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悪役皇女は何が何でも生き残りたい!  作者: 星野光
第一章 環境を改善したい!
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第4話 皇帝と対話してみる

 隠し扉らしきものの奥には、一つの部屋があった。

 そこには、どこから用意したのかわからないけど、小さめの一人用ソファと、大きなソファがあった。何も指示はされていないけど、おそらく、小さめのやつは私が座れということなのだろう。

 現に、皇帝は大きめのソファに座っている。

 私がおそるおそるソファに座ると、皇帝が口を開いた。


「皇后に会ったそうだな」


 薄々そうなんじゃないかとは思っていた。この皇帝が直接私に訪ねてくる理由なんてそれしかないだろうということは。

 でも、それは昨日のことなのに、もう情報を手に入れているなんて。これは、今まで以上に行動に気をつけないと、取り返しのつかないことを招きかねない。


「……お会いしてはおりません。お話しさせていただいただけでございます」

「……ほう」


 蛇に睨まれた蛙のようだ。

 普通なら、皇帝の言葉を否定したりなんてしないだろう。でも、私は皇后と顔を合わせてはいない。扉越しに話しただけだ。それを、会ったというのはちがうだろう。

 もし、皇后に話を聞いていて、皇后と食い違う部分があれば、嘘と見なされるのは、おそらく私のほうだ。

 皇帝は、私を始末する理由を欲しているのだから。皇帝に嘘をつくなんて、私に処罰を与える立派な理由になる。

 小説では新たな皇女が生まれて、私が必要なくなったのが、処分を実行することになったきっかけだけど、もしかしたら早まるという可能性もある。生まれてないから大丈夫なんて楽観的に考えてはダメだ。


「なぜだ?」

「……ドレスの購入許可をいただきに」


 一つ一つの言葉に重みがある。

 もし、皇后が嘘をついていたら。自分にとって都合のいいことしか話していなかったら。そう思うと、冷や汗が止まらない。


「もうドレスがないのか?先月に与えたばかりだと思うが」


 私はそこでへっ?と思ったが、すぐに理由に思い至った。

 だが、あくまでもこれは推測の域を出ない。口にせずに、質問だけに答えよう。


「流行遅れの、古いものならばございますが……先月にドレスが増えた覚えはございません」


 私がそう言うと、皇帝は何やら考え込むような動作をする。

 そんな何気ないような行動でも、私の背には寒気が走る。

 回答を間違えただろうか?でも、充分にあるんですけどぉなんて言おうものなら、そちらのほうが寿命を縮めそうな気がする。

 それに、何一つ嘘はついていない。私の衣装室にあるのは、新しいものでも、半年前のものだ。

 普通なら、皇帝が言うように、最低でも一ヶ月に一度は購入すべきである。そして、同じドレスを着るなんて言語道断だ。

 もし、皇女が同じドレスを着ていたら、皇帝は、満足にドレスも与えられないと舐められるだろう。世間体を気にする皇帝は、それは避けたいことだ。

 だからこそ、最低限のドレスは与えてくれるが……半年前から増えた覚えがない。理由はなんとなくわかるけど。


「……それは、先月だけか」


 皇帝も、なんとなく理由を察したのだろう。先ほどよりも目が冷たくなった。

 でも、これは私に向けられたものではない。なので、そこまで怯えることはなかった。

 これなら、大丈夫かもしれない。

 私は、思い出すふりをして、ついでにと暴露する。


「……ドレスならば、半年ほど前からかと」


 皇帝の座にずっと座り続けている存在だ。これで気づくだろう。


「……なるほど。理由は理解した」


 皇帝の目が冷たくなる。予想通り、皇帝は私の言葉の裏を読んでくれたらしい。これで、ちゃんと裏を取ってくれるだろう。

 でも、腹を立てる様子がないということは、さらなる裏の目的には気づかれていないようだ。もし気づかれていたら、子どもというのを利用してごまかそうかと思ったけど……。まぁ、気づいていて乗っかっているだけかもしれないけど。

 どちらにしても、私が生き残るため、皇帝にはせいぜい働いてもらうとしよう。


「だが、言伝くらいできたのではないか?」

「ちゃんと届くかわかりませんので。言伝を頼んでも、それが相手に伝わらねば意味がありません」


 誰が聞いても当たり前のことを言っているが、これは、私の頼みを聞いてくれる人がいると思う?という意味だ。

 皇帝も、私の言葉の意味に気づいたようで、こんな提案をしてきた。


「ならば、私の元から人を送ろう。今後、皇女宮を出るときは、その者に言伝しておくように」

「かしこまりました」


 これは、私に監視をつけるということか。

 でも、それなら願ってもない話だ。私に監視をつけてくれていたら、私に冤罪をかけられる心配は低くなる。そして、皇帝が送る存在なら、皇室に絶対の忠誠を誓っている者のはずだ。皇女宮の使用人よりは信用できるだろう。

 そして、皇帝が信頼している存在が私の側にいるというのは、私の価値を高めるのに役立つ。皇帝に目をかけられているという証明になるからだ。

 皇后の印象が悪くならないかということだけは懸念点だけど……でも、それを差し引いたとしても、メリットが多い。

 そんな魅力的な提案を向こうからしてくれるとは。


「では、もう戻ってもよい」

「はい、陛下。失礼いたします」


 私は皇帝に一礼をし、部屋から外に出る。


(はぁ~……!)


 心の中で、大きなため息をついた。監視を送ろうとしているのを見ても、皇帝はしばらくは私を殺すつもりはないらしい。この調子で行けば、自立まで生き残ることはできそうだ。

 でも、油断してはいけない。今回は皇帝の情報網を甘く見ていたことで起こったことだ。今後は、常に警戒しておかなければならない。

 まずは、皇后への対策を考えないと。皇帝に目をかけられていると思われたら、皇后の私への印象は悪くなる可能性が高い。

 いや、もしかしたら、もう思われているかもしれない。皇帝が私の行動を把握できるのなら、皇后だってできてもおかしくない。

 はぁ……夫婦仲が良ければ、こんなことで悩まないのに……

 だからといって、私が二人のキューピッドになるのは無理だ。見届ける前に死んでしまう。

 皇后に会いに行くか?いや、それをするとなると、監視に話さなければならないから、必然的に皇帝の耳にも入るわけで……またこんな目に合うのはごめんだし……。

 ……でも、背に腹はかえられぬとも言う。接触してみるしかないか。

 鬼が出るか蛇が出るか。確かめてみるとしよう。

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