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誓約龍魂バハムートセイバー  作者: 宮下龍美
第四章 学園青春ライフ
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問題児たち 3

 龍太とハクアとローラにハイネスト兄妹を加えた五人は、教室のある本校舎を出た後、その北側に位置する第三校舎へ足を運んでいた。ここは教室の類がなく、広々とした食堂にカフェなどが数店舗、学園内にいくつかある図書館のうちの一つとかなりの数の資料室がある校舎だ。


 行き先を決めたはいいものの、講義の開始までも時間がある。先に腹拵えをしようということになった。


「異世界魔術は専攻してるやつが殆どいないんだ。学園長の気が向いた時にだけしか講義を開かないし、学んでも仕方ない、って面もあるしね」

「せやけどキリュウアカネの名前は結構知っとるやつもおるでな。なんせ魔闘大会でえらい目立っとったし」

「かくいう僕たちも、君や彼女の魔術を見て初めて興味を持ったよ」


 第三校舎の中でも特に広い食堂で各々昼食を摂りながら、この後向かう先で行われる朱音の講義について話していた。


 元々は学園長でありこの学園で唯一の異世界人だった小鳥遊栞が行っていた、異世界学という講義。

 主に異世界の魔術や異能、そこに付随する地球の歴史についてを学ぶ講義らしい。


 異世界ではあまり食べる機会のない白米を焼き魚をおかずに口へ運びながら、龍太は二人の言葉に首を傾げる。


「ていっても、二人と戦った時は魔術なんてほとんど使ってなかっただろ?」

「すぐ変身してしまったものね。一回戦で概念強化を使ったくらいかしら?」

「そうそれ、その概念強化ってやつ」

「あれ意味わからんのよな」


 腕を組んで唸るソフィアは、魔闘大会でバハムートセイバーとまともに殴り合えるくらい肉弾戦が得意だ。つまりはそれだけ、強化魔術にも自信があるということ。


 天才の片割れでもあるソフィアをして、概念強化は意味のわからない魔術。

 龍太は朱音の持つ『繋がり』の力と自分の持つ魔王の心臓(ラビリンス)を使っての裏技で、概念強化を支えるようになっている。そのためにあの魔術が具体的にどんなものなのか、というのは説明できないのだ。


「強化魔術はどれだけ強いものでも、使用者の肉体的なスペックに依存するものなんだよ。でも概念強化は、その肉体スペックごと底上げする。こっちの世界ではまず見ない魔術なんだよ」

「たしか、肉体そのものではなく概念に作用する、走るや殴るといった行動そのものに働きかける強化、だったかしら?」


 うどんを食べるローラの説明に、小さな口でハンバーガーにかぶりつくハクアも付け足した。


 概念に働きかけるその結果、通常の強化では得られないほどの強化を得られる。

 そういう風に朱音からは聞いていた。実際に通常の強化と概念強化の両方を使える龍太からすれば、たしかに概念強化の方が遥かに高い効果を得られるけど。それ以外の違いなんて全くわからない。


「異世界の奴らはみんなあんな魔術を使えるのか……?」

「その辺はピンキリなんだよ。アカネお姉ちゃんは異世界でも特に強い方だし、お姉ちゃんのお母さんもすごかったけど、お父さんの方はそうでもなかったんだよ」

「え、そうなの? 俺の住んでる街だとそれなりの有名人だったぞ?」


 朱音の父親、桐生織は龍太の住んでいた街で探偵業を営んでいた。割と何でも屋みたいに扱われていたが、顔が広いしイケメンなこともあって学生たちの間ではそれなりの頻度で話題に上がっていたはずだ。


 有名なことと魔術の腕前は比例するわけでないかもしれないけど、なにせ朱音の父親だ。そうでもない、ということはなさそうなものだが。


「たしかに幻想魔眼も持ってるし魔導収束も極めてるけど、お姉ちゃんたちに比べたら全然なんだよ」

「自分の娘よりも弱いんかいな」

「そのシキって人の評価は色々なところで聞くけれど、どれも残念なものね」

「あー、蒼さんとか朱音さんもなんか言ってたな」


 自分の父親を悪く言うのはどうかと思うのだけど、むしろ父親だからなのか。逆に関係が良好な証とも取れる。


 朱音の父親の話はさておき、異世界、つまり龍太の生まれ育った世界の魔術というのは、この世界の住人から見ても高度なものらしい。ローラの言葉を聞く限りは全てが当てはまるわけでもないのだろうが、天才と名高いハイネスト兄妹が興味を持つほどだ。

 ただその事実だけで、この世界では高い価値を持つ。


「ところで、他にはどんな講義をしてるのかしら?」

「ああ、たしかに。全部回るのはさすがに無理だろうけど、色々見て回りたいもんな」


 昼食のあとはひとまず朱音の異世界学の講義に向かう予定だが、その他にどのような講義が行われているのかも把握しておきたい。

 たしか他の島には研究施設や訓練施設もあるとのことだったし、そちらの方へ顔を出してみるのもいいだろう。


「代表的なのは五つだ。魔導工学、魔導薬学、魔導人体学、魔導情報学」

「それと、戦闘魔術で五つやな。気づいたと思うけど、このうち四つは龍の巫女がそれぞれ研究しとるやつや」

「ローラは魔導薬学なんだよ!」


 魔導工学はアリスが、魔導人体学はクローディアが、そして魔導情報学はエリナが、それぞれ研究を進め、その分野の最先端を走っている。


「僕たちは知っての通り、魔導工学だな。世に出回ってる魔導具を作るには、ここの知識がないと話にならない」

「言うても魔導具によっては、他の知識も必要やけどな。ファフニールの開発には情報学も必要やったし、医療系のもんやと薬学も人体学もいるさかい、どれか一つだけ極めたらええってもんでもないんよ」


 まあ、勉学なんてのは分野問わず往々にしてそんなものだろう。例えば、物理の勉強をするには最低限数学の知識がないといけない、みたいな感じだ。


 それら四つを本格的に学ぶつもりのない龍太は、やはり最後の一つが気になる。


「戦闘魔術って、やっぱりあれか、実際に戦って訓練したりするのか?」

「もちろんするけど、座学もあるぞ」

「げっ、あるのかよ……」

「まあ座学はついでみたいなもんやで。戦闘魔術って言うてるだけあって、いかにして効率よく敵を倒せるかとか、どういう風に立ち回ればええかとか、そういうの教えてくれるねん」


 魔術それ自体は重要ではなく、使えるものならなんでもいい。その講義で学ぶべきは、いかにして相手を無力化するか。あるいは、どうすれば自分の生存確率を上げられるか。

 肝になるのはその二つだ。単純に魔術の技量自体を上げたいなら、それぞれその魔術専門の講義を受けなければいけない。


 たしか、クロは強化魔術を専攻してるとか言っていたから、魔術の系統ごとに様々な講義が用意されているのだろう。


「魔導と魔術、この二つの全てを学ぶことが出来るのが、ドリアナ学園諸島なんだよ、お兄ちゃん」

「そうね。選択次第では、信じられないほど沢山の知識と技術を身につけることができるわ」


 学べる種類は無数にある。普通の学生であれば、六年間をフル活用して最大限の知識を吸収し技術を手にするのだろうけど。

 龍太たちはこの学園に腰を据えて学ぶわけにもいかない。だから、ハクアの言う選択を間違えないようにしなければ。


「教えてくれ、ハクア。俺に必要なのがどの授業なのか」

「ええ、もちろんよ。でもまずは、ちゃんと腹拵えしてからね」


 ハンバーガーを食べ終えたハクアは、まだ食べ終えていない龍太の口元にそっと指を寄せ、ついていた米粒を自分の口に運んだ。

 ローラとソフィアがひゅーひゅーと野次を飛ばし、イグナシオはなぜか龍太と一緒に顔を赤くして視線を逸らしている。


「そういうのは他所でやれよ……」

「兄貴は相変わらず耐性なさすぎやろ」



 ◆



 昼食を終えた五人はドリアナ学園諸島本島のここ、シルフ島内を転移魔法陣で移動し、食堂のあった第三校舎から北に五キロほどの位置にある校舎へやって来た。


 シルフ島には多くの校舎が、学科別に建てられている。その中の一つに異世界学の校舎があり、そこにはかなり大勢の生徒が集まっていた。

 異世界からやってきた魔術師、しかも妙齢の美人が今日から講師を務めるというのだ。普段は異世界学に興味のない連中も、一目見てみようと冷やかし程度に来ているだろう。

 あるいは、新しい講師の実力が気になったり、難癖つけてやろうとか考えているようなやつだっていたかもしれない。


 しかし、教壇に堂々と立つ桐生朱音を前にすれば、全ての生徒が口をつぐんだ。


「凄いな、キリュウ先生……」

「ああ……ただ分かりやすいだけじゃなくて、声が自然と耳に入ってくるような……」

「異世界でも教職に就いてたのかしら。あの人の講義なら何時間でも聞いていられるわ」


 この様に、講義が終盤に差し掛かった現在では、生徒たちが口々に朱音のことを褒めそやす。

 そうなれば当然、お姉ちゃんのことが大好きな巫女様は自慢げに胸を張っていて。


「さすがお姉ちゃんなんだよっ」

「なんでローラが自慢げなんだよ」

「だってローラのお姉ちゃんだもん!」


 血の繋がった姉というわけではないが、まあローラが可愛いので良しとしよう。ハクアも優しく微笑んで、えっへんと胸を張るローラの頭を撫でている。


 実際、朱音の授業はとても分かりやすい。今日は異世界学の基礎を改めて、ということだったが、まず魔術や異能といった存在の成り立ちから、地球の歴史との関連性を紐解く授業だった。

 同じ世界出身の龍太でも初耳なことばかりで、結構新鮮な気持ちで授業を聞けた。

 要所要所で隣の丈瑠もフォローに入っていて、実際に術式を見せたりしている。彼の描く魔法陣はとても美しく綺麗なもので、こちらも多くの生徒が感嘆の息を漏らすほど。


「以上の理由で、異世界の魔術では神話というのが大きな意味を持つの。魔術や魔導が神秘とならず、いつの時代も人々の生活に寄り添っていたこの世界ではまずあり得ない特徴だね。さて、そろそろ時間かな。ここまでで質問は?」


 備え付けの時計をチラと見て、講義の締めにザッと室内を見渡す朱音。一瞬こちらと目が合って、フッと表情を緩ませた。

 それなりの生徒たちが挙手する中、朱音が誰を当てようかと思案していると。


「よし間に合った!! まだ講義は終わってないな!」


 大きな音を立てて、部屋の扉が開かれる。全員の注目を集めながら入室してきたのは、白い髪を角刈りにした背の高い少年。クラスメイトのクロ・ルフルだ。

 三歩下がったところには、パートナーのキャメロットもいる。


「悪いけど、もうそろそろ終わりだよ。えっと、クロ・ルフルに雷霆龍キャメロットだったかな?」

「おお、名前を覚えてくれてるのか。これは話が早い」

「問題児は一通り覚えさせられてるからね」


 肩を竦めながらもなぜかこちらを見る朱音。イグナシオとソフィアは彼女の視線から逃れるように、明後日の方を向いていた。問題児の自覚があるのかよこいつら。


「一応聞くけど、講義ももう終わるってタイミングでどうしたのかな?」

「それはもちろん決まってる。あんたに決闘を申し込みにきた!」

「は?」


 あまりにも突然な発言に、つい声が漏れてしまう。ハクアとローラも、困惑した様子でクラスメイトを見守っていた。

 しかし周りの反応は龍太と違ったもので。どことなく、また始まったよ、みたいな雰囲気があるのはなぜなのか。


「な、なあイグナシオ。もしかしてだけどさ……」

「そのもしかしてだよ、リュウタ。言っただろ、クロはああ見えて問題児だって」

「早い話がバトルジャンキーやねん、あいつ」

「マジか……」


 マジか……だからバハムートセイバーと戦いたいとか言ってたのか……。


 右手で腰の剣を抜いたクロは、その切先を朱音へ向ける。浮かべるのは好戦的な笑顔。全身から強者へ挑戦することへのワクワクが隠せず溢れている。

 対する朱音は、頭痛を堪えるように眉間を抑えて呆れたようなため息を溢し、一言。


「講義の妨害を無視するわけにはいかないんだよね」


 瞬間、朱音の姿が消える。かと思えば、すでにクロの懐まで潜り込んでいた。右足を軸に一回転。回し蹴りが炸裂する。

 少年の体は紙屑のように吹き飛んで、入ってきた扉に背中から激突した。


「ちょ、朱音さんやりすぎっすよ!」

「いや、そうでもないみたいだよ」


 両方の知り合いとしてさすがに口を挟めば、朱音はなぜか少し楽しげに口元を歪める。その言葉と表情の意味が分からずに吹っ飛んだクロを見やると、右手に持っていた剣は粉々に砕け散っていた。


 それはつまり、朱音の蹴りを防いだということだ。


 いや、防ぎ切れたわけではないのだけど、それでもあの速度に食らいつくことが出来ていた。それだけでも驚嘆に値する。


「イテテ……さすが異世界の魔術師だな」

「せっかくの機会だから、ひとつ実践してみせようか。異世界の魔術ってやつを」


 室内全体へ向けられた朱音の言葉は、生徒たちの期待を煽るのに十分だった。席と席の間を悠然とした足取りで歩く朱音を、誰もが目で追う。

 これから披露されるであろう魔術を今か今かと夢中で待ち、しかしそんな生徒たちの誰かが、ボソリと呟いた。


「なんか、部屋の温度下がってないか?」


 それから変化は劇的に訪れる。部屋のあちこちに霜が降り、吐く息は白く、制服の上から腕を摩る者も多い。

 なにより顕著なのが、朱音の魔力だ。

 可視化された魔力が氷の結晶として形を持ち、彼女の周囲で漂っている。これは龍太も知っている氷結能力ではない。圧倒的な魔力で行使される、異世界でも稀有な魔術。


「氷纒」


 その名が世界に刻まれて、三対六翼の氷の翼が顕現した。

 艶やかな黒い長髪は真っ白に染まり、一歩足を進める度、地面に氷結が広がる。


「罰としてちょっと寝てなさい」


 腕を掲げただけで、クロの全身が氷の檻に囚われた。迎撃しようとして中途半端な体勢で氷漬けにされた少年に、氷の女王が語りかける。


「私の動きについて来れたことは評価してあげる。今度は講義中じゃなくて、ちゃんとした場所で挑んでくることね」



 ◆



 朱音の講義が予想外の終わりを見せた後、龍太とハクアは、なぜか海の上にいた。


『乗り心地はどうだ、二人とも』

「いいわけないだろ!」


 しかも船とかではなく、ハイネスト兄妹の操縦するシルフィードMarkIIの手の上だ。気を抜いたら眼下の海へ真っ逆さま。乗り心地もクソもあったもんじゃない。

 シルフィードMarkIIの全高は約六メートルといったところ。手の上に人を乗せて飛ぶには心許ない大きさだ。


 こうなったことにはもちろん理由がある。

 朱音の講義が終わった後、氷漬けになったクロを眺めながらこれからどうしようかと相談している時のことだった。学園長の栞からハイネスト兄妹へ、依頼が一件入ったのだ。

 学園諸島近海に魔物が大量発生したから、その対処に向かって欲しい。ハイネスト兄妹以外の上級生も何名か向かわせているが、討伐数に応じてそれなりの報酬は出すとのこと。


 学園長直々の依頼となれば断るわけにもいかないらしく、イグナシオは渋々了承、ソフィアは金を稼ぐと息巻いていた。

 そこで同行を志願した龍太は、たしかにロボットに乗れるかなー、なんて軽く考えていたりもしたけれど。

 こんな乗り方は全く望んでいなかった。


「それにしても、やっぱりすごいわね、このファフニール。原型になった古代文明の機体でも、常に空を飛び続けることはできなかったはずなのに」

「危ないってハクア! 落ちたらどうすんだ!」


 シルフィードMarkIIの指の隙間から海を見下ろすハクアを、龍太は肩を掴んで引き寄せる。意図せず抱き寄せる形になってしまったが、この手の上から落ちてしまうのは冗談抜きで死活問題だ。

 なんでって、バハムートセイバーが強制起動してしまうから。

 そうなったら最後、朱音を呼ぶまで暴走し続けることになってしまう。しかも付近には他の生徒も魔物狩りに出てきているようだし、被害がいたずらに広がってしまう。


 そうならないように立ち回らなければならないが、龍太は朱音や丈瑠のような飛行魔術を使えないし、イグナシオとソフィアはどうしてこんな形で連れてきたのか。普通に船とか用意して欲しかったし、欲を言えば自分もファフニールを操縦してみたかった。


『リュウタ、もうそろそろ予定のポイントだ!』

「いや、どうやって戦えばいいんだよ!」

「わたしたちは飛行魔術は使えないわよ?」

『安心せえ二人とも、とっておきの方法があるで!』


 ほう、それはつまり、天才二人がなにかしらの魔導具を用意してくれているということだろうか。それはそれで楽しみだ。


 しばらくすると、あちこちから戦闘音が聞こえてくる。龍太たちの視界内にも敵の姿は確認できた。

 昨日、学園諸島に来る途中で襲ってきた九つの頭を持つサメ、ヒュドラシャークとかいう魔物だ。


 どうやら昨日の一体だけではなく、かなりの群れが近海に集まっているらしい。


『よし、来たぞ妹! 実験開始だ!』

『ひいふうみい……全部で五匹やな。これやとデータも十分取れるやろ』

「どうするつもりなんだ⁉︎」

『そりゃもちろん、こうするんだよ!』


 龍太の乗っていた右腕が、なぜか動き出す。機械にしてはやけに人間じみたスムーズな動きで、()()()()に入った。

 球はもちろん龍太だ。


「おい、おいおいおい! なんのつもりだイグナシオ!」

『ははははは!! 悪いな龍太、僕たちにバハムートセイバーのデータを提供してもらおうか!』

「お前まじふざけんなよどうなっても知らねえぞ!!!」

「さすがに冗談じゃすまないわよ、イグナシオ!」


 こいつ、最初からそのつもりだったのか!

 魔闘大会で負けたから諦めてくれてると思っていたが、そう思いやつらを信頼した時点で龍太のミスだ。


 丁寧にハクアの乗った左手は微動だにせずそのままで、右腕が回転する。


『科学の進歩には犠牲がつきものやからなぁ!』

『せいぜい僕たちの研究の尊い礎になってくれたまえ!』

「この問題児どもがぁぁぁぁぁぁ!!!」


 小さな体が投げ出され、光の球体に包まれながらもヒュドラシャークに着弾。

 光球が弾けて大爆発を引き起こし、サメの一体はそれだけで海の底へ沈んでいく。


 立ち上る水柱から現れしは、赤銅色の鎧に身を包んだ戦士。失墜(イクリプス)の名を冠した正義のヒーロー、だったもの。


 分かりやすい雄叫びのようなものはない。ただ静かに宙空で立っているだけ。

 それでもこれから始まるのは、蹂躙という名の暴力の嵐だ。

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