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空賊姫は受けた屈辱を必ず雪ぐ  作者: 山極 由磨
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 全員がアゲハ号に戻り元の持ち場に着く、その前にアゲハはコケモモの壺を船橋の部屋一つ挟んで後部にある小さな打ち合わせ部屋、通称『悪巧み部屋』に持ち込み、テーブルの足にガッチリ縛り付ける。

 船長席に着いた彼女は意気揚々と乗員に命じた。


「これより白鷺号より急速離脱する!前進、第一強速、気嚢内濃度上昇値、高度5000、進路マルーマルーマル、ヨーソロー!」


 副船長、機関士、気嚢士三人の復唱の後、白鷺号の左舷船体上部甲板より急速に離れすぐさま船主前方に出る。


「無線士、お別れの挨拶よ『貴船ノゴ協力ニ感謝スル、ヨイ航海ヲ』」


 垂直尾翼上部の発行信号機をレイが操作し終わった時、チャタリがウサギ耳を翻しアゲハに緊張でうっわずった声を掛ける。


「電探、感アリ!方位ヒトーヨンーナナ。距離1万2千。高度3500から毎時230ノットで急速接近する船影!反応の形状から見て・・・・・・。飛行駆逐艦の可能性アリ!」

「通報された!?んなバカな!」

「イヤ!早すぎる!待ち伏せです!」


 アゲハの言葉すぐさま打ち消すユロイス。

 アゲハはすぐさま全船内用の伝声管の蓋を跳ね上げ。


「どっちにしてもここは逃げの一手!戦闘配置!前進最大戦速、三次元回避運動!」


 気嚢内の浮素ガスの濃淡と方向舵の操作でアゲハ号は上下左右に回避運動を始める。


「船影!ドンドン近づく!距離5千!」 


 チャタリの報告を打ち消すようにレイが。


「接近中の船より無線連絡、『貴船ニ告グ、ワレハ、アキツ帝国航空軍所属、丙種飛行戦闘艦『流星』コレヨリ貴船ニ対シ『万国空賊対処条約』則リ臨検ヲ実施スル、直チニ停船セヨ、命令ニ応ジナイ場合ハ』」


 その時、船橋の窓ガラスが眩い閃光で覆われたかと思うと、アゲハ号の左舷上部で赤黒い爆炎がさく裂するのが見えた。

 次に頭上で、右舷で、次々と閃光が鋭く光り爆炎が星空を覆い隠す。そして強烈な衝撃波が船体を容赦なく叩きまわし、無数の破片が雹のように叩きつけられ、船橋を覆うガラスに蜘蛛の巣状のひびが入る。

 時限信管で砲弾がさく裂しているのだ。

 伝声管からリシバの恐怖で上ずった半ば叫びの様な声が響いて来た。


「こちら後部機銃座!み、見えましたぁ!方位ヒトーナナーマル!距離3千!て、て、てててて帝国の丙飛艦!」


 その時、彼の見開かれた目に映ったのは雲間から突如として現れた灰色の巨大な翼。

 全幅118メートル、排水量2000トン、4基の50口径12.7センチ連装砲と4基の25ミリ三連装機銃、12基の25ミリ単装機銃で武装したアキツ諸侯連邦帝国航空軍の丙種飛行戦闘艦『流星』が、猛然と迫りながら光の礫を自分めがけて投げつけている様だっだ。




「艦長、停船命令がまだ済んでおりませんでしたが、よろしいので?」


 丙飛戦(飛行駆逐艦)流星の艦橋で、夜目にも鮮やかに炸裂する砲弾の爆発を見つめつつ、ひょろ長い眼鏡面の副長が砲声の合間に問うと、猫の死体のように草臥れた制帽を禿頭に乗せた流星の艦長、カラバミ・トノゾウ少佐は、すっかり白くなった茫々たる口髭の下の、歯がまばらな口から唾を飛ばしつつ、エンジン音や砲声に負けない大声で。


「構わん!あの旗印と船影はアゲハ号に違いない。船長は二十歳そこそこの美女と聞いとるぞぉ、空賊は生きて捕まってもどうせ縛り首、うら若き乙女が絞首台で糞やらションベンやら漏らして死んでゆくのは哀れの極みじゃ、いっそ大空で散らせてやるのが武人の情けと言う物よ!撃って撃って撃ちまくれぇ!欠片も残すなぁ!」

 

 ひょいと肩を竦めると、副長は実に落ち着いた風の良く通る低い声で。


「第一から第四までの全主砲!及び全対空機関砲!方位マルーマルーマルの空賊船に対し、引き続き斉射を加えよ!」


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