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悪役皇女は何が何でも生き残りたい!  作者: 星野光
第一章 環境を改善したい!
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第7話 皇后とお茶会をしてみる 1

 使用人が連れていかれてから、だいたい十分ほど経った頃、私の部屋のドアがノックされる。


「どうぞ」


 私がそう言うと、若い男の人が入ってきた。

 その人は、私に臣下の礼を取る。


「ダリウスさまより遣わされました、ルークと申します」


 へぇ~。あの人、ダリウスって言うのか。

 なんか聞いたことがあるような気がしなくもないけど……それは後で考えよう。


「楽にしていいわ。あなたには、ある方にこれを届けてほしいの」


 私は、ルークがやってくるまでの間に(したた)めておいた手紙を渡した。


「ある方とは、どなたでしょうか?」

「皇后陛下よ。なるべく早くに渡しておいて」

「かしこまりました。では、失礼いたします」


 なんで皇后陛下に?とか、手紙の内容は何なんだとか、気になることはいろいろあるだろうに、何も聞かずに、私の命令を遂行する。

 ダリウスは、人を見る目があるようだ。そんなダリウスに目をかけている皇帝も、見る目はあるのかもね。信じたくないけど。


(さて、後は返事が来るのを待つだけか)


 私が皇后に送ったのは、お茶会をしないかというお誘いの手紙。

 ドレスの件は、ドレスどころかアクセサリーなどについても解決してしまったし、使用人も、あの人のことが見せしめのようになるだろうから、もう私に舐めた態度を取るのなんていなくなるだろう。

 そうなると、問題という問題がなくなるため、私が皇后を尋ねる理由がなくなる。同じ敷地内に住んでても、家族を訪ねるのに理由がいるのよね、この立場だと……。

 仕方なく、私はお茶会を開いて、話せる場を設けることにした。でも、これは皇后のことを確かめるにはちょうどいい方法だと思う。

 断られたら、私と話す理由がないということだから、皇帝のことは気にしていないか、知らないかのどちらか。

 了承されても、私が先に動いたから、やましい思いがないように映るだろうし、うまく行けば、皇帝のように、私に少しは目をかけてくれるかもしれない。

 もちろん、あくまでも希望なだけであって、皇后の機嫌を取るのが一番なんだけど。

 ちなみに、お茶会でもやらないかという提案をしただけなので、日にちや場所は特に明記してはいない。もし了承するなら、それも指定してくるだろう。

 さて、皇后はどんな返事をくれるだろう。


 その翌日。


 皇后から返信が送られた。いくら敷地内だからと言っても、返事としては早めの部類に入る。

 そして、返事は了承。二日後の午後、皇后宮で行いたいというお願いという名の命令が下された。

 これは、皇帝がここに訪ねてきたことは筒抜けなのだろう。そして、さりげなく内容や、私が皇帝につこうとしているのかを調べるはずだ。

 そして、それが自分にとって不都合であればーーということなのだろう。だからこそ、それが容易である皇后宮に呼んでいる。やはり、皇帝と接触したことにより、皇后の印象が悪くなってしまったらしい。

 そして、皇后に話したことは、皇帝に知られる可能性もある。皇后宮にスパイを送り込んでいる可能性は大だ。

 私は、監視しているときの視線には気づいても、当然ながら、それが誰の命によって行われているのかはわからない。あらゆる可能性を警戒しておいたほうがいいだろう。

 まだ新たなドレスは購入できていないがーー一番ましなものを着ていくことにするか。


 そして迎えたお茶会当日。


 私は、所有しているなかで一番ましなドレスとアクセサリーを身につける。

 使用人に着飾らせたけど、以前よりも丁寧な手つきだった。

 どうやら、あの連れていかれた使用人がいい見せしめとなったらしい。今からでも、私の機嫌を損ねないようにしようとしているのだろう。

 皇女には、そう接するのが当たり前だというのに……どれだけ舐められていたのやら。

 私が皇女宮を歩いているときも、使用人が私を見つけると、すぐに道を開けて、頭を下げる。その行いも、以前とは態度ががらりと変わっていた。

 その使用人とすれ違いざまに後ろを見てみると、珍しくまだ下げている。ここまで変わるなんて、やはり、皇帝は恐怖の対象のようだ。少し扱いがましになったことだけは、あいつの立場に感謝してもいいかもしれない。

 皇女宮と皇后宮は、そこまで離れているわけではない。皇女宮の管理を皇后が行うことが理由の一つだ。皇子も本来なら管理は皇后が行うが、やっているのは皇帝である。

 その理由はーー誰もが予想する通りだろう。

 それは置いておくとして、そのお陰で、子どもの足でもあまり疲れずに皇后宮まで来ることができる。

 私は、事前に指定された皇后のいる部屋をノックする。あの人が私を私室に入れるとは思えないので、ここはおそらくは客室だろう。


「どうぞ。入りなさい」


 入室の許可があったので、私は中に入る。


「お待たせしました、皇后陛下」

「平気よ。楽にして、そこに座りなさい」


 私は臣下の礼を取ったが、すぐにでも話を聞きたかったのか、私が礼を取ってから十秒も経たずにお許しが出た。

 私が皇后の指定された場所に座ると、皇后は紅茶を一口飲んで言う。


「驚いたのですよ。あなたからお茶会の提案をされるなんて、思ってもみなかったものですから」

「私のほうも、唐突なお申し出とは思っていたのですが、まさかお受けしてくださるとは思いませんでした。皇后陛下はお優しいのですね」


 互いに笑顔になりながら、言葉の刃をぶつけ合う。

 皇后の言葉の意味は、『大して親しくもないのに、なんであんな手紙送ってきたのよ』というものだ。

 驚いたという言葉と、思ってみなかったという言葉から、お前と私ってそんな仲じゃないだろというのが感じ取れる。

 私の言葉は、『そんな親しくもない奴からいきなり提案されたことなのに、なんで快く引き受けてるの?普通は断らない?』という意味。

 お互いに喧嘩を吹っ掛けた状態なので、笑みを浮かべてはいるが、互いに睨み合っているも同然だ。


「受けない理由がありませんでしたので。ちょうど、私もあなたに会いたいと思っていたところですもの」

「あら、私に何かご用が?」


 わざとらしくそう言ってみる。

 それに反応してかはわからないが、皇后は先ほどよりも冷たい笑顔を向けて言う。


「陛下があなたを訪ねたと聞きました。それが気になってしまいまして……」


 やはり、情報は掴んでいたらしい。これからの会話は、今までのちょっとした挨拶など、可愛いものになるだろう。

 ここからが正念場だと、私は気を引き締めた。

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