2話 お茶会とお楽しみの内容
タリアさんに抱えられたまま中庭に到着した。
お茶会の用意がされたガーデンテーブルセットまでやって来ると、ビクトリアさんはアーシャを抱き締めたまま、タリアさんは私を抱き締めたままイスに座る。
彼女はメイドなのにお茶会に座って参加してもいいのだろうか?
五歳児では椅子が高すぎるので膝の上に座らせてもらえるのはありがたいけど……
不思議そうにタリアさんの様子を見ると彼女は言う。
「今のわたしはエスト様のイスです。どうぞ遠慮せずに座っていてください」
タリアさんはいつも自由な人だが、ビクトリアさんも許しているのか一応確認する。
ビクトリアさんを見ると目があった。確認の意味を込めて視線を送るが、笑顔で無視される。
諦めて視線を外すしアーシャを見ると、目を輝かせていた。
「これがけーき?おいしそう!」
「アーシャちゃんの為に用意したのよ?いっぱい食べてね」
「うん!ありがとうビクトリアおねえちゃん!」
「はい、どういたしまして!あ〜んしてね?私が食べさせてあげるから食べたいケーキを教えて」
アーシャとビクトリアさんは相変わらず仲が良い、微笑ましい光景だ。
「エスト様も、食べたいケーキを教えて下さいね?あ〜んして差し上げますので」
「全部美味しそうだからどれでも食べれそうです。タリアさんがおすすめを選んで欲しいな」
甘いものは好物なのでどれでも食べる事ができるので、タリアさんのおすすめをいただく。
「わかりました、わたしのおすすめはこのイチゴのショートケーキです。はい、あ~ん」
この身体はまだ幼児だから一人でケーキを食べるのは難しいので変に遠慮しても仕方ない。
もぐもぐ…もぐもぐ…もぐもぐ、もぐもぐ…もぐもぐ…もぐもぐ。
前世以来のケーキは美味いな、思わず無言になってしまう。
「けーきおいしいね!えーちゃん!」
「うん、絶妙な甘さで美味しいよ。ビクトリアさんタリアさんありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる。
中世の世界観でケーキは高級品だろう。
「いいのいいの、私が二人に食べて欲しかっただけだから。この飲み物も美味しいのよ?どうぞ」
茶色の飲み物を受け取り一口いただく。
これはココアのようだ、暖かいココアが身に染みる。
「ケーキにはココアとコーヒーという飲み物がよく合うの。それはココアね」
「とても美味しいです。コーヒーはないのですか?」
「コーヒーは少し苦いのよ。大人の味ね」
「少し頂きたいのですが」
「一応用意してあるけど、本当に飲むの?思ってるより苦いと思うけど?」
「はい、何事も経験なので」
「…エスト君は大人ね」
「よく言われます」
コーヒーを受け取りいただく。
ブラックコーヒーか、私は好きだけどよく五歳児に砂糖も入れずに渡せたな。
「コーヒーも美味しいですね。ケーキやココアも甘くて美味しいですがコーヒー独特の苦味も好みです」
「エスト君、あなた本当に五歳?」
ビクトリアさんにジト目で疑わしげに見られた。
背後のタリアさんからもジト目を向けられている気がする。
「僕は正真正銘五歳児ですよ?ね、アーシャ」
「うん!えーちゃんはごさいで、アーシャはよんさいです!」
「そうだよね?アーシャ、ビクトリアさんが酷いんだよ、僕が子供じゃないって疑うんだ……」
「おねえちゃん!えーちゃんにひどいことしたの!あやまらないとだめ!」
「え?……お姉ちゃんが悪かったです、ごめんなさい」
アーシャは優しい子だから悪いことだと思い敏感に反応してくれた。
私の悲しんでいるふりを信じて、アーシャがビクトリアさんに謝罪させようとする。
釈然としない様子でビクトリアさんは謝った。
「冗談ですよ?僕が普通の子供ではない事は分かってますので」
調子に乗りすぎたようでまたジト目が突き刺さる。
でも正直に言っても信じてもらえないし、今更幼い子供のふりも出来ない。
「まあエスト君だから仕方ないわね、お茶会しながら話したいことがあるのよ。二人の為に良いものを用意したわ」
「なになに?おねえちゃんがいってたおたのしみ?」
「アーシャちゃんとエスト君の為に覚醒石を用意したの、結構貴重なアイテムでダンジョンで手に入るんだけど、一人一回しか使えないから、冒険者が売りに出すのよね。私達はもう必要ないけど、二つセットで販売してたから、ちょうど良いと思って買ったのよ」
覚醒石は聞いたことがないアイテムだな。
名前的に潜在能力を引き出す能力がありそうだけど。
「それを僕たちに?ありがたいですけど良いんですか?」
「可愛いあなた達に使って欲しいと思ったんだもの。先行投資でもあるけどね」
「お嬢様も楽しみにしていたのですよ?お二人が覚醒したらどんな能力でしょうとウキウキされていました」
「もう、タリアったら、恥ずかしいじゃない!自分をメイドと思うなら主人の秘密は守ってもらわないと困るわよ?」
「おねえちゃん、かくせいせきってなんなの?」
「アーシャちゃん覚醒石はね?人に眠っている特殊な能力を引き出してくれるのよ?私は光魔法に目覚めたわ。タリアは収納魔法ね」
「まほう?えほんでみたまほう?」
「そうよ?魔法を覚えるとは限らないけどね?位階が上がれば能力を得られるのだけれど、覚醒石で能力を先に得た方が有利なのよ?」
「いかいってなに?」
「位階は魔物を倒して経験値を貯めると上がるわ。でもとっても危険なのよ?」
開拓村にゴブリンや狼がよく来るとは思っていたけど、ダンジョンもあるようだし典型的なファンタジーのような世界だな。
初期に特殊な能力を得られるメリットは大きいな。
「ビクトリアさん、貴重な物をありがとうございます」
「いいのよ。貴重な物ではあるけれど、結構手に入りやすい部類のアイテムだから。あなた達がどんな能力を得られるのか楽しみね」
彼女は出会った時から本当に優しい人だ。
辺境伯令嬢なのに、開拓村の子供にここまで親身に接してくれるとは。
この恩には必ず報いないといけないな。
「覚醒石は私の部屋に置いてあるから。ケーキを食べたら行きましょうね?」
「うん!」
「わかりました」
「もぐもぐ」
タリアさんは本当に自由に振る舞っている。
本当はメイドではないのだろうか?
後ろを振り返り食べる姿を観察するとケーキを食べる所作も上品だ。
じっと見ていると、気づいた彼女は少し恥ずかしそうにしている。
「淑女の食事姿をじっと見てはいけませんよ?」
少し頬を赤く染めた彼女も可愛らしいな。
ビクトリアさんも微笑ましげにみていた。
暫くお茶会を楽しんだ後、中庭と来た時と同じように抱えられてビクトリアさんの部屋に向かう。
男の私が入ってもいいものかと少し考えたけど、まだ幼児で問題が起きようもないのだからきっといいだろう。
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