表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誓約龍魂バハムートセイバー  作者: 宮下龍美
第三章 英雄と偶像
57/117

魔闘大会、開催 4

 試合を終え、無事に二回戦へ駒を進めることができた龍太とハクア。

 しかし、龍太の表情は沈んだものだ。


 勝てたのはいい。ドラグニアの王様からお墨付きをもらえたのも、棚ぼただったと言える。

 その代わり、バハムートセイバーを使ってしまった。その他の大勢の観客の目などどうでもよく、詩音がその事実を知ってしまった。

 ただそれだけが、龍太の心に後悔を残す。


「リュータ……」

「……ごめん、ハクア。せっかく勝ったんだから、ちゃんと喜ばないとだよな」


 なにか言いかけたハクアを制して、無理矢理に笑顔を作る。心配そうに眉を寄せる純白の少女は、ソッと身を寄せてくれた。

 なにも言葉にはしていないけど、隣にいるからと言ってくれているようで、嬉しい。


「りゅうくん」


 二人並んで歩いていると、正面から名前を呼ばれた。

 顔を上げた先にいるのは、今一番会いたくなかったような、会いたかったような人物。


 大切な幼馴染。東雲詩音。

 傍に青髪の老人を侍らせた彼女は、静かに距離を詰めてくる。


 誤解を解きたい。だから、違うのだと言わないと。そう思っても、言葉は口から出てこない。意味のない吐息ばかりが漏れる。

 詩音の、前髪に隠されたその瞳に見つめられて、心臓の鼓動が加速する。

 悲しそうな、今にも泣き出しそうな、その瞳に。


「りゅうくん、だったんだね……」

「ちがっ……」

「なに、が? なにが、違う、の?」


 強く、睨みつけられる。怒りと憎悪に満ちた、初めて見る幼馴染の表情に、全ての言動が封じられる。


「私たちが、この世界に来た、時に。りゅうくんは、ドラゴンを殺してる、よね?」

「……嘘だろ?」


 たしかに、龍太はこの世界に来たその日、その時、あの雪山で襲われたドラゴンを殺している。

 ハクアと初めて出会い、バハムートセイバーの力を手にしたあの日に。


 でも、詩音の言い方だと、まるで。

 あのドラゴンが、玲二だったみたいじゃないか。


「嘘じゃ、ないよ……だって、そもそも、あの雪山には……私たちしか、人間の反応はなかった、でしょ?」

「そんなことまで知ってるのか……」

「ヘルさんが、調べて、くれた」

「でも……でもっ! あのドラゴンが玲二だって証拠は、どこにもないだろ!」

「私が証拠、だよ」


 徐に、腕の裾を捲る詩音。そこから覗いたのは健康的な肌などではなく。


 鱗だ。

 蛇のような鱗が、びっしりと彼女の腕を覆っている。

 もちろん蛇などではない。今このタイミングで、それを見せる意味など一つしかないのだから。


「お前、まさか……」

「そう、だよ。私も、れいくんと同じ。この世界に来た時、ドラゴンになっちゃった……でも、りゅうくんは、違うんだね」


 衝撃の事実に、思考が纏まらない。

 なぜ、どうして。そんな言葉ばかりが頭の中でぐるぐる回って、すぐそこにいる詩音の腕から、目を離せなくなる。


「ねえ、どうして……? どうして私は、れいくんは、こんな姿になったのに……れいくんを、殺したくせに……どうしてりゅうくんは、人間のままでいるの? どうしてまだ、正義のヒーローなんて、言っていられるの?」

「それ、は……」

「答えてよ……ねえ、りゅうくんっ……!」


 悲痛な叫びが、狭い廊下で反響する。

 なにも言えず、動くこともできず、ただ詩音の叫びを聞くことしかできない龍太を、幼馴染は強く睨め付ける。

 ほんの僅か、答えを聞かせてもらえると期待して。


 でも、無理だ。言い訳のしようがない。知らなかったじゃすまない。

 あのドラゴンを、ドラゴン化した玲二を殺したのは、間違いなく龍太で。だというのに、自分はのうのうと生きていて。それどころか、その事実を知らず正義のヒーローを語る。


 ああ、なんて馬鹿で愚かなやつなんだ。


 自分の夢も、この世界での目的も、全てが遠くなっていく。

 目の前が、真っ暗闇に包まれる。


「それ以上、リュータを虐めないでもらえるかしら」


 けれどその暗闇の中で、美しい純白は、なお強く輝いていた。


 間に割って入ったハクアは、担いでいた銃を手に持ち、相対する二人へ静かな怒りを向けている。


「あなたには、関係ない、でしょ……」

「いいえ、関係あるわ。リュータはわたしにとって、まちがいなくヒーローなのだもの。彼を侮辱するなら、わたしはあなたを許さない」

「なにも、知らないくせにっ……」


 ハクアに殺気が向けられた。その瞬間に、龍太は考えるよりも早く体を動かす。

 腰の剣を抜きながらハクアの腕を引き、入れ替わるように前に出る。剣を掲げると、甲高い金属音が響いた。詩音の持つ二本の小太刀と龍太の剣がぶつかった音だ。


「やめてくれ詩音! なんでハクアに手を出すんだよ!」

「だって、りゅうくんが変わっちゃったのは、その女のせいでしょ……? 大丈夫、だよ。りゅうくんも、一緒に殺してあげる、から……!」

「俺はなにも変わってねえよ! 変わったのは詩音の方だろ!」


 剣を振り抜いて弾き飛ばせば、距離を取って華麗に着地する。

 龍太の知っている鈍臭い詩音からは、想像もできない動きだ。ドラゴン化の影響による、身体能力の底上げ。それだけでは説明がつかない。

 どれだけ身体能力を上げようとも、身体を動かすセンスがなければ宝の持ち腐れになる。鈍臭いというのは、つまり詩音にはそのセンス、運動神経が備わっていたなかったということなのに。


 そのような表面的なものだけじゃない。

 詩音はたしかに思い込みの激しい方だったし、頑固なやつではあるけど。それでも、ここまで苛烈な思考を持つような子じゃなかった。


「ウタネ様、試合前ですので自重を」

「……うん。ごめん、ね、ヘルさん」

「彼らと決着をつけたいのであれば、お互いに勝ち進めばよろしいかと。試合の場で、正々堂々と戦いましょう」


 ヘルに諌められて、詩音は小太刀を鞘に収める。順当に考えれば、最も怪しいのはあの青髪のドラゴンだ。

 しかし、その言動からは怪しさなど感じられない。むしろその逆、詩音のために尽くしてくれているようにも見える。


 柔和な表情からその真意を読み取ることはできず、二人は龍太とハクアの横を通り過ぎていく。


 その背中が完全に見えなくなったところで、龍太の拳から力が抜け、カラン、と音を立てて剣が落ちる。


「なあ、ハクア……どうして、こんなことになっちまったんだろうな……」

「……っ」


 空虚な言葉に、少女はなにも返すことができなかった。



 ◆



『ああーっとぉぉぉ⁉︎ ウタネ選手、ひどい、ひどすぎる! もはや立ち上がる力の残っていないスカーフ選手に追い討ち! 追い討ち! 追い討ち! 二本の小太刀で何度も滅多刺しにしております! 大人しそうな見た目に反して、とてつもない残虐性を秘めていたァァァァァ!! 観客からも悲鳴が上がっております! 一体どこまでやるつもりなんだウタネ選手! 小さいお友達も見てるんだぞ!』



 ◆



 第八試合、詩音とヘルの試合を観客席から見ていた龍太は、あまりの試合展開に言葉もなかった。


 一方的な展開は特筆すべき点ではない。朱音たちだって相手を圧倒しての勝利だったし、他の試合でも少なからず見て取れた。

 けれど、一方的と言ってもまだ足りない、動けない相手に対してあそこまでの追い討ちをしたやつは、ひとりだっていなかったはずだ。


「相性が良かったのかな。剣術とも言えない出鱈目な、身体能力だけに任せた動き。相手のペアは理詰めで戦うタイプみたいだったし、随分やりにくかっただろうね。ああいう動きは先が読めない」


 淡々と解説してくれる朱音の言葉も、龍太の耳をすり抜ける。

 戦闘自体は、すぐに終わった。ヘルは一歩も動かず、詩音のスピードとパワーに任せた乱暴な動きに、相手ペアは一発でノックアウト。そして今に至る。


 未だ倒れた相手に小太刀を突き立てる詩音を、ヘルが腕を掴んで止めた。彼女は眉一つ動かさず敵を滅多刺しにして、止められたことに否を唱えることもなく、小太刀を収める。

 ようやく試合終了のゴングが鳴り、相手のペア、特に詩音が滅多刺しにしていたスカーフとかいう女性は急いで担架に乗せられた。


 物理ダメージは全て精神ダメージに変換される。だから傷を負うことも、血を流すこともない。

 たしかにそれは、人を死から遠ざけるだろうけど。


「まあ、よくて再起不能。最悪二度と目を覚さないかもね」


 ダメージの伝達が変わるだけで、ダメージそのものをなかったことにするわけじゃない。精神に膨大なダメージを負ってしまえば、目を覚さない可能性だってある。


 そんな仕打ちを、あの詩音が行ったということが、まだ信じられない。この目で直接見たのに。


『さて、ここで本日の午前の部は終了です! 残りの八試合、第九試合から第十六試合までは、午後の部となります!』


 実況のそんな声が聞こえてきて、観客席全体が弛緩した雰囲気になる。

 さて、と立ち上がったのは、隣に座っていたジンだ。彼は龍太の肩に手を置いて笑顔を浮かべていた。


「さあリュウタ、昼飯にしよう。せっかく四人とも勝ち残ったんだ、少し早いが、祝勝会と行こうじゃないか」

「ああ……そうだな」


 気を遣わせてしまった。けれど、ジンのその優しさが身に染みる。


 スタジアムを出た一行は、朱音の強い希望により周辺の屋台で昼食を調達して外で食べることに。あちこちからいい匂いが漂ってきて、沈んだ気分とは裏腹に腹の虫は鳴ってしまう。

 龍太は焼きそばとフランクフルトを、ハクアは海老グラタンとゲソ焼きを買った。

 元の世界では屋台の焼きそばといえばソースなのだが、こちらの世界だと塩焼きそばのようだ。


「塩の焼きそばって中々食ったことねえんだよな」

「そうなの? 焼きそばは塩で味付けするのが普通だと思うのだけれど」

「こっちだと焼きそば用のソースがあって、それで味付けしてるんだよ」


 ソースの焼ける香ばしい匂いが今や懐かしい。地元の夏祭りなどでは、商店街のおっちゃんが美味しい焼きそばを焼いていた。


 不意に幼馴染との思い出がよぎって、胸の奥が僅かに痛む。それを見て見ぬふりして、手元の焼きそばを食べた。


「おお、うまっ」


 続いてフランクフルトもパクリ。こちらも肉汁が詰まっていて実に美味しい。


「リュータ、こっちも美味しいわよ。はい」

「あむ……本当だ、屋台でグラタンってのもありだな」


 グラタンを掬ったスプーンをハクアに差し出されて、パクリと一口。これまた美味しい。お返しにフランクフルトを差し出せば、小さな口で頬張るハクア。


「ふふ、美味しいものを食べたら、悩みも吹っ飛ぶでしょう?」

「……っ、まあ、そうだな」


 至近距離で美しい笑顔に直撃してしまい、頬が急速に熱を帯びる。この距離は、いつまで経っても慣れない。


「ちょっとそこー、二人だけの世界に入らないでくれる?」

「ばッ、そんなんじゃねえよ!」


 クレナからのからかいの言葉に、真っ赤な顔のまま返す。しかしクレナだけでなく、他の三人もなにやら微笑ましいものを見た、と言いたげだ。

 見せもんじゃないんだぞ。


「ハクアと龍太くんがいちゃついてるのはいつものこととして」

「どういう意味っすか朱音さん?」

「ちょっと真面目な話をしようか」


 真剣な表情をした朱音が、軽く魔力を動かす。一行の周囲に認識阻害の結界が張られた。これがある以上、周囲は龍太たちのことを認識しなくなる。

 目と耳を誤魔化し、これで今から話すことは外に漏れない。


「龍太くん、詩音ちゃんとなにかあったでしょ」

「……っ」

「ああ、勘違いしないでね。別に隠してたことを咎めはしないから。でも今の詩音ちゃんは、私や丈瑠さん、アーサーの記憶にあるあの子と随分違う。十年も昔の記憶なんて頼りにならないかもしれないけど、性格の根本は変わりなかったはず。違う?」


 出し抜けに、そして立て続けに言われて、龍太は力なく頷く。

 隠しておくつもりはなかった。といえば、嘘になるか。少なくとも龍太は、詩音との件は完全に自分一人の問題だと思っていた。


 それは間違いだと、狭窄した視野と思考では気づかない。


「詩音は、いつも俺たちの後ろをついて歩くような、大人しくて引っ込み思案なやつだった。おまけに鈍臭くて、思い込みが激しくて、そのくせして頑固で……俺の幼馴染は、そういうやつだったはずなんだ……」

「先程試合で見た姿からでは、およそ考えられないな」

「そうね、殺人マシーンかなにかに見えたわよ、あれは」


 歯に衣着せぬものいいに、龍太も頷く。

 ただ相手を倒す、いや殺すことだけに執着した機械のように、表情をひとつも変えることなく、淡々と敵を滅多刺しにする。

 龍太もまさしく、殺人マシーンのようにしか見えなかった。


「どうしてあんな風になったのか、分かってるのかな」

「わたしのせいよ」

「なっ、違うだろハクア! 俺のせいだ! 俺がっ……俺が玲二を殺したから、詩音は……!」


 ハクアのせいなわけがない。それだけは違うと、全力で否定する。

 ハクアは、命を救ってくれた。自らの命も半分犠牲にして、龍太を救ってくれたんだ。


 だから、誰が悪いのかと聞かれると、直接手を下した龍太に他ならない。


「違うの……そういうことじゃないのよ、リュータ……もっと根本的なところで、わたしは……」

「はいはいそこまで、どっちが悪いかって話は今しても仕方ないでしょ。そうじゃなくて、詩音ちゃんがああなってしまった原因そのものの話。龍太くん、詳しく話してくれる?」


 そうして龍太は、この世界に来たその時のことを話した。バハムートセイバーの力を、初めて使った時のことを。そして、先日詩音と再会し、あの時殺してしまったドラゴンが、探していた幼馴染のもう一人、玲二だったとを知ったこと。


「だから詩音は、バハムートセイバーに……俺に、復讐しようとしてる。玲二の仇は、俺だから」

「なるほどね……」


 復讐。

 この世界に来て、何度か耳にした言葉だ。

 家族との未来を奪われたことの復讐。婚約者を傷つけられたことの復讐。


 龍太にはその感情を否定できない。人間なら誰しも、大なり小なり誰かを憎く思ったことくらいはあるはずだ。龍太だって当然ある。正義のヒーローを目指したところで、聖人君子になれるわけじゃない。


 でも、その矛先が自分に向けられると、こんなにも苦しいものだなんて。


「ジン、クレナ、会場の様子はどうだった?」

「今のところは問題なしだな。参加者の中にも、それらしいやつはいない」

「ただ、ウタネって子のことを考えると、どこかに関わってはいるでしょうね。人間のドラゴン化はスペリオルの仕業。だったら、初めて行われたであろうドラゴン化に、やつらか噛んでないはずないわよ」


 龍太が人間のドラゴン化を初めて目の当たりにしたのは、ノウム連邦でのことだ。しかし玲二と詩音がドラゴン化していたと言うなら、この世界で初めて観測されたその現象は、やはり龍太の幼馴染二人なのだろう。


 そして、スカーデッドのひとり、フェニックスはあの時、龍太が運ばれた村へすぐにやって来た。おまけに奴が言っていたことだ、人間のドラゴン化は自分たちの仕業だと。


 スペリオルは赤城龍太の身柄を、その心臓を狙っている。

 だったらやはり、スペリオルが詩音の方にもなにかしらの干渉を行っているのは間違いない。


「さて、龍太くん。君はこれから、どうする? 探していた幼馴染は君自身の手で殺してしまい、もう一人の幼馴染には仇を取ると狙われてる。それでもまだ、君は戦う?」

「ちょっとアカネ」


 きつい言葉を発する朱音をクレナが咎めようとするが、ジンがそれを制した。

 彼は無言で首を横に振り、龍太の答えを待ってくれている。


「俺は……」


 困っている誰かに、手を差し伸べたかった。そのために戦って来た。

 正義のヒーローに、なりたかったから。


 でも、玲二を殺してしまった俺に、ヒーローになる資格があるのか?


 今日、真実を告げられる前から。ハクアの腕の中で涙を流したあの夜から、何度も繰り返した自問自答だ。

 だから、答えは既に出ている。


「それでも俺は、戦う」


 あの夢で見た男の人のような、誰かのためになにかを為せるヒーローになりたい。

 何度も何度もそう思った。そのための努力だって欠かさなかった。己が胸に抱いた夢に、愚直なまでにまっすぐ突き進んで、行き着いた果てがこの結末。


 認められるわけがなくても、現実はいつも残酷だ。

 ヒーローになる資格は、ないのかもしれないけれど。


「戦う理由なら、まだ残ってる」


 それでも、そんな自分のことを、ヒーローだと言ってくれた少女がいる。

 だったら龍太の戦う理由はそれでいい。


 ハクアのために。この美しい純白に恥じない自分でいるために。


 隣に立つハクアを一瞥すると、自然と微笑みが漏れた。

 けれどハクアは珍しく、あるいはここ最近見せるようになった、頬を僅かに赤らめて恥じらっているような表情。


「詩音と戦わないとダメだってなら、覚悟はできてる。あいつの憎しみも、俺の罪も、全部受け止める。それでこそ正義のヒーロー、だろ?」


 問いかければ、全員から笑みが返ってきた。

 正面に立つ朱音は、どこか眩しいものを見るような目だ。


「分かった、だったら私たちは、もうなにも言わない。でも、龍太くんが求めるのなら、いつだって力になるから」

「仲間を大切に、ってのが僕の師匠の教えなんだ。それに、子供を助けるのは僕たち大人の役目だからね」

「ああ、そうだぞリュウタ。俺たちのことも頼ってくれ。俺たちは仲間で、友人なのだからな!」

「火砕龍の力、いつだってあなたに貸すわ。リュウタにはセゼルの件での借りもあるしね」

『微力ながら、私も力を貸そう』

「きゅー!」


 全員からの言葉に、目頭が熱くなる。

 どうにも最近、涙腺が緩くなってしまってダメだ。けれど涙を流すことはせず、浮かべるのは満面の笑み。


「良かったわね、リュータ。わたしたちには、こんなに頼もしい仲間がいる」

「ああ。大事な俺の宝物だよ」


 白い指と自分の指を絡めて、ぎゅっと強く握りしめる。

 それで自分の感情が全て伝わればいいのにと、そう願って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ