表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

開拓村の一般男性視点1

開拓村一般市民の視点で少し物語を補完しました。

 ある日のこと、ブラックウッド辺境伯領で開拓村の人員を募集していた。

 農家の三男という立場で肩身が狭かった俺は自分の力で未来を切り拓こうと決意し、新たな生活を求めて開拓村の一員となった。


 辺境伯領では新たな政策が打ち出され、次世代の育成と統治力の強化を目的に、辺境伯様の子供たちを複数の開拓村へ代官として派遣することが決まったらしい。


 俺のいる開拓村には、辺境伯様の末娘のビクトリア・ブラックウッド様が十歳と幼いにも関わらず代官としてやってきた。

 流石にサポート体制は充実しており、十分な人員を揃えていたが俺は不安を感じていた。


 それでも流石は辺境伯様の配下というべきか、開拓村に集まった俺のような者達に役割を上手く割り振り、協力して開拓を進めていく。


 基本的に特別な技能を持たない者たちは木樵の仕事を主にしながら魔物討伐の訓練を行なっている。

 俺は元農家の三男で農家を引き継ぐことはないと考えあまり勉強していなかったので木樵になった。

 森を伐採中は兵士が守ってくれ、魔物討伐の訓練時も兵士がいて安心できる環境下で働く事ができた。


 それから段々と役割を引き継ぎ、兵士は森の巡回をするようになり、木樵グループは交互に木樵と魔物からの守備を兼ねて行うことで独立し、新人が入った時は俺達が守って大事に育てていった。


 そうして三年経った頃、アルマさんという美女の子供であるエスト君と、木樵グループのリーダーのドルトンさんと清廉神殿のシスターであるメルシャさんとの子供であるアーシャちゃんが一緒に外で遊び回り始めた。


 村中を遊び回る二人であったが、一度森の近くまで遊びに来たことがあり、危険だと伝えると森の近くに来ることはなくなった。


 エスト君は生まれた時から賢そうな子だったが、時々暗い表情を浮かべている時があった。

 でもアーシャちゃんとよく遊ぶようになってからは、エスト君は明るくて優しいお兄ちゃんになっていた。


 幼馴染同士で仲が良い様子が微笑ましい、俺は幼馴染と喧嘩ばかりだったと昔を思い出す。

 村中を遊び回るエスト君とアーシャちゃんの幼く可愛いコンビは人気者で、開拓村の皆で世話をしている。


 この開拓村も順調に大きくなり、五年という月日が経過した頃には、五百人程度の中規模の開拓村になっていた。


 俺も二十五歳になりそろそろ結婚も考えているのだが、良い相手が見つからない。

 代官であるビクトリア様も十五歳になり、とてもお綺麗で正に高嶺の花のようだ。

 メイドのタリアさんも十五歳には見えないほど大人びていて、既に綺麗な女性になっている。

 高望みをしないで良い相手を見つけたいとも思うが、美人が多く目が肥えてしまうのがこの村の欠点だと思う。


 その日の木樵仕事がひと段落し昼食を摂りながら休憩していると、何故か兵士と話ながら歩くエスト君とビクトリア様とタリアさんに両手を繋がれ、楽しそうに歩くアーシャちゃんを発見した。

 森の中をまるでピクニックに行くような様子だった。


 少し離れたところで休憩していたアーシャちゃんの父親であるドルトンさんに、アーシャちゃんとエスト君がビクトリア様達と森に入って行ったと説明する。

 するとドルトンさんが何か思い出したようで納得した様子で話してくれた。


「数日前にビクトリア様が覚醒石を二人の為に用意してくれたようでな、必要があれば森に入る事も伝えられていたんだ。いつ覚醒石を使うかは聞いてなかったが、今日だったみたいだな」


 森に入ることは聞いてたのか。覚醒石って貴族様が異能力を覚醒する時に使うアイテムだよな?


「覚醒石って貴重な物じゃないんですか?二人の為に用意するとは、ビクトリア様も太っ腹ですね」


「俺もそんな貴重な物を子供に使ってもいいのか尋ねたんだが、次世代のリーダー格を育てる意図もあるらしい。この開拓村にはまだ子供が少ないだろう?アーシャは賢く良い子に育ってくれてるし、最近はエスト君も利発で凛々しい将来が楽しみな子供と評判だからな。この二人の為なら覚醒石も安い物だと仰っていたよ」


「それは、なんとも羨ましい話ですね」


「位階はそう簡単には上がらないが、覚醒石で有用な能力を得たなら話が違う。今日アーシャやエストが得た能力次第ではあるが、この開拓村の未来も明るいだろう」


 ドルトンさんの態度で開拓村とエスト君達の未来を楽しみにしていることがよく伝わった。

 俺も将来の開拓村と二人の事が楽しみになる。

 ……将来といえば、俺にはここ数年不安なことがある。

 自分の明るい未来を掴むために、ドルトンさんに尋ねる。


「ドルトンさん、どうすれば美人と結婚できますか?」


 二十五歳はまだまだ若いが、油断してるとそのまま一生独身という事もあり得る。

 実家の近所の農家にも、独身で寂しそうに暮らしてる人が大勢いた。

 結婚したいなら早い時期からの婚活が大事だと俺は考えている。


「俺に聞くな、俺もモテるわけじゃない」


 モテないというがドルトンさんは独身の女性からも評判が良く、メルシャさんという素敵で美人な女性を捕まえている。


「じゃあどうしてメルシャさんという完璧な女性と結婚しているんですか!嫌味ですか!」


 何故かドルトンさんが冷や汗を流しながら反論する。


「メルシャとは巡り合わせが良かったんだ。同じ時期に開拓村に来て、怪我した時に治療してもらいながら仲を深めたんだ」


 俺も悲しくなりながら激しく反論する。


「それなら、俺も条件は同じなんです!同じ時期に開拓村に来て、怪我した時は俺も治療してもらいながら話していました!年齢も私とメルシャさんは同じ歳ですよ!ドルトンさんは十歳も年齢が上じゃないですか!?」


 開拓村に来た当初、アルマさんとメルシャさんを狙っていた男性たちが多かった。


 身重の体でありながらも一生懸命働いていて優しい美少女のアルマさんは、とても素敵な女性だった。

 エスト君が生まれる前から、数多の男達が告白して玉砕してきた。

 俺も例外ではない。

 メルシャさんも同じくらい人気な女性で、早くにドルトンさんと結婚する事になってショックを受けた男性は数知れない。

 当時は俺も悲しくて枕を涙で濡らしたものだ……


「お前が気の毒だから話してやるが、誰にも言うなよ?」


 ドルトンさんは何故か声を小さくし、俺にしか聞こえないように言った。


「メルシャと俺は同郷で、昔から知り合いだったんだ。仲が良かったわけではないが、開拓村で知り合いは俺しかいなかったようで、故郷の話で盛り上がって自然と結婚する流れになった」


 そんな幸運があるのか……

 俺はショックを受け、全身から力が抜けたように項垂れた。


「おいおい、なんでショック受けてんだ。お前に教えてやったのはチャンスを掴む為なんだぞ?」


 ドルトンさんは俺を慰める為か語りはじめた。


「俺でも同郷というだけでメルシャのような美人で性格も良い女性と結婚できたんだ。もしお前と同郷で結婚したいと思える女性がこの村に来た時、お前はそのチャンスを逃すのか?」


 身体中に電撃がはしる、天啓を受けた気分だ。

 素敵な女性と結婚した男性から実体験を聞いたのだから、無駄にしてはいけない!


「それに女性は話を聞くよりは話すことが好きだという。同郷でなくとも、故郷の話を聞いて上手く慰めてやれば、メルシャのような女性と結婚できるかもしれないぞ?」


 より具体的なアドバイスをドルトンさんが教えてくれる。

 もしかして、メルシャさんと仲が良くなった時に実体験で学んだ事かもしれない。

 それなら、その信頼性は保証されているようなものである。


「ドルトンさん、アドバイスをありがとうございます!俺これからも頑張ります!」


 心機一転してやる気が漲ってきた!


 開拓村の木樵として今日も森を開拓する。

 この日から婚活に力を入れた俺の将来はどうなるのか、それはまだ誰にも分からない。


誤字脱字の報告、感想や評価をお待ちしています。

続きをできるだけ早く投稿する予定ですが、不定期なのでブックマークして

もらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ