あ
今日もいつも通りの、税金の書類や、居住変更の書類の製作で終わるとメルは思っていた。
四つある受付には3、4人づつの列をなし、エントランスの筆記台にはちらほら書類に記入している市民がいた。
時計を眺めると、あと少しでランチの時間帯だった。
「……助けて下さい!!」
役場に入るなり、少年が叫んだ。
誰しもが、入り口付近の少年を見ていた。
勿論メルも少年に視線をやったが……メルは後悔した。
目があった少年はあろう事かメルの方に駆け寄って来たのだ。
「助けて下さい!!」
列に割り込んだ少年を誰も止めなかった。なるべく関わりたくはないのだろう。ひょっとすると、間も無くゴロツキが現れるのかも知れない。しかし、自分に言葉を向けられた以上、メルも聞かない訳にはいかない。
「……どうしたの、私で良けれ…」
「村が、俺の村がゴブリンに襲われて、だから、村長が街に助けを求めに行けって、ね、姉ちゃんが……何人か女の人もさらわれて……」
「……え、ゴブリン? うちじゃ対応出来ないから、騎士団か、ギルドの方に依頼を……」
列に並んだ髭面の男が口を挟む。
「どこの村だい?」
「ハローシュ」