第7話 腹筋破壊で勇者死す!?
魔国に来て初めて城下町を歩いた
建築物や売られてる品々を見るにやはり文明レベルは人類には劣っているようだ
だがその反面魔法アイテムは充実していた
戦闘に使用する物以外に生活用品まで揃っているのには驚いた
文明とは科学の進歩とともに発達する
魔国は魔法が進んでいる代わりに文明の発展が遅れているのかもしれないと感じた
魔法はご都合主義とまでいかないが、それでも結構万能だと思う
不自由があれば知恵でそれを打破しようと考える人間との差はここにあるのかも知れない
魔王軍は日々領土を奪取するべく計画し、訓練を行っている
全ての魔王軍が魔王城にいるわけではなく各地にも拠点がある様だ。
幹部クラスは魔王城に自室があるようだが、基本的に魔王城と各地の拠点を行き来しているようだ。
それをスムーズに行えるのは【ゲート】と呼ばれる移動魔法があるからだろう
街の散策中、思い切って住人たちに声を掛け話を聞いた
最初は緊張したが何故か人間相手よりも気軽に話せる
人間のように本音と建前という概念が無いのかもしれない。そう感じた
魔王の評判もすこぶる良い。
力は幹部に劣るも、人望と知恵は魔王軍の中でも秀でている事が分かった
「しかし、魔法アイテムって面白いな。呪いを発動する物から掃除に使う物、攻撃に使う物。結構多岐に渡るんだな」
色々な店を見て回り自分の知らない商品を見つけるたび心が躍る
魔法アイテムについては、なかなか面白い話も聞けた
この世界にはダンジョンという物が時折出現するらしく、中では未知のアイテムも発掘されるようだ。
中には魔物が出るが魔王でも支配する事が出来ないらしく、侵入者を迎撃する防御機能みたいなものらしかった
「この辺にはないのかな?後で聞いてみよう」
一日かけて領地を見て回ったがいわゆる”スラム街”のような場所は酷かった。瘦せ細った子供の魔族を多く見かけた。魔族の中にも貧富の差はある様だ。
生まれつき魔力が低く力が弱い者は魔族では身分が低い。
全体に行き渡るには食料が足りないのだろう。
一日も早く領地を拡大しないといけないな。
視察をしながら一軒の酒場に入ってみた。
元居た世界で言うなら”キャバクラ”のような場所だ
唯一違う点は隣に着く女の子は皆化け物。
しかし、他の客を見ていると皆、”かわいい”とか”綺麗だ”とか言っていた
どうも本気でブスだと思っていないようだ
逆に僕は本当にモテた。
こんなに”カッコいい”とか”いい匂い”なんて言われたのは生まれて初めてだ
改めて感性の違いを感じた
それと同時に僕は気づいたのだ。
(感性が違うってことは、魔族にとって可愛い子は僕にとってブス。つまり魔族にとってブスなら僕にとっては……)
僕は今後魔王軍の実力や侵攻の内情などを調べながら”魔族にとっての不細工”な女の子を探すことに決めた。
魔王城に戻り、書庫の本を開いてみた
書かれている文字は見た事がない物だったが何故か意味は理解できた。
これは召喚勇者の固有スキルなのかもしれない
”魔族の歴史””魔族の生態系””非道な人間の所業””呪われたアイテム集”など結構面白そうな本が多い
「とりあえず呪われたアイテム集は部屋に持って帰ろう」
本を脇に抱え書庫を出た。
自室に向かい歩いていると正面から、魔王軍第五師団長の蟲王が歩いてきた。
見た目は様々な虫を合わせたような外見で腕は6本あり2本はカマキリのような鎌、二本はまんま百足。二本は指が三本付いた人間の様な手。顔はカブトムシのような立派な角が生えていた。
「コレハユウシャドノ」
「あ、えっと第五師団長の…」
「ナノッテイマセンデシタネ ワタシハ”バルサン”です」
「えっw いやバルサンって」
思わず吹き出してしまった。蟲の王がバルサン。自分の名前で息絶えちゃうーーーなんて考えたら笑いを堪えられなくなった
「ドウシタ?ナニカオカシイトコロガアッタカ?」
当然、僕の世界でのバルサンの意味など知るはずもない
しかし偶然にしても笑える
「いやいや、素敵な名前だなと思ったんだよ」
気を抜くとまた吹き出してしまう。必死に僕は堪えた
「ソレハウレシクオモウ。マオウサマカラハイメイシタナマエ」
魔王のネーミングセンスに思わず心の中でナイスーーーと叫んだ
「そういえば珍しいですね、城で見かけるの」
「マオウサマニヨウガアリサキホドキタ」
「そうか、じゃあ僕は部屋に戻るからまたね!バルサン」
自分で呼んでまた吹き出しそうになった。
「ウム、マタアオウ」
バルサンは長い廊下を歩き始め暗闇に消えた
頭の中で”バルサン”の文字と姿がグルグル回る
僕はツボに入ると中々抜け出せない。
「まずいな。他の事考えて忘れよう」
僕は頭の中で数を数え始めた
「1、2、3…匹、ゴキが4匹、ゴキが5匹ってヤバイ!余計つられてるじゃん」
笑いすぎて痛くなった腹筋を抑えながら息も絶え絶え部屋に戻った。
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まだ書き始めですが自分の思い描く世界観を表現できるように頑張っていきます
これからの展開にご期待ください
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