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9話 視察対策は大変だ

 朝日が顔に当たり眩しくて目が覚める、身体が金縛りにあったように動かない。

 確かめると美女達に抱きつかれて身体が拘束されていた。

 昨日は婚約後に色々と話し込んだ後、皆で寝ることになったのでこのような状況なのだろう。

 生理現象が起こっており、美女に抱きつかれたままだと手を出してしまいそうになるので、二人に声をかけて起こすことにする。


「ビクトリアさん、タリアさん、起きますよ」


 二人を起こしてからも色々とあったが、それは割愛する。


 視察までの予定を話し合った結果、ビクトリアさんとタリアさんが夜会に必要な物を買い集め準備をしてくれるらしく、皆の正装も手配しておくので心配いらないから任せて欲しいとのことだ。

 今日から忙しくなる為、屋敷で朝風呂と朝食をいただいてから屋敷を出る。


 まずは領都ナイトヘイブンへの街道の補修工事を相談する為に整備班長のムスルカの所に行く。

 整備担当者の仕事は多岐に渡り大変だけど丁度辺境伯様の視察もあるので、それに合わせたタイミングで街道の補修と補強を進言するつもりだ。

 整備班の待機所は開拓村の出口付近に設営されているので歩いて向かうと、ちょうどムスルカが出て来たところだった


「おはようございますムスルカさん、相談したいことがあるのですが時間はありますか?」


「エストくんおはよう、どうしたんだい?昨日に仕事がひと段落した所だから丁度良かったね」


 整備班は増加傾向にある人口に合わせて家を多めに建築していたけれど、昨日に終了したようで歓迎してくれた。


「実は六日後に辺境伯様が視察に来られるので、それに合わせて街道の補修と補強をお願いしたいのです」


「辺境伯様が視察かい!?開拓村に来るなんて初めてだよ?でも何で街道の補修と補強なのかな?」


「領都ナイトヘイブンからこの開拓村まで一応街道はありますけど、舗装されたのが十年前だと聞きました。各地に遠征する時に少し気になっていたのですが、馬車などの通行時に事故が増えています。辺境伯様が視察の際に事故に遭わない様に少しでも早めの補修と補強が必要だと感じました。それに、後数年でこの開拓村も街と認められそうなので訪れる人達も増えるでしょうから丁度いいかと思いまして」


 説明すると納得した様にムスルカが何度も頷いている。


「確かにね、辺境伯様が街道で事故して怪我したら大変だね。じゃあどこまで補修と補強をやるかだね」


「整備班に土魔法使いはいますか?二、三人いるなら、僕の能力でサポートすれば開拓村で許可されている範囲までは、そう時間をかけずに補修と補強を終わらせる事が出来ると思います」


「エストくんがそう言うならこちらからもお願いするよ。ぼくも土魔法が使えるから同行するね、残りの土魔法使いも連れて来るからちょっと待ってて」


 問題なく街道整備が進みそうでよかった、土魔法の使い手はインフラで役立つからいるとは思っていた。


「お待たせエストくん、ダンとグリムを連れてきたよ。二人は知ってる?」


「こちらは見知ってます、うちの食堂で見かけた事があります」


「ダンだ。半年前にこの開拓村にやってきた」


「グリムです。ダンの弟ですね。アルマさんのご飯は特別美味しいですよね」


「そう言ってもらえるとアルマさんも喜びますね」


 前に食堂で見かけた時、ダンとグリムの両方がアルマさんを目当てに来ているようだった。

 私とアルマさんの距離が近くて、子供だと周りの客に聞くまでよく睨まれていたのを覚えている。

 ダンが何か言いたげにこちらを見ており口を開く。


「エストだったか、お前が十歳だというのは本当か?」


「最近はよく聞かれますね、本当ですよ。産まれた時からこの開拓村に居てるので、皆知ってます」


「俺は長命種と出会ったことがあってな、そいつの雰囲気にお前が似てたから少し気になってたんだ」


 ……心の中で少しだけ動揺する、長命種に似てるっていうのは見た目と精神が一致していないということかな、流石に長命種ほど精神が成熟しているわけではないと思うけど。


「歳に不相応なほどに聡明で凛々しく見えるのがエストくんなんだ。昔からそうだからもう慣れちゃったね、ぼくは」


 昔から私を知っているムスルカが横から口を挟んでくれる。

 子供らしくなかったからか、昔から利発で凛々しいとはよく言われた。

 女性たちの可愛がりが過ぎた時は動揺して揶揄われたものだ。


「今回の舗装工事のサポートよろしくお願いしますね。噂の強化魔法を楽しみにしてるんですよ」


 グリムは強化魔法を聞いたことがあるようだ、遠征する時によく馬に強化魔法を使うから噂になっているのだろう。


「期待に添えるように頑張りますね」


 始まった街道の舗装工事は二日で終了した。

 三人の土魔法使いに強化を使用すると街道の補修と補強がかなり速く進み、交代で休憩をすることで継続的に作業を進めることができたのが理由だ。


 整備班の手が空くことになったので相談した結果、辺境伯様が視察される可能性がある建物の点検を整備班にお願いする事ができた。


 舗装が思ったより早く終わったので次の日は花の種を買い漁り、街道周りに植えて景観を華やかにする事にした。

【成長強化】の力を活用し花の成長に関するあらゆる要素を強化することで街道横に三原色の花畑を左右に幾つか出現させる。


 これはリチャード様が視察に来た時、少しでも穏やかな気持ちになってもらう為の小細工で、話のタネにも丁度いいだろう。


 視察まで後に使える時間があと三日しかない状況、役職者代表会議で話し合いを行い、特産品や開拓の記録を整理して急いでビクトリアさんに提出する。


 視察まで残り二日、開拓村の各エリアに看板を設置して皆に知れ渡るようにから、住民に対する視察の周知と注意を行う。

 開拓村の人口が順調に増えた結果、偶に乱暴な輩や不審者が見つかることもあるので、視察当日には警備を随所に配備して警戒を強めるように連絡と手配を済ませた。


 必要なことはこれで全て終わらせたと思うが、問題が起こった時はアドリブで頑張ることにしよう。

 明日は辺境伯様が視察に来られる日なので早くに家に帰り休むことにした。


「ただいまアルマさん、とても疲れたよ」


「おかえりなさい、お疲れさま」


 家に帰ると仕事を終えたアルマさんもいたので帰宅を知らせる。

 台所で夕食を作ってくれているようで、今は後ろ姿しか見えない。

 母とはいえ、帰る場所に美少女がいるのは最高の癒しだろう。

 それにアルマさんは分かりやすく愛を示してくれるので、今日のように疲れていると甘えてしまう。

 背後からアルマさんに抱きついてしまう……アスナロ抱きっていうんだったかな。


「アルマさん、今日は久しぶりに一緒に寝てもいいかな」


「いいよ、でもベッドが二人で寝るにはもう小さいかも」


「僕がハグして寝たら大丈夫だと思うよ」


「……じゃあそうしましょう。夕食がもう直ぐできるから待ってて」


 夕食をいただいたあと、アルマさんにクリーンの魔法を使ってもらい身体が綺麗になった。

 ビクトリアさんの屋敷にはお風呂があるけど、あれは一般には普及していない贅沢品なので、一般市民の家にはそんなものはない。


 普通は洗浄の魔道具を使って体をキレイにする。

 洗浄の魔道具は使い捨てのマジックアイテムのようなもので、ダンジョンで大量に手に入る為安く売られている。


「寝ましょうか、アルマさん。ここにどうぞ」


 ベッドに先に入り胸元にスペースをつくり誘うと、アルマさんが躊躇うことなくそこに寝転んだ。

 もう家族として十年一緒に暮らしているので遠慮なんてものは存在しない。

 産まれた時にアルマさんが言ってたけど、まさに人生のパートナーだと思っている。

 十年間で喧嘩したこともなく、お互いを大切にしている事が通じ合う感覚がするので、唯一無二のパートナーだろう。


「エスト、明日は早いんでしょう?しっかり休んでね」


「ありがとうアルマさん」


 アルマさんを抱きしめて目を瞑ると安心できる甘い香りがしてリラックスできた。

 美少女にしか見えないアルマさんだけど、十年間に数えきれないほど一緒に寝ているので、性欲よりも家族としての愛情が勝る。


「おやすみ、アルマさん」


「おやすみなさい、エスト」



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続きをできるだけ早く投稿する予定ですが、不定期なのでブックマークして

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