがこの話の顛末だ。




 「そんな......私に魔王を倒す力なんて......」

 


 強大な魔王と戦わなければいけないという予言を聞いて怖がるヒルデ。可愛い。




 「大丈夫じゃヒルデよ、お主は1人ではない!」



 「え?1人じゃない......?」



 「実はこの魔王を倒すべく立ち上がる勇者についての予言もあったのじゃ!!」




 勇者!勇者といえば物語の主人公! 仲間達と数多の強敵を倒し 世界を救う救世主!!




 「なんと!その勇者もこの村におると予言されたのじゃ!!」




 そうか......勇者か

正直柄じゃないんだけどな、ヒルデと一緒に旅ができるなら悪くない......かな




 「その勇者とは......」



 ヒルデがこちらを見る。さっきの不安な表情とは違いボクに対する信頼が感じられる強い眼差しだ



 ボクは優しく微笑みヒルデの手を握る。





 「ーーーその勇者とは、ワシの息子のシグルじゃ!!!」


 


 ......え? ボクじゃないの????

 ボクじゃないの???

をワイちゃうんかいっ!!にしようとして必死に踏み止まりました。褒めて下さい。

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