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悪役皇女は何が何でも生き残りたい!  作者: 星野光
第一章 環境を改善したい!
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第25話 パーティーに参加してみる 2

 馬車で一悶着あってから、私たちは会場入りする。

 なんか、パーティーが始まってもないのに疲れている気がする。ここからが本番だというのに。


「行くぞ、アンジーナ」

「はい、殿下」


 そして、クレイルは、なぜか馬車に乗ってからずっと、不機嫌なままだ。私、何かしましたか?

 ひとまず、皇太子殿下と呼ぶなと言われたから、殿下と呼んではいるけど……やっぱり、気に入らないのか?でも、注意はしてこないし……

 これは、パーティー中でも、気が抜けない。

 皇帝や貴族たちだけでなく、クレイルにも注意しないといけなくなってしまった現状に、私はげんなりとした。


 私は、クレイルにエスコートされながら会場入りする。会場は、私とクレイルが一緒に入ってきたことでざわついていた。

 無理もない。貴族たちだって情報通で、私が皇宮でどんな扱いを受けているのかなんて知っている。それなのに、クレイルがエスコートしているのだ。ざわつきもするだろう。

 すでに皇帝と皇后は入場していたらしく、皇帝は偉そうに玉座に座っている。あー、腹立つ。

 近くにいた給仕からグラスを受けとる。

 私たちが皇帝と皇后に並ぶように立つと、皇帝も立ち上がった。


「クレイルとアンジーナの社交界デビューに集まってくれて感謝する」


 ああ、そういえば、私も社交界デビューか。対外的にとはいえ、ちゃんと私のこともお祝いしてくれるのね。

 まぁ、普段は名前すらも呼んでくれませんけどね!


「この若き太陽が、帝国の未来を照らすこと願い、乾杯!」

「「「乾杯!!」」」


 皇帝は、もう役目は終わりだとばかりに玉座に座る。

 わたしがちらりと皇帝のほうを見ると、目線で貴族たちのほうを示す。

 これは、あれか。私たちだけであの巣窟に飛び込めってことか。うん。ふざけんな。

 でも、悲しいことに、私は皇帝に逆らえる立場ではない。


「殿下。皆が挨拶をしたいでしょうから、下に行きましょうか」

「……ああ」


 皇帝の玉座が置いてあるところは、貴族たちがいる場所から階段を登った先にある。高座のようなものだ。

 ここに貴族たちが勝手に登るのは不敬とされるので、皇族が降りてきた時にしか、挨拶はできない。

 別に、嫌ならずっと上にいればいいのだけど、それは皇太子としては問題だ。そう、皇太子としては。

 私は当然、下になんか行きたくない。銀髪を忌避するような貴族たちと仲良くお話しなんてできるわけがない。だが、心なしか、皇帝に早く行けと後ろから睨みを利かせられている気がする。

 早く行かなければ、私の命が危うい。

 下に降りた私たちは、待ってましたとばかりに貴族たちに話しかけられる。


「皇太子殿下、皇女殿下、この度はおめでとうございます!」

「もう社交界デビューをなさるとは……!」

「私はエーレ子爵家の……」

「待て、私が先だ!」

「お前は子爵だろう!ここは私のような伯爵家が先に……」


 最初は私たちへの祝いの言葉だったのに、だんだんと誰が私たちに挨拶をするかの争いになり始めた。

 クレイルも、どうするべきかとおどおどするばかりだ。仕方ない。ここは私が一肌脱ごう。


「私も殿下も、皆様の声を一度に聞けるような耳は持っていませんわ。ですので、どうぞ身分順に」


 私がそう言うと、途端に言い争う声は少なくなるが、納得はいっていないようだ。まぁ、この提案に乗るとなると、必然的に子爵や男爵は後回しになる。

 それを銀髪の皇女が言っているというのも、納得のいかない理由だろう。

 同意を求めるように、私がクレイルにアイコンタクトを送ると、はっとなったクレイルは、私の言葉に同調する。


「そうだな。レオノーレ伯爵だったか?そなたから聞こう」

「は、はい!皇太子殿下、皇女殿下。この度はおめでとうございます」


 皇太子が命じたからか、伯爵も意気揚々と話し出す。

 皇太子が命じてしまえば、たとえ皇女が発案したことでも、貴族たちは文句は言えない。

 いや~、クレイルの立場はありがたい……と、思っている場合ではない。

 伯爵が祝いの言葉を述べてから、話が続かなくなっている。うまく話題を切り出せないようだ。

 皇帝がサポートを求めた理由が、なんとなくわかった。


「レオノーレ伯爵の領地は、絹製品が有名でしたね。どんなものがあるのでしょうか」

「はい。ドレスはもちろんのこと、クッションやソファなどの家具もーー」


 私が話題を振ってみると、伯爵は嬉々として話し出す。

 レオノーレ伯爵は、別に避ける必要はないが、積極的に関わる必要もない。ただ、皇帝派ではあるので、好印象を持たせておくことに損はない。

 自分の領地の特産品を知って貰えているというのは、間違いなく好印象を持たせられるはずだ。


「そういえば、私の部屋にも、レオノーレのクッションがあったな。気に入っているぞ」

「ありがとうございます」


 私が絹製品とヒントを出したので、クレイルも思い出したようだ。

 よかった。資料に皇宮で使われているクッションの産地ですと書いておいて。

 一応、皇宮で使われている製品がどこのものなのかは、ルークやアニーなどに聞いておいたんだよね。話題にできると思って。

 レオノーレ伯爵は、そのまま機嫌良くその場を後にした。

 よし、この調子でこの場をなんとか乗りきるぞ!

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