幕間 船上にて 3
魔導戦艦。
全長352メートル、排水量82000トンの超巨大な空飛ぶ戦艦。とはいえ、外観は龍太の知っているような海の上を行く戦艦とは少し違っていた。
全体のカラーリングは黒だが、ところどころに紅い線が走っている。艦首は二又に分かれていて、その中央に主砲が備わっている。ブリッジは艦の上部に位置しており、左右両舷には人型魔導兵器ファフニール用のカタパルト。
全体的に、某機動戦士に出てくる宇宙戦艦っぽい感じだ。
動力は当然魔力。
巨大な魔力炉心を積んでおり、常に魔力を生み出し続けている。
そのおかげで最大船速は120ノット。艦の装甲全体には常に魔力が張り巡らされているため、堅牢な防御能力を誇る。
更に空間歪曲フィールドの展開によって、一定以上の威力を持たない攻撃は全て無効化してしまう。
武装は46センチ連装砲が艦首側と艦尾側にそれぞれ二門ずつ。徹甲弾、榴弾、魔力弾と切り替えられる優れものだ。
さらに魚雷発射管を二門備え、誘導ミサイルまで搭載している。
そして主砲。
グラビティキャノンと大層な名前がつけられたそれは、重力子を照射し射線上の空間を潰し、抉り、削り取る破壊兵器。広範囲に重力波を展開させることで敵の動きを完全に止めることすら可能とする。
早い話が、波動砲。
その主砲の発射を可能としているのが、魔導戦艦全体のシステムを大きく支えているグラビティシステムだ。
グラビティキャノンを始め、空中航行もこのシステムによるものである。防衛機能の空間歪曲フィールドや、ワームホールを生成してのワープだって出来てしまう。
ただ、それらの機能を使うには多量の魔力が必要であり、主砲は一度使えば魔力炉心がオーバーヒートしてしまう。ワームホールの生成も、現在搭載している炉心では不可能とのこと。
艦内設備も充実しており、乗員のための居住区もちゃんとある。人数分以上の部屋と、食堂。リラクゼーションルームや遊技場、果ては温泉まで。クルーの心身をケアするようなものは事欠かない。
それらの管理は、ハイネスト兄妹が事前に乗せていたゴーレムに全て任せていた。しかも戦闘や航行に関するゴーレムのように、イグナシオが一人で操作するわけではなく、こちらは全自動。クルー側に負担は一切ない。
ところで、そんな超スペックを持つ魔導戦艦に龍太たち一行が搭乗してから、早くも五日が経過していた。
「実を言うと、この魔導戦艦はオリジナルの四割ほどしかスペックを発揮できていないんだ。本来ならグラビティキャノンは、星の磁場を狂わせるほどの環境破壊兵器とも言えるものだったからね。そんな魔導戦艦が、何隻も存在したんだ。古代文明が滅んだことには間違いなく、こいつも絡んでるよ」
早口気味に言うイグナシオは、今はもうホロウインドウやキーボードを操作しておらず、ゴーレムが運んできてくれたゼリー飲料を飲んでいる。
艦は既に自動操縦に切り替わっていて、イグナシオが予め打ち込んだ航路を飛んでいる。
ブリッジにはイグナシオと龍太、ハクアの他に、ルビーとジョシュアも。
他のメンバーは各々の時間を過ごしている。敵が現れたり、なにか起きた際にはブリッジに集まるように言っているが、それ以外の時間は基本自由行動だ。
ローラは初日から艦内の探検を続けていて、ジンはトレーニングルームで汗を流すと言っていた。クレナは龍の姿に戻って周辺空域を哨戒してくれている。ソフィアはまだ寝ているのだとか。もう昼前なのに。
「でも、この戦艦って百年戦争にも使われたんだよな。その時は大丈夫だったのか?」
「あー、使われたのは使われたし、実際に人類側の戦力として戦場をかき乱したのはたしかなんだけどさ」
「正確に言うと、起動していたわけではないのよ、リュータ」
「……あっ、そっか」
魔導戦艦の起動には、赤き龍と白き龍の両者が必要だ。
当然ハクアが人類側に与していたわけがなく、その上当時の赤き龍は異世界、龍太や朱音たちの世界で封印されていた。
動かすだけなら動く。その場合、スペックは通常の艦船より少し上程度だ。グラビティシステムも動きはするが、空間歪曲フィールドもワープも使えず、かろうじて使えるグラビティキャノンも本来の出力の二割に満たないほど。
それでも、当時の戦場においては猛威を振るった。魔力も使わず空を飛べる龍を相手に、強力な航空戦力は人類側の希望にすらなっただろう。
「百年戦争が長引いた要因は三つあると言われています。ひとつは、第三勢力である龍神たちの介入。もうひとつは、ドラゴン側のトップだった聖龍様が邪龍ヴァルハラに殺害されてしまったこと。そして最後に、人類側がこの戦艦を使っていたことです」
「オリジナルの魔導戦艦は大国に保存してある、だっけ?」
「はい。ドラグニア、ローグ、ノウム連邦の三国に、帝国にも一隻。そしてこれから向かう、ケルディムに一隻です。ローグのものはドラグニアが回収済みとのことですが……」
言いながら、ジョシュアはイグナシオの方をちらと一瞥する。
その視線に気がついたイグナシオは、ふふんと不敵な笑み。
「ジョシュアの想像通り。この艦のコアは、ローグから回収した魔導戦艦のものを使ってる」
「先に外側は完成させていた、というわけね。ローグのものということは、三番艦のクレセントかしら?」
「そう。だからこの艦の名前も、オリジナルからそのまま借りるつもりだよ。ま、動いてる魔導戦艦なんて今の世界にこいつ一隻だろうし、個別の名前が必要かどうかはわからないけどね」
「そうとも限らないと思いますよ?」
光沢のあるコアの表面を指でなぞるルビーが、神妙な表情で言う。
そして龍太も、みなまで言われずとも察していた。ジョシュアが教えてくれた五国の中には、帝国も入っていた。そして帝国は現在、スペリオルと手を組んでいる。
もしも、赤き龍が今も、バハムートセイバーの力を使えていたら。
白き龍の力すら、その手にあるのなら。
魔導戦艦起動の条件が揃ってしまう。
「今の帝国が、貴重な戦力を遊ばせておくとは思えません。革命軍からはいまだに魔導戦艦らしきものを見たとは報告を受けてませんけど、それでもここ一番で投入してくる可能性はありますよ」
「今までの革命軍や東の大陸各国に対しては、使う必要もなかったでしょうから。アカネやモモたちを本格的に相手取り出した今なら、使う可能性も高いわね」
たしかに朱音や桃たちは強い。龍太では到底敵いやしない。けど、赤き龍が起動させた万全の魔導戦艦を相手にすればどうなるか。
簡単に負ける姿なんて想像できないが、しかし同時に、自分たちが今乗っているこの船が沈むところも想像できない。
「ま、僕たちの手が届かないところを心配しても無駄さ。今はそれより、もっと目の前の問題と向き合わないとね」
ゼリー飲料のゴミを回収に来たゴーレムへ手渡して、イグナシオはコンソールを操作する。
彼の言う目の前の問題とは、即ち龍太たちの目的地のことだ。
天空の国、あるいは天空都市とも呼ばれるケルディムは、この世界の空を常に飛び回っている。その航路に規則性はなく、特定の方法でなければ位置がわからないのだ。
これは、旅立つ前から上がっていた問題でもある。
空の上にあるケルディムへ向かう物理的な方法は、ハイネスト兄妹とルビー、ジョシュアのおかげで確保できた。こうして無事に空の旅へ漕ぎ着けられたが、しかし一方で、ケルディムの具体的な位置は分からないまま。
「クレナさん、どうだ? それらしい場所はあった?」
『全然。影も形もありゃしないわ』
「そうか。そろそろ戻ってくれていいよ。艦の索敵機能使うから」
クレナが周辺空域を哨戒してくれていたのは、仲間の中で唯一ケルディムに訪れたことのある彼女に、目視で探してもらうためだ。そのついでに周囲の魔物も掃除してもらっていた。
「君たちも、それぞれ自由に休んでてくれ。ここは僕一人で大丈夫だし、そろそろ寝坊助も起きてくるだろうから」
「少しくらいならあたしも手伝えますよ?」
「いや、いいよ。なんというか、思ったよりも操作が簡単なんだよね。誰か別の存在が手助けしてくれてる感じ?」
「え、なんだよそれ。不気味じゃないか?」
当然ながら、この艦に乗り込んでいるのは龍太の仲間たちだけで、その中でイグナシオの手助けができるのなんて、先ほど本人が言ったようにルビーが少しくらいだろう。
龍太に至っては、イグナシオがなにをしているのか全く理解できていない。
「元々、あのコアの解析はほとんど出来てないからね。艦を動かすための機能だけ。それ以外のおよそ六割が解明できてない」
「案外、コアの中に誰かいたりするのかもしれませんねー」
「そういうわけだから、散った散った」
追い払うように手を振られて、龍太たち四人は仕方なくブリッジから出る。
艦内通路はそれなりに広く、四人が横に並んでもまだ余裕があるほど。各区画までの転移陣もあるから、移動はそれなりに楽だ。
時間を持て余してしまった。昼食にはまだ少し早いし、トレーニングルームでジンと一緒に一汗流そうかと思っていたのだけど。
「せんぱい、少し時間いいですか?」
「ん? まあ、やることないし」
「そうね。あっても筋トレくらいじゃないかしら?」
揶揄うようにハクアから言われて、図星の龍太は目を逸らした。
しかしその言葉から察するに、ハクアも特にやりたいことはないようだ。
「ジョシュア、休んでていいよ。せんぱいたちと三人でお話ししたいから」
「……かしこまりました」
ジョシュアはなにかを察したのか、ルビーに何か言おうとして、しかし言葉を飲み込み転移陣の向こうへ消えていった。
残された三人が向かった先は、艦の後部デッキ。ベンチも置いてあることから、元々休憩用のスペースとして作られた場所なのだろう。
そのベンチに女性二人を座らせて、ルビーから話し始めるのを待っていると、艦内からゴーレムが現れて三人分の飲み物を持ってきてくれた。
多少驚いたが、イグナシオはここのゴーレムにはある程度の自動機能、AIみたいなのを搭載している言っていたし、三人がここに移動したこともなにかしらの手段で知ったのだろう。
風で靡く亜麻色の髪を押さえながら、ルビーはグラスに刺してあるストローを咥えて、ジュースで喉を潤す。
「シノノメウタネにあたしがいった言葉、せんぱいは気になってるかなと思いまして」
「まあ、気にならないって言ったら嘘になるけど……」
あの時のルビーの言葉は、詩音だけでなく龍太にも刺さった。
分かってはいたことだけど、他人からああやって言語化されると、自分で思っていた以上に心に重く沈み込んだ。
龍太や玲二の影で、なにも持っていないと自称する詩音が、何を考えていたか。
それは自分も同じだと、その気持ちがわかると、ルビーは言った。帝国の公爵令嬢として、いわば持つ者として生まれた彼女が。
「帝国における公爵位は、貴族の階級でも最上位にあたります。これは、公爵家が皇帝と血縁関係にあるからです」
「親戚ってことか?」
「そうなりますね。他の国でも似たようなものだと思いますよ?」
ルビーに同意を求められたハクアは、頷いて補足してくれる。
「ええ。ドラグニアは貴族が存在しても階級制度がない、他と貴族という言葉の意味が少し違うけれど。リュータの知る国だと、フィルラシオがそうよ。継承権のない王族が降家したり、王女の嫁ぎ先だったり、色々と理由はあるけれど」
「俺の世界だと、貴族ってのがもう遠い存在というか、存在自体がおとぎ話みたいなもんだったからなぁ」
イギリスなどの一部の国ではまだ貴族も存在していたようだが、少なくとも日本に住んでいた龍太には、縁のない存在だ。
「そんな公爵家に生まれましたから、あたし自身皇族とは幼い頃から付き合いがあったんです。第一皇女は、ガーネット様は、あたしにとって本当の姉のようでした」
ネーベル帝国第一皇女。ガーネット・リ・ネーベル。
ルビー曰く、数年前に暗殺されてしまったという、彼女がいまだ忠誠を誓う皇女。
「あたしよりも三つ歳上で、いつも眩しいばかりの笑顔で、色んな人から慕われていた。まるで太陽みたいな人。あたしは色んなことに裏を疑ってしまうけど、あの人はそうじゃなかった。ただ純粋に、帝国のために、国民のために。見知らぬ誰かのために、なにかを成すことができる人」
だから、羨ましかったと。
消えそうな声で、ルビーは自嘲する。
「あたしにできないことを、あの人は容易く成し遂げる。三つしか違わない、同じ子供なのに。あたしが考え込んでしまっている間に、あの人は先に行動に移して、直感だけで正解を引き当ててしまう。天才的なカリスマを備えた、ヒーローみたいな人」
「ヒーロー……」
「せんぱいと同じです。自分に関係ないことにまで首を突っ込んでしまう危なっかしい人で、とんでもないお人よしでした」
「それ、馬鹿にしてないか?」
「まさか」
クスリと笑うその表情には、寂しそうな、悲しそうな。哀愁とでも呼ぶべきものがある。
ルビーはいつも言っていた。
誰かのために何かを成せる、そんな人の助けになりたいと。
ヒーローの手助けがしたいと。
今語られているのは、そんな彼女の原点だ。
「あの人が羨ましくて、妬ましくて、どうして自分はこんなになにも出来ないんだろうって、ずっと悩んで、苦しんで、でもあの人は、そんなあたしも否定せずに受け入れようとしてくれたから……」
「それがまた、あなたの劣等感を煽ってしまったのね」
力なく頷く。半ば項垂れるようでもあった。
「直接、言っちゃったんです。あたしの気持ちなんて分かるわけないって。それが、ガーネット様と最期に交わした会話でした」
喧嘩別れしたまま、その相手とは二度と会うことができなくなった。
当時のルビーの後悔は幾許か。龍太では想像することすらできない。
「本当は、ガーネット様のことが大好きだったのに、ついに直接伝えることが一度もないまま、会えなくなって……」
「だから、リュータの手助けがしたいの?」
その問いには、首を横に振る。
ただそれだけではない。きっと、ガーネットが暗殺されてからも、なにかがあった。
「ガーネット様が暗殺されて、ジョシュアをローゼンハイツ家で引き取って、それから革命軍のことを知って。裏で糸を引いてるスペリオルのことを知って。後悔してる暇なんてありませんでした。それより先に、ガーネット様を殺した連中に復讐してやるんだって気持ちばかりがあって。だけど、革命軍に入った時、知ってしまったんです」
「……なにを?」
「帝国が奪ってきたものを」
それは、ガーネットが本来守りたかったもの。
帝国国民だけじゃない。他国だろうと関係ない。見知らぬ誰かの、平和な日常。幸せな毎日。
ネーベル帝国は、大陸統一の大義のもとに、それらを奪ってきた。
「ガーネット様の理念は直接本人から聞いていた。あたしは心のどこかで無理だろうと思っていたけど、素晴らしいものだとも思っていた。
でも、実際に目の当たりにして、本当の意味で知りました。あの人が、どれだけのものと戦っていたのか」
住む土地を、国を奪われ、家族を殺され、それでも戦うものたち。
帝国の復讐のために兵士になった人もいるだろう。あるいは、義憤に駆られて革命軍に参加した人も。
その全ての人が一様に、未来への希望を瞳に宿していた。
戦いの先にある、かつてのような平和な日常を、その目に見ていた。
第一皇女は、それら全ての人の想いを背負っていたのだ。
そして、志半ばに倒れてしまった。
「復讐したい気持ちは今もあります。ガーネット様の意思を継ぎたい思いもある。でも、あたしがせんぱいたちの手助けがしたいのは、それだけじゃない。あたし自身が、そうしたいと思ったから。革命軍のみんなの顔を見た時に、それがあたしの生きる道なんだって、決めたから」
ルビーの瞳には、強い決意が満ちている。
十四歳の少女には似つかわしくない、けれどルビーという少女にはよく似合う、強くてかっこいい瞳。
「それに、せんぱいには後悔してほしくありませんから」
「後悔、か……」
脳裏によぎるのは、二人の幼馴染の顔。
ルビーはこう言ってくれてるけど、玲二のことを考えると後悔しないなんて無理だ。実際に手を下したのは間違いなく龍太で、知らなかったこととはいえ、どれだけ責められても文句なんて言えない。
けれど、詩音とのことはまだ間に合う。
彼女が大切な幼馴染であることには違いなくて、今こうやって殺し合いにまで発展してしまっている状況は、龍太に原因があるかもしれないけど。
また昔みたいに、とは行かないけれど。
それでも、他の道があるはずだから。
「ありがとな、ルビー」
素直に感謝の言葉を告げれば、なぜかルビーは言葉に詰まった様子で、ほんの少し頬を朱に染めている。
「これだからせんぱいは……今のあたしの話が嘘だって、ちょっとは疑ったりしないんですか?」
「え、嘘なのか?」
「この人は……」
なぜかため息を吐かれてしまった。
え、なんで?
「ふふっ、ルビーは照れてるのよ。普段素直にお礼を言われることなんてないでしょうから」
「あ、なるほど」
「納得しないでください! ちょ、ちょっと、その目はなんですか二人とも! その温かい目やめてください!」
まったく可愛い後輩だ。龍太は元の世界では、学校の後輩とはあまり関わりがなかったりしたから、いわばルビーとジョシュアは龍太にとって初めての後輩とも言える。そりゃ可愛く思えるだろう。
なんてほっこりしていると、艦全体が大きく揺れた。体勢を崩してベンチから転げ落ちそうになったルビーをハクアがサッと支える。
「なんだ⁉︎」
『艦内の全員に通達! 所属不明のドラゴンが多数襲ってきた! ブリッジに集まってくれ!』
デッキから空を見てみると、離れた位置に翼を大きく広げた影が見える。
たった今艦内放送でイグナシオが言っていた、所属不明のドラゴンたちだろう。
「どうすんだよ、こっちは空中で動き回れるやつは少ないんだぞ!」
「とにかく、ブリッジに急ぎましょう!」
慌てる龍太とハクアと違い、ルビーは冷静そのもので。
「そういえば、ここの艦長ってまだ決まってませんでしたよね?」
「普通に考えてイグナシオじゃないの?」
「てかそんなの今はどうでもいいだろ!」
「まあまあ、落ち着いてください」
右手で顔の半分を覆い、右手を隠すルビーからは、魔力を解放する気配が。
ふむふむなるほど、と小さく呟いて、ブリッジにいるイグナシオへ通信を飛ばした。
「イグナシオ先輩、艦を九十度回頭。煙幕展開と同時にデコイ発射。連装砲は徹甲弾を装填、いつでも発射できるように。全速力でこの包囲を離脱してください。クレナさんにはいつでも出られるように、ジンさんには艦のデッキ上で迎え撃つ準備をしてもらって。恐らくですけど、このドラゴンたちはケルディムからの刺客、あるいは使者と言ったところです」
『なんで君が指示を出すんだ!』
「いいから早く」
一方的に通信を切ったルビーは、悠然とした足取りで艦内へと戻る。
その様に龍太もハクアも何も言えないでいると、自信満々不敵な笑みを浮かべて言った。
「せっかくの機会ですから、革命軍参謀の指揮、とくとご覧にいれますよ。あ、もちろんせんぱい方にも変身して出撃してもらいますから」




