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悪役皇女は何が何でも生き残りたい!  作者: 星野光
第一章 環境を改善したい!
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第20話 皇子と意見交換をしてみる 2

 私は、皇子といろいろと話した……いや、私が本の内容を噛み砕いて、皇子に説明したというほうが正しいか。


「……つまり、アロス・マーシャは、全ての生き物は魔法を使えると考えているのか」

「ええ、生きとし生けるものが魔力を持っているのは周知の事実。でも、魔物以外には人間だけしか魔法が使えないことに疑問を抱いたようです」


 私も、教えながら振り返るところで、改めて疑問に思う。

 確かに、なんで人間だけが使えるのだろうか。いや、正確には、なんで人間と魔物だけなのか。

 魔物というのは、魔法が使える人間以外の生物の総称だ。

 そのため、動物みたいな姿のもいれば、植物の姿をしているのもいる。中には、人間とそっくりな姿をしたのも……

 その魔物は、神学では今は退治された魔王が生み出したのが元とか言われているけど、それもどうなんだかといった感じ。

 仮に、魔王がいて、それが魔物というのを生み出したのだとしても。それはそれだ。魔物というだけで討伐対象になってしまうのはどうかと思ってしまう。

 この世界では、それが当たり前なのだから、仕方のないところもあるのかもしれないけど。


「なら、なぜ人間だけが使えるのだ?」

「他の生き物たちに、人間と同等の知能がないならではないかとのことです。魔力を持っていても、それを魔法にするだけの知能が」


 魔法というのはイメージだ。生み出そうとしているのは、どんな見た目をしていて、どんな現象を起こし、どんな影響を与えるのか。

 例えば、水というのは、普通の動物や植物たちは、生きるための液体くらいの認識だろうけど、人間はもう少し深く考える。

 水は冷たくて、どんな形にもなれる。冷やせば氷になり、温めればお湯になる。火にかければ、火が消える。

 そんな人間からすれば当たり前だろと思うようなことでも、他の生き物たちは、そこまで深く考えることはない。それが、魔法を使えるか否かの違いではないかと、アロスは述べている。

 逆に言えば、それを考えられるだけの知能があれば、どんな生き物にも魔法が使える。


「……なら、魔物というのはーー」

「皇太子殿下。あまり、口にするものではありません」


 これ以上を続けさせるわけにはいかない。あの教師の反応通り、アロスのこの本は、異端でしかない。この本がここにあるのも、まだ前世を思い出す前のアンジーナが、教師たちにいろいろな学術書を求めてきたからだ。

 もちろん、このことは皇帝の耳には入っている。皇帝の許可が降りたからこそ、アンジーナは手に入れることができたのだから。

 でも、教師も内容を詳しくは把握していないのだろう。内容を知っていたのならば、こんなものを私に与えるとは思えないし、わざとだとしても。こんな、この世界の根本的な考えを変えかねないものなど。これは、それくらいには危険なものだ。禁書認定されてもおかしくない。

 ……よくよく思い出してみれば、こんな本をアンジーナは何冊か持っている。

 禁書は、内容によっては、持っているだけでも死刑に値することもある。少なくとも、邪魔な皇女を処分するには、充分すぎる理由だ。

 私のど阿呆!!今の今まで、皇女宮に特大の爆弾があることに気づかないなんて!いい機会だ。今すぐ処分しなくては!


「……こちらは、処分しましょう。禁書扱いされる可能性があります。知らなかったとはいえ、所有者は私ですから、陛下にお話いたします」


 黙って処分するよりは、皇帝に話すほうがいいだろう。やましいことがあると取られてもおかしくない。


「……それなら、私が父上にお話しする。私が与えたことにでもすればいいだろう」

「……!」


 正直、驚いた。皇子が、クレイルが、私のためにここまでしてくれようとするなんて。

 でもーー


「いえ、私がお話いたします。私が自らお話しすれば、陛下も慈悲を下さると思いますから」

「……!」


 確かに、私が皇帝に言うよりも、皇子がそのように伝えるほうがいいだろう。皇太子の下賜品を断ることなんてできないので、大義名分ができる。

 でも、クレイルが私とまったく交流していなかったのは、皇帝が一番よく知っている。そんなのに引っかかってくれるほど、あの皇帝は甘くない。

 クレイルにはそれで納得したような演技をしておいて、後日に私に尋問をしに来るだろう。それなら、私が最初から話しておくほうがましだろう。

 今までで、一番身の危険を感じるけど、やるしかない!やらねばジ・エンドなのだから。せめて、牢屋にしばらく閉じ込められるとか、それくらいで済むのを祈るしかない。


「では、この本を持って、陛下の元をお訪ねしなければなりませんので……」


 直接、帰れと言えない私は、言外に伝える。

 クレイルも気づいたようで、「ああ、わかった」と言って、席を立った。


「父上には、私からも進言しておくから、頑張ってくれ」

「はい。ありがとうございます、皇太子殿下」

「ーーないか」


 私が頭を下げると、クレイルがボソッと何かを呟く。「何かおっしゃいましたか」と聞き返したけど、「なんでもない」と返されてしまった。

 そして、そのまま私の部屋から出ていく。

 最後にクレイルがなんと言ったのか気になるけど、今は皇帝にどのように話すかだ。

 久しぶりに、気を引き締めないと。

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