12話 婚約希望者
投稿が遅れましたすみません( ̄▽ ̄;)
執筆が全く進みませんでした。
視察団が到着した。予定にない貴族がやってきているようで掲げられている家紋の一つはブラックウッドの家紋だけど、残り二つは違う家紋が掲げられている。馬車がビクトリアさんとタリアさんの前で止まると一人の厳つい外見をした男性が降りてきた。リチャード・ブラックウッド辺境伯様だろう。
「娘達よ、壮健か?久しぶりに会えて嬉しいぞ」
「お久しぶりですお父様、私たちは手紙で知らせていた通り元気ですわ」
「わたしもお姉様と楽しく過ごしています」
「うむ、挨拶はこれくらいにしておこう、実は視察する前に話があってな。……実に言いづらいんだが、お前達に直接会って婚約を申し込みたいと同行して来た者達がいる」
やはり予定より多い人員は婚約希望者とその家臣のようだ。辺境伯様が同行を拒否しない程度には権力がある貴族家が婚約を希望して開拓村までやってくるとは、面倒ごとの予感が当たってしまった。話を聞いていたのかタイミングよく二人の若い男が馬車から降りてきて辺境伯様の近くに寄ってきた。
「ボクはミシェル・モンド、あなた達に会うためにやってきました」
「私はアルダ・シュタインです、あなた達のような女性に出会え光栄です。噂以上に美しい」
辺境伯家の娘に直接婚約を申し込める立場であるなら、この二人の男はそれなりに高い爵位を持つ貴族の息子なのだろう。
「モンド伯爵の三男とシュタイン侯爵の次男で私が出発する前に手紙と共に現れてな、婚約を諦めきれないからとやってきたようだ。二人とも中々の美男子だろう?お前達と会わせるくらいはいいかと思って連れて来た」
だから予定外の貴族がいるのか、ビクトリアさんとタリアさんの好きな人が貴族ではない事は少し考えればわかる事だから、試金石として連れて来た可能性があるな。
「お父様?私たちは好きな人がいるとお伝えしましたわ。なのにそんな事をされてはこちらとしては困ってしまいます」
「エスト様以外の方と婚約するつもりはありませんよ?」
「それだ、娘達の好きだという奴が、最低限この二人より良い男でなくては私としても認め難い。婚約を断った理由はそいつの所為だと説明した。私達を認めさせてみよ」
やはり試金石としての当て馬か、これは力を証明するチャンスだな。ビクトリアさん達の前まで歩き、辺境伯様達と対峙する。私の姿を見て何故か眉間に皺を寄せ唸っている。
「ブラックウッド辺境伯様、初めまして。私はこの開拓村でお世話になっているエストと申します。ビクトリア様、タリア様と親しくお付き合いさせて頂いています」
私が娘二人と婚約している事を、さり気なく指輪が見えるようにしてアピールする。見た目は整えて来たので合格点をもらえるだろう。しかし、私が貴族でない事実は大きいと思うので、すでに婚約した事を教えて牽制する必要があると判断した。
「貴様が娘達の好きな人とやらか、……婚約指輪を渡しているという事は、引くつもりはないという事だな?」
「はい、私の気持ちは変わりません。この婚約指輪がその証です」
指輪を見てもらえれば私の本気度が推し量れる筈だ。この婚約指輪はとても貴重な宝石を利用したマジックアイテムでもある。辺境伯様がそれに気付けない筈がない。貴族二人は予想外の事態だったのか狼狽えている様子で何か言いたげであった。
辺境伯様は少し考えた後、狼狽えている二人に話しかけた。
「すでに娘達はこの若者と婚約してしまったようだ。君達も何か言いたい事がありそうだが?」
「……辺境伯様、私もここまで来て簡単に諦めるわけにはいきません。チャンスを頂けませんか?」
「……見ればそちらにいるお嬢さんも同じ婚約指輪をしているようです。そんな気の多い男がお嬢様方に相応しいわけが御座いません。私たちの方が相応しいと証明させて下さい」
貴族ではない事は指輪とタリアさんの貴族コーデもあって問題にされなかったようだ。けど、アーシャの婚約指輪を見て上手いこと口実にされてしまったな。結局何か証明する必要があるのか。
「ふむ、証明か。容姿と財力は証明され、後は力の証明が必要だと私は考えている。力を証明した者は娘達に婚約を申し込む事を認める事にしよう」
「……チャンスをいただきありがとうございます。ボクの力を証明してみせましょう」
「……貴族である私たちが、あらゆる面で上なんだと証明してみせます」
力の証明か、どのような形で証明するのかは分からないけど、結構平和的に終わりそうだな。辺境伯様が思っていたよりも理性的で私の意図も読み取って行動してくれている。
「辺境伯様に認めてもらえるのなら、どのような条件でも達成しましょう」
「貴様は私の許可なく娘達に婚約を申し込んだ、力の証明は条件を厳しくさせてもらう」
婚約者候補の二人はやる気満々で、辺境伯様は娘達と私が知らないうちに婚約したのが気に入らないようだ。厳しい条件とはなんだろうか。
「貴様にはこの二人と同時に決闘してもらう。勝った方は娘達へ婚約を申し込む事は認めよう」
「流石は辺境伯様、ボクのレイピア捌きと魔法で、貴族と平民の力の差を見せ、お嬢様方の目を覚まさせましょう」
「貴族に平民が勝てる道理はないと、お嬢様方に相応しい男が誰なのかを教えてあげます」
……辺境伯様は私の力を見抜いている節があるけど、この二人は二対一を疑問も持たずに了承したな。恥を知ってるなら一対一にすると思うが、可哀想な奴らだ。
「婚約希望者以外は後ろに下がっていろ。決闘はこの場で、双方手加減なしの真剣勝負だ」
「殺してもいいのですか?」
「身の程を知らなかった己を恨め。ここで死んでもらう」
「本当に手加減しませんよ?」
辺境伯様が手加減なしと言ったのを聞いて、この二人は私を殺していいと許可を与えられたと思い込んでいる。二対一で手加減なし、相手は平民だと思っているから、自分たちの勝利は疑っていないらしい。辺境伯様も失言だったのか、少し考え娘達をチラッと見た後に了承した。
貴族二人は死んでも問題ないのだろうか?
ビクトリアさん達が焦っていないのを見て殺しを許可するとは、私を殺すつもりの奴を生かしておくつもりはないぞ?
「手加減しないとは言ってくれますね。ここでキミには必ず死んでもらいます」
「本当に身の程知らずな奴だ、貴族の力というものを最期に教えてやろう」
「私を殺すつもりのようですけど、死ぬ覚悟はありますか?それとも死ぬ覚悟もないのに殺すつもりですか?」
短絡的な貴族の愚息だな、辺境伯の娘と婚約できたら儲けものと送り出された捨て駒の可能性が高い。殺してしまっても問題は少ないだろう。面倒事は減らすに限るので死んでもらおうか。
「死ぬ覚悟なんて必要ありませんね、ボクはBランク冒険者でもあります。死ぬのはキミです」
「私達が負ける事などあり得ないが、私は侯爵家の次男だ。私がもし死にそうなら、流石に辺境伯様が助けてくれるだろう……」
伯爵家のミシェル・モンドはBランク冒険者だから自信があったのか。侯爵家の次男アルダ・シュタインは何かおかしいと感じたのか辺境伯様の方をみて動揺している。辺境で貴族が死んでも揉み消す事は容易いが、侯爵家の次男なら生かしておくメリットもあるので辺境伯様が決闘に介入する可能性はあるな。なら、介入できないスピードで殺してしまおうか?
「極力殺しはしないように、決闘始め!」
決闘が始まる。殺すか殺さないか、それが問題だな。
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