幼馴染のアーシャは婚約したい
物心がついたときからわたしの隣にはエストお兄様がいて、やんちゃなわたしは両親と兄様にいつも見守られていた。
村中を駆け回り遊んでいたわたしが危険な人や場所に近づこうとすると、さりげなく安全な方へと誘導して優しく説明してくれた。
当時から利発で凛々しいと評判だった兄様は色んな遊びをなぜか知っていて、花冠を作ったり、お手玉したり、ブロックで遊んだり、おままごとをしてくれて、幼いながらにも特別な存在だと感じていた。
四歳の頃、ビクトリアお姉ちゃんと仲良くなり屋敷に遊びに行くようになって、覚醒石を使用した事で、私の人生が大きく変化した。
わたしは結界魔法を習得し、兄様は強化魔法を習得したのだ。
初めての魔物討伐はビクトリアお姉ちゃんとタリアお姉ちゃんに手を繋いでもらい、散歩してるようで楽しかった
当時からエスト兄様は強くて、身体強化を使用した後の動きは目で追えない程だった。
自身も魔物を初討伐したばかりなのに、強化魔法で結界を強化し魔物を倒させてくれた。
初討伐の記念で、兄様は短剣を貰っていたけど、わたしは婚約指輪が欲しいと言ったのを覚えている。
私も九歳になって、最近は十三歳くらいに見られることもあるけど、兄様はすでに大人の男の人に見えるほど大きい。
私より年上に見える兄様をいつまでもえーちゃん呼びは流石にできないと考えて、最近はエスト兄様と呼ぶようになった。
兄様は魔物討伐訓練に参加して活躍し、開拓村で他の領地に行く用事がある時も毎回同行して、色んなトラブルからみんなを守ってくれたので、みんなが兄様を特別な存在だと認識している。
わたしも時々転移ゲートを使って同行するけれど、兄様の頼もしさは異常であると思う。
野党や魔物に襲われた時も他領の貴族様が関わる問題が起きた時も全ての問題を解決していたので、今では開拓村の相談役に抜擢されている。
ビクトリアお姉ちゃんもタリアお姉ちゃんも、昔と違ってエスト兄様を子供と思って接してはいない。
すでに一人の男の人なんだと意識しているのがわかる。
昔は一緒によくお風呂に入っていたのに、兄様が少しずつ大きくなってビクトリア姉様の身長に近づいてからは、顔をよく赤くして恥ずかしそうにしていた。
相手が十歳だと理解していても兄様は昔から凛々しくて大人っぽい人だったから、逆によく今まで一緒に入れたものだと他人事のように思ったものだ。
最初に混浴した時は兄様も恥ずかしそうにしていたけど、途中から目を瞑って一緒に入るようになっていた。
強化魔法を使うと、目を瞑っていても周囲の状況を把握できると言っていた。
たまにみんなでイタズラした時は困った顔をするがいつも優しく注意するだけで許してくれる。
わたしは結界魔法を習得してから、開拓村にエスト兄様に強化してもらった結界を張りながら、清廉神殿でメルシャ母さんと一緒に働いている。
別にシスターになるつもりもないけど、結界が毎日のように下級魔物を自動で倒していると位階がニつ上がって空間魔法と回復魔法を覚えたので、お手伝い感覚で仕事をしている。
開拓村が魔物に襲われることがない為、不意の事故が起こらない限り、重症者も運び込まれないので、暇をしていることも多い。
午後からは基本自由行動で、必要があれば通信機で呼び出されるようになっている。
昔と比べると兄様と一緒にいる時間は少なくなったが、午後からはよく訓練や食事を共にしている。
わたしは最近恋愛について悩むことが多い。
凛々しくて大人っぽい兄様に、開拓村の若い女性のほとんどが好意を寄せている現状が辛いのだ。
ビクトリアお姉ちゃんやタリアさんも、最近は結構わかりやすくエスト兄様に好意を向けている。
もし兄様が誰かと付き合ったとしてもあきらめるつもりはないし、約束を守ってくれると信じているけど、まだ幼い自分では大人な兄様に相応しいとも思えないので、最近は不安を感じることが多くなった。
そして、不安を解消する為にどうしても約束の婚約指輪が欲しいと願ってしまう。
「大きくなったらって、いつなのかなぁ。わたしの気持ちは変わってないよ、エスト兄様……」
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