第24話 捕らえられた魔族
見張りはいたが、気づかれていない
扉をどのタイミングで開けるか探る
(透明化の時間は有限だ…頼む早く隙をくれ)
しかし、チャンスは訪れない
(仕方ない【ストーンバレット】極弱ショットだ)
建物の裏の塀に向かって放つ
カッ、コンコンと音を立てる
予想通り立番していた兵士が気づいた
「誰かそこにいるのか」
兵士が裏手に回る
(チャンス)
そっと扉を開けて中に侵入できた
中に入ると部屋ではなく、地下に続く階段があるだけだった
(なんだここ)
階段を恐る恐る降りる
真っ暗だが、階段の先にわずかに光が見える
慎重に一歩一歩進む
下に降りるとそこには、地下に掘られた空間があった
牢屋として使われているようだ
牢の中には罪人達が捕らえられている
みんな痩せ細り見窄らしい風態だ
一個一個の牢を確認して行く
通路の突き当たりに、頑丈な鉄の扉を見つけた
扉には覗き窓が小さく設けられていた
その扉の前にも兵士が立っている
息を殺し、足音に気をつけながら兵士の横を抜ける
覗き窓をそーっと開くと、中には魔族が捕らえられていた
ゴブリン族、オーガ族、夜兎族、獣人族など後はちょっと種族がわからないが、数を数えると11人の魔族がそこにいた
(この子達は、まさかこの前の村の生き残り!?)
一旦地上に戻ることにした
考えも無しに助ければ逆に、魔族の子達の命が危ない
地上に戻り扉をゆっくり開ける
まだ兵士は気付いてない
慎重に扉を開けて外に出た
同じようにそーっと扉を閉める
『透明化の指輪』を見るとまだ半分くらいの光は残っていた
(後30分弱...)
とりあえず宿に帰ろうと『漆黒の翼』を出す
すると正門の扉が開き一台の馬車が表に出ていった
(こんな遅くにどこ行くんだ?)
馬車が立ち去り門が閉まると見送りをしていた兵士達が大きな建物の方へ戻って行く
...何か話している
「クラウド様自ら王都へ搬送の護衛に向かわれるとは、先ほどの荷はそれほどまでに重要な物なのか?」
「あぁなんでも極秘事項だそうで。相当重要な物みたいだぞ」
光明が差した
透明化していても、僕の存在を感知する厄介な奴が今は不在だ
クラウドは間違いなく駐屯地のトップだ。
(奴の自室に忍び込める)
流は急いで建物に入り、階段を駆け上がる
四階のクラウドの部屋に入ろうとしたが、鍵がかかっていた。
(そりゃ鍵くらいかけるか。)
建物内部に鍵がある可能性も有るが、限り無くゼロに近いだろ
壁を触ってみる
木製ではなく石のような材質だ
(これならもしかして土操作の魔法が効くかも?)
試しに壁に魔力を流し支配してみる
(おっいけそう。)
流は土属性の魔法はマスタークラス
土に属する物、石、砂、を魔法で生み出す事も操作する事も可能だ
石の壁を操り、一部を砂に変える
サラァァァ。石でできた壁がサラサラに崩れて消える
(よしうまくいった!!)
作った抜け穴をくぐり、クラウドの自室に忍び込むことができた
早速机に向かう
整頓された机には書類一枚出ていない
几帳面な性格だと一目でわかる
机の引き出しを開ける
(ない)
2段目
(何もない)
3段目
ーーガチャ
(くっまた鍵か)
指輪の効果継続時間を確認する
そろそろやばいかもしれない
脱出の事も考えて一旦透明化を解除する
(クソ。破壊するか??)
しかし後々バレた時に面倒くさい
机は諦め部屋を物色する
何もない…
部屋をぐるりと周り再び机を見ると、傍にゴミ箱らしき物が置いてある
中を確認すると一枚のクシャクシャにされた紙があった
拾い上げ広げる
ペンでぐしゃぐしゃに殴り書きして消してあった
読める部分はある
ーーーー魔ーーーー抗は激ー、ーーーー捕ーーー部ーーーーーーー即座にーーー派遣したが、魔族ーーーーーーーー魔法アーーーーーーーー入ーーー出かーー
解読できた部分はこれだけだ
だが十分だ
間違いなくここの軍は魔族の村に行ってる
牢にいる魔族を助けようと決めた
部屋を出ると砂に変えた壁を元に戻す
再び『透明化の指輪』を発動して一気に脱出する
一階まで駆け降り扉を開ける
外にいた兵士が扉の開いた音で振り返ったが透明化している僕は見ることができない
突然独りでに開いたように見えたのだろう
兵士が首を傾げていた
『漆黒の翼』を発現して一気に飛び上がる
上空まで数秒できたが次の瞬間、『透明化の指輪』の効果が切れた
間一髪のところで脱出に成功した
そのまま宿に戻り作戦を練る
数は11人
1人で救い出してもその後安全な所まで運び守る自信はない。
その時、旅に出る時魔王にもらった『ヘルツクリスタル』を思い出した
『魔法のバック』から取り出す
「確か魔王の持つ『ヘルツクリスタル』に共鳴して連絡取れるんだよな? 携帯って言うより、トランシーバー的な感じだな」
魔力を込めてみる
『ヘルツクリスタル』が薄い光を放つ
どうやら使えたようだ
使い方がわからないのでとりあえず呼びかけてみた
「魔王聞こえるか? こちら勇者だ」
反応が無い
何度か声をかけてみることにした…




