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1話 幼馴染と遊びに行こう

アーシャのひらがなのセリフが少し読み難いと思いますがイメージを大切にしています。

5話で子供のひらがなセリフはなくなります。


 新しい世界で生きていくことを決意したあの日から、もう五年が経った。

 母であるアルマさんとの仲は良好で、時々食堂の手伝いをしながら楽しく過ごしている。


「えーちゃん!あそぼ〜よ〜!」


 朝食が終わってのんびりしていると、可愛いらしく私を呼ぶ声が家に響く、幼馴染のアーシャがやってきたようだ。

 銀髪でバイオレットの眼をした可愛い幼女で、近所に住んでいる子供は彼女だけだ。

 小動物のような行動をよく見せる幼馴染で、その可愛さでみんなを癒してくれる。

 アーシャが産まれた時からの付き合いで、ずっと兄のように見守って遊んであげていた。


「エスト、アーシャちゃんが遊びにきたね。行ってらっしゃい」


 アルマさんが優しい口調で微笑みながら手をひらひらと横に振る。

 十八歳で私を産んだ彼女はシングルマザーらしく、父親は存在を確認できていない。

 水色のロングヘアーで透き通るような蒼い瞳をした美少女にしか見えない容姿をしている。

 スタイルも良いためまさに男ホイホイで、私が産まれた後にも近寄る異性が後を絶たない状況だ。

 食堂を経営しており、彼女の作る料理は村の中で一番美味いと評判である。


「行ってきます、アルマさん」


「アーシャちゃんのエスコートをしっかりね」


「うん、アーシャは元気いっぱいで可愛いけど危なっかしいからね、エスコートしてあげないと」


 私が言葉を話すようになると、アルマさんは自分を名前で呼ぶように要求してきた。

 何故かはわからないけど母扱いされることに抵抗があるようで、試しに母さんと言うと『アルマ』と訂正されてしまうのだ。

 名前で呼ぶ方が私も楽だから良いのだけれど、拘る理由は不明である。


 家を出るとアーシャが楽しそうに笑いながら待っていた。


「アーシャ、今日は行きたい所はある?昨日は雑貨屋のザックさんの家にお邪魔したよね」


「うん、ザックのおじさんやさしくて、アメもおいしかったよ!きょうはおにくをくれるモルトさんのところにいきたいの!」


「モルトさんは確か、朝から南の森に仕掛けた罠を見に行くって言ってたよ。今日は忙しいんじゃないかな?」


「う〜ん、じゃあビクトリアおねえちゃんのおいえにいこ?」


「そういえば、近々屋敷にまた遊びに来て欲しいって言ってたね」


「いつでもかんげいするっておねえちゃんいってた!」


「じゃあ決まりだね、行こっか」


 目的地は決まったのでアーシャと手を繋いで向かう。

 ビクトリアさんは辺境伯令嬢でこの開拓地の代官をしている人だ。

 辺境伯様の領地の特産品である黒い木材を使って建設された一際大きく立派な屋敷に住んでいる。

 産まれた日の翌日に見た、広い湖の側にある屋敷である。

 アーシャと仲良く手を繋いで歩いていると、数人の大人が親しげに声をかけてくれた。


「アーシャちゃん、エスト坊やと今日は何処に行くんだ?」

「エスト坊、アーシャちゃんの面倒は頼んだぞ」

「相変わらず二人はとても愛らしいわ、アルマさんとメルシャさんが羨ましい……」

「エスト君は赤ちゃんの時から知ってるけど、昔からただ者じゃない特別な空気を持ってるよなぁ」


 私たちが遊んでいるとよく微笑ましげに見ている人たちだ

 うちの食堂でよく会話する人やアーシャと遊び回っていた時に知り合った人もいる。


「えーちゃんといっしょにビクトリアおねえちゃんのところにいくの!おいしいおかしをくれるっていってたの!」


「ビクトリアさんのところか、美味いもんありそうだな、御相伴に預かりたいもんだ」


 最初に話しかけてきた雑貨屋のザックさんが笑いながら羨ましそうに言う。


「土産話を楽しみにしてください。また遊びに行きますザックさん」


 アーシャと一緒にザックさん達に手を振って別れる。

 少し離れたところで、視界に広い湖と立派な黒い木造建ての屋敷が見えた。


「おねえちゃんのおうちみえたよえーちゃん!」


 アーシャは私の手を引っ張って走り出す。

 ビクトリアさんの屋敷の周りには塀があり、いつも門番が立っている。


「えーちゃんとあそびにきました!アーシャです!ビクトリアおねえちゃんはいますか?」


 門番をしているおじさんにアーシャが尋ねる。

 いつも元気いっぱいのアーシャに、門番のおじさんも愛想を崩して笑顔を見せる。


「アーシャちゃんいらっしゃい、ビクトリア様は屋敷にいるよ。連絡してもらうからちょっと待ってな」


 そう言って胸元のポケットから取り出した携帯電話のような物に向かって話しする。

 通信機のマジックアイテムだ。


「ビクトリア様にお客様だ。アーシャちゃんとエスト君が来たとビクトリア様に伝えてくれ、客間に誘導を頼んだぞ」


『了解、お嬢様のお友達だな。通してくれ』


「了解、じゃあ通すぞ。入っていいぞ、屋敷に入ったら案内される部屋で待ってろよ」


 胸元のポケットに通信機を入れながら通行の許可をくれる。

 何度も遊びに来ているが、この手順は毎回踏まなければならない。


「ありがと!えーちゃんいこっ!」


「急がなくても大丈夫だよ、ゆっくり行こう」


 早るアーシャを落ち着かせ、ビクトリアさんの屋敷に入る。


「おじゃまします!アーシャです!ビクトリアおねえちゃんあそびにきたよ!」


「アーシャ、屋敷に入ったら案内してくれるまで待たないと駄目だよ?」


「そうだけど、おねえちゃんにはやくあいたいの……」


 アーシャはビクトリアさんによく懐いている。

 出会う度にめちゃくちゃに甘やかされているのでそれもあたりまえだろうけど。

 少しすると黒髪をシニヨンに纏めたクール系の綺麗な女性が古風なメイド服を着てやって来た。

 ビクトリアさんお付きのメイドで、名前はタリアさんという。

 結構親しみやすい人で、意外とスキンシップが多いタイプの女性だ。


「おはようございます、お嬢様は準備しているので客間で待ちましょう」


「おはようございますタリアさん、わかりました」


「おはようございます!タリアおねえちゃん!」


 私が挨拶するとアーシャも元気よく挨拶した。

 タリアさんが私達の頭を撫で、優しく微笑んでくれる。


「さあ、案内するのでついてきてくださいね」


 大きな屋敷なので部屋数も多く、迷子になりそうな構造をしている。

 玄関から少し歩いたところで客間に着き、ドアを開いて入るように促された。


「ビクトリアお嬢様の準備が終わり次第お連れしますので、ゆっくりしていてくださいね」


 そう言うとタリアは部屋から出ていってしまう、ソファがあるのでそこに座り大人しく待つことにしよう。


「アーシャ、ソファで座って待ってようね。いつも言ってるけど、人の家で待ってる時は静かに騒がずに待つのが礼儀だよ」


「うん、だいじょうぶだよ?……」


 少し落ち着かない様子のアーシャと一緒にソファに座る。

 正面の壁を見ると見たことのない高価そうな絵画が飾られていた。


「あれ、くまさんかなぁ?それともわんちゃん?」


「あれは狼じゃないかな、大きいけど」


 絵画に描かれている動物は周りの描かれている花や木と見比べると明らかに巨大だ。

 前世のアニメで見たフェンリルという魔獣に似ていると思った。


「おおかみさんこわい……」


 私に腕に抱きつきながらアーシャは怯えている。

 開拓村で狼は明らかな害獣で、よく畑を荒らしに来ることもあるので印象が悪いのだろう。


「狼は基本害獣だけど、あの絵の狼は何か優しい雰囲気がするよ?目つきが穏やかで、花の香りを楽しんでるように見えない?」


「……みえるかも?あのおおかみさんは、やさしいおおかみさん?」


「そうかもしれないね。ビクトリアさんが来たら聞いてみよう」


「うん!」


 機嫌が直ったアーシャは笑顔を取り戻し、足をぶらぶらと揺らしながらハミングしている。

 少しするとノック音が聞こえ、タリアとビクトリアさんがが入ってきた。


 ビクトリアさんは美の女神の化身のような人だ。

 太陽のように輝く金髪と見る人を引き込む深い輝きの碧眼が印象的で、まだ十五歳なのにスタイル抜群の豊かな胸を持つ、目のやり場に困るような美少女である。


「お待たせいたしました。お嬢様をお連れしました」


「アーシャちゃんにエスト君、来てくれて嬉しいわ。美味しい食べ物も沢山用意したから、楽しんで頂戴ね」


 ビクトリアさんが優しく微笑みかけながら私達に近づき、前のソファに座るかと思えば、更にこちらの方に接近する。


「可愛い!アーシャちゃんもエスト君も!来てくれてありがとう!」


 先ほどの落ち着いたお嬢様といった様子はかなぐり捨て、いきなり私たちを抱きしめた。

 身長差があるのでそのまま豊かな胸に包まれる。

 良い香りと柔らかさを顔全体で感じるので、男の私は抵抗できず受け入れるしかない。


「うんん、くるしいよ、おねえちゃん」


「アーシャちゃんとエスト君が可愛すぎるのが悪いのよ?今日は私の言うことを聞いて貰うからね?」


「うん!かわりにいろいろたのしみにしてるからね!」


 何やら二人の間で取引が発生していたようだ。

 私は了承した覚えはないけど、この流れに逆らえる気はしない。

 取り敢えず話を変える為にアーシャが気にしてた絵画の事を尋ねる


「ビクトリアさん、アーシャと話してたんですけどあの絵画の狼はなんですか?」


「確かあの絵画は有名な冒険者が晩年に描いたと言われる聖獣フェンリルね」


「聖獣フェンリルは魔物ではないんですか?」


「フェンリルは伝説の勇者の飼っていた犬が神に祝福されて聖獣になったらしいわ。とても賢くて優しくて、今でも伝説の勇者のお墓を守っている存在ね」


「やさしいおおかみさんなの!」


 アーシャが嬉しそうに笑っている。

 ビクトリアさんは優しい笑顔を浮かべ話を変える。


「実は今日はお楽しみがあるのよ?でも先にお茶会にしましょう、ケーキと飲み物を中庭に用意したから楽しんでね」


 変な事を企んでいる訳ではなさそうだけど、お楽しみとはなんだろうか?

 ビクトリアさんの胸元から解放された為、少し距離をとり様子を伺う。

 するとビクトリアさんがアーシャを胸に抱きしめ直し立ち上がった。


「アーシャちゃんは私と一緒に中庭に行きましょう」


 二人はとても楽しそうにはしゃいでいる。

 美少女と美幼女が楽しそうに戯れているのは良い眼の保養になると思う。


「エスト君はわたしが抱えますね」


 一瞬の隙をつかれてタリアさんに捕まえられた。

 ビクトリアさんに負けず劣らずの大きな胸に抱えられる。

 普段から古風なメイド服を着ているため印象に残らないが彼女の胸もすごく大きい。

 抱き締められて背中に豊かな胸が押し付けられるが、子供の特権だと思い受け入れる。

 こういうことは転生してから何度も経験してきたが、一応、隠していた真実を伝えてみることにした。


「タリアさん、実は僕は大人なんです。生まれ変わりって信じますか?」


「……やっぱりエスト様は面白いですね。もしそうでも今は子供なので諦めてくださいね?」


 やっぱり逃れるための口実としか思われないな。

 そのまま抱えられて中庭に向かう。


 お茶会の後のお楽しみとは何だろうか?


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