第26話 人の優しさ
流は『認識阻害の仮面』を外す
シャルルは驚愕した
「な、なんと!!」
流は顔を見たシャルルが豹変する覚悟をしていた
いくら先程まで親しくしていたとしてもそれは、『認識阻害の仮面』でこの醜い顔を隠していたからだ
今は晒している
「K様!そのアイテムは『認識阻害の仮面』ではありませんか!!」
シャルルの反応に流は予測していなかった為思わず困惑した
「あ、いやあの、僕の顔が、その」
「顔?あぁ顔ですか。そんなの千差万別、商売には関係ありません。それよりK様!その仮面お譲り頂けませんか!?」
シャルルは目を血走らせ流に詰め寄った
「あっ、これは、その…どうしても必要で」
「そうですよねぇ」
シャルルは落胆の色を隠せない
「すいません。興奮して話がそれました。それでその仮面を外す事と魔族を助ける意味は?」
「いや、実は、僕は召喚勇者で、魔王討伐に行ったんだけど、各地の村や町でこの顔のせいで尊厳を踏み躙られて、そしたら魔王がイケメンて言ってくれて、あの魔王軍に寝返って…人間をその」
「なるほど。大体はわかりました。つまりK様は王国に反旗を翻したという事ですね」
シャルルの要約は間違ってはいない。
だがまだ王国に反旗を翻したとも自分で受け入れてはいない
「まぁそんなとこです。それで捕まった魔族は王都に連れて行かれて奴隷にされるかもと思って。なんとか助けたくて」
「お話はわかりました。全てを聞いた上で、ご協力はお断りします」
シャルルの決断は勿論だ。
王国軍に捕まった魔族を逃す手伝いをしたともなれば死罪だってあり得る
「そうですよね。すいません忘れてください」
流は『認識阻害の仮面』を再び付け直し、帰ろうとした
「あっK様、お待ちください」
「どうしました?まだ何か?」
「いえですから、ご協力はお断りしますが、商いとしてなら話は別です。もっと簡単に言うなら、タダではお受けしませんという意味です」
シャルルの言葉に驚きと戸惑いを隠せなかった
「でも、僕の顔こんなに醜くてその...」
言葉が続かない
「K様。顔の醜さと、K様の人柄をイコールにしてはいけません。容姿は生まれ持った物です…変えようがありません。しかし心は違う。いくらでも帰られます。私は商売を通して人間の心の醜さを幾度も見てきました。K様にはその心の醜さを感じません。もっと自信を持ってください。それがいつか顔にも変化を及ぼします。もしK様の顔が自信で醜いと思われるのなら、それはK様自身がそう思っているからだとも言えます。僭越ながら…」
シャルルの言葉に涙が溢れてきた
止まらない
素の状態で人から優しさを受けたのは生まれて初めてのことだった
シャルルの目はしっかり僕の目を見ている
嘘は無いと信じさせてくれる目だ
「さぁ、それでは商談といきましょう」
シャルルは笑顔で僕に言った
「えっと、うぐっ…どのくらい、うぐっ、有ればいいです、うぐっ、か?」
涙でグチョグチョになった顔聞いた
「そうですね。正直かなり危険な橋を渡るので、できればこの位」
シャルルは指を一本立てて見せた
「えっと100万?」
シャルルは首を横に振り口を開く
「10億です」
提示された金額に驚嘆したが、でもこの金額でも安いくらいだとも思った
「でも、すいません、お金がそこまで」
「もちろん、代替物でも構いません。それだけの価値がある何か」
流は考えた。
多分シャルルは『認識阻害の仮面』が欲しいのだろう。それに見合う魔法アイテム…
「あっ」
一つのアイテムを思い出した
「このアイテムどうでしょうか?」
僕は村で見つけた『霧の魔石』を渡した
「これは?」
「まだ鑑定してないので詳しくはわからないんです」
「なるほど…それでしたら私が鑑定してもよろしいですか?」
「えぇ!シャルルさん鑑定できるんですか!?」
「もちろんです。この力のおかげで商人としての私があります。もちろん知っているのは少数ですよ」
シャルルは僕にそういうとウインクして見せた
「それでは、【鑑定】」
魔石が光る
「なっ。。。なんだこれは!!!?」
シャルルは驚きすぎて目がこぼれ落ちるほど見開いていた
「K様!!これ、本当にいいんですか!!?」
「えぇ、あの、はい、結局どんな力が?」
「あぁそうでしたすいません。この魔石は『絶界の濃霧』と言って、発動した場合、外部から霧の中に絶対に侵入できなくなる超レア級アイテムです!」
「それそんなにすごいの?」
「金額にしたら50億億、いや80億はくだらない品物です。本当に宜しいのですか?」
流は金額に驚いたが、使う予定もなく、背に腹はかえられぬと思い首を縦に振る
「なんてお人だ…。わかりました、このシャルル、全面的にK様に協力させて頂きます!」
シャルルは手を差し出した
お互い強く握手を交わし、その後の動きを伝えた
シャルルに裏切られるかもしれない
その不安はある
しかし今回は信じてみようと思った
宿に戻り夜中に備えて眠る
成功を信じて…




