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第9話 ダンジョン初体験 

いつもならパーティーメンバーがいるし、魔法を使って戦う。


しかしこの先どれだけ長いのかわからない。


今は魔力を温存しようと思い近接戦闘で倒すことに決めた


三匹の先頭にいた魔物が飛びかかって来た


剣で受け止めては後方に控えた魔物に狙われる。


素早く横に動き攻撃を躱す。同時に走り出し後方に控えた魔物に切りかかる


短足な僕でもこの世界では勇者だ。一歩で魔物の側面に移動した。魔物は(りゅう)の動きを追えていない。


「まずは一匹!」


振り下ろした剣は魔物の胴体を切断した。血が辺りに飛び散る


仲間がやられたことに気づいた残りの一匹が向きを変えるために急停止する。だがあれだけの速度だ。止まらず数メートル滑る。そこを狙いまた刹那に距離を詰める。魔物が完全に停止して向きを変えようとした瞬間を狙い剣を突き刺した。


声を上げる間もなく絶命した


先頭で襲い掛かって来た魔物が逃げようとしていたのが見えた。


持っていた剣を投げる


背を向けて逃走していた魔物に刺さり全ての魔物は絶命した


「ふぅ。久々で緊張した」


投げた剣を取りに魔物の下へ向かう


刺さっている剣を抜き取り一振りして剣に着いた血を払った。


死んだ魔物が地面に溶け込んでいく。どうやら死ぬとダンジョンの一部に戻るようだ


魔物が倒れていた場所に光る石を見つけた


手に取ると微量の魔力を含んでいた


「魔石か?ダンジョンの魔物からも手に入るのか」


念のため持ち帰ろうと思い魔石を腰につけたポーチにしまった


他の二匹が倒れていた場所も確認したが同じように魔石が落ちていた


「ドロップアイテムってことね。外で魔物を倒した時は、魔石なんて出なかったもんな。なんかダンジョンぽい!」


初ドロップアイテムと無傷で魔物を倒した達成感で(りゅう)は悦に浸っていた


「こんな物で満足していてはダメなんだった。”目的の物”を早く見つけなきゃ。待っててね~呪われた隷属の首輪ちゅあ~ん」


妄想が膨らみテンションが上がっていた


スキップをしながら浮かれて歩を進める


ーガコッー


足音で何か作動する音が聞こえた


(りゅう)が立っていた場所へ天井が勢い良く落下した。


「……ふっふっふ。はーっはっはっは!無駄無駄!土魔法のプロフェッショナルな僕にこんなトラップなど無意味だぁ!」


土魔法でとっさに穴を開け何事も無かったかのように落ちてきた天井から出てきた


ダンジョン内で僕は無敵だ!


腰に手を当て高笑いしながら歩く


―ガコッ―


またトラップだ


前方から無数の矢が飛んでくる。左右に逃げ道は無い


だが余裕の表情で指をクイっと上に向け唱える。【アースウォール】それに呼応するように土の壁が現れ矢をすべて防いだ


「ビバ土魔法!余裕だぁ!我が使命を邪魔できる物などこのダンジョンにはなーい!」


調子に乗った勇者はその後も順調に階層を降りて行った


地下一階から地下四階までは特に変化は無かった。


宝箱も特に見当たらず階段を見つけるのに少し時間が掛ったくらいで魔物の強さも大したことない


地下五階に降りる階段を見つけた


階段を下りていく最中にズルズルと音が聞こえる。それもおびただしい数の何かが地を這う様な音だ


「なんだこの音?」


階段を降り切る前にフロアの様子を探った


「暗くて見えないなぁ」


持っていた松明を音のする方へ投げた


明かりが入りなんとなく全体が見えた。そこには蛇の魔物が大量に重なり合い蠢いていた


「なんだあれは。百匹とかそんな単位じゃないぞ」


そこには数千の蛇が折り重なり壁のように高くそびえていた


「うげっ。気持ちわるい」


光に照らされた事で驚いた魔物は動く速度を上げガラガラと声を発して警戒心を露わにしていた


「魔法でやるしかない」


蛇が重なり合う箇所に【ニードルランス】を唱えた


地面から数百を超える無数の細かな土のヤリが現れ蛇の魔物を串刺していく


さらにその魔法に上書きをした


【ニードルランス】


先ほどの土のヤリのから更に細かな棘が現れ、さらなる追撃を加えた


「全然数減ってないや」


余りに多い敵の数に、今放った魔法では付け焼刃にしかならなかった


「仕方ないか。MPを温存したかったけど上級魔法でやるか…」


(りゅう)は意識を集中し魔法を発動した


「【アースコクーン】」


蛇を中心とした周りの地面が盛り上がり、蛇達を包み込む


さらに上書きする


【アースインプロージョン】


かざした手を握り込むと、蛇達を包み込んだ土の繭は、中央へと圧縮され、中いる蛇達を押し潰した


「はぁ、魔力消費多いなぁ」


思わずため息が出る


「こんな時に仲間がいたら…」


蛇達が蠢いていたその下に階段があった


僕は辺りに生き残りがいないか確認しながら階段に向かった


蛇達は土で押し潰してしまった為ドロップアイテムは何も取れなかった


「費用対効果悪いなぁ」


少し落胆しながら次の階層を目指した





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― 新着の感想 ―
[良い点] ビバ! が癖になりそうです。 [一言] トントンとテンポ良く降りて来ましたが、続きは何かありそうですね。
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