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空賊姫は受けた屈辱を必ず雪ぐ  作者: 山極 由磨
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翌日、アゲハ号の船橋には、各々の配置についた乗員達の姿があった。左右弦の機関砲座にはホランイとダチュレが、船体上部甲板にはリシバとトァムが付いている。

 操舵席に座るユロイスは、被り慣れた軍帽を軽く直すと号令を発した。


「各員、状況報告!」


 バシリスの低く落ちついた声が返って来る。


「エンジン、動力伝達系、油圧系統、電気系統問題なし」


 そしてエウジミールの飄々とした返答。

  

「気嚢内濃度滞空値にて正常、浮素ボンベ、冷却系統、各種弁、問題なし」


 続いてレイが何時もの砕けた調子で。


「無線機感度良好ぉ、発光信号器点灯問題なしでぇす」


 これにチャタリが続く。


「電探感度問題ありません」


 その後、伝声管からホランイのどすの利いた声が。

 

「全火器、弾薬類問題ナシ」 


 最後に甲板に居るトァムに代わり、チャタリが。


「トァム君から食料飲料水等資材積み込みと固定完了報告を受けています」


 全員の報告を聞き終えると、半身をねじって後方の船長席向かって。


「船長、出港準備完了です」


 これを受けアゲハは席から立ち上がり、船橋を見渡して。


「では団員諸君!これより、アキツ帝国新領拓洋市にむけ出発する。目的はアタシたちをコケにして詐欺師共がせしめた25万圓の強奪。アゲハ空賊団は受けた屈辱は無からず雪ぐと言う事を、クソッタレ悪党共に体で教えてやるわ!出航準備!無線士、空賊島管制に出航許可の要請を」

「こちらアゲハ空賊団所属アゲハ号これより第21号ドッグより出航する。許可されたし、送れ」


 レイの呼びかけに対しすぐさまの返答がスピーカーから流れた。


『こちら空賊島管制。出航を許可する。航海の無事と満足いく稼ぎを祈る。以上』


 すぐさまアゲハは次の指示を飛ばす。


「エンジン始動!左右弦甲板員、係留索を外せ!」

「エンジン始動ヨーソロー」


 バシリスの復唱と共に大きな破裂音が響き渡り船体が身震いする。続いて心地よく連続したうなりを上げ、三発の帝国発動社製空冷星型四連24気筒エンジンが動き出す。

 そして、アゲハ号とドックを繋いでいた2本の係留索が切り離され巻き上げられたことをリシバの合図で確認すると。アゲハは。


「両舷前進微速!気嚢内滞空値、高度そのまま!」

「両舷前進ヨーソロー」

「エンジン始動、微速ヨーソロー」

「気嚢内滞空値高度そのままヨーソロー」


 バシリスがクラッチを繋ぎエンジンからの動力が4枚羽のプロペラに伝わり推力が産み出され、550トンの船体がゆっくりと前進する。

 ユロイスは両弦とドック内の艀や壁面の位置を逐次注視しつつ、操舵桿を握り舵を微調整、その間、エウジミールは操作盤のメーターすべてに素早く視線を走らせ数値を読み取りバルブを細かく操作する。


「船長、左舷、ドック桟橋に見送りです」


 ユロイスの言葉に視線を一瞬走らせると、帽子を手に腕を振るチャナイやその手下たち、そして千切れんばかりに両手と尾っぽを振り回す女給服姿のリシニに混じって、淡い撫子なでしこの花をあしらった蘇芳色すおういろの紬で仕立てた留袖とめそで紅梅色こうばいいろの帯を締めたエナハの姿もあった。

 徐々に距離が開いて行く自分と母の間を図る様にほんの僅かな間見つめていたが。


「気嚢長、見送りの方々に返礼の汽笛を」


 圧搾空気ボンベから汽笛に空気が送り込まれ、朗々とした音色がドックを振るわす。

 船橋内に強烈な陽光が差し込み、一瞬、アゲハは目を細めた。

 光に目が慣れその黒い瞳を見開くと、目の前には深い青を背景にそそり立つ巨大で目に痛いほど白い積乱雲。

 アゲハ号の船体がドックを出て空賊島から離岸したのだ。

 船体の一番後ろにある垂直尾翼直下の機銃座から、伝声管を通じてトァムの声が船橋に届く。


『こちら船尾機銃座、船体の離岸を確認』


 続いてチャタリが。


『進行方向に飛行船舶航空機などの障害物無し』


 アゲハは真正面の積乱雲を見据えつつ。


「中層貿易風に乗り帝国新領を目指す、前進原速、気嚢内濃度上昇値、高度4000、進路フターヨンーマル、ヨーソロー!」


 すぐさまユロイス、バシリス、エウジミールの復唱が帰って来た。


「進路フターヨンーマル、ヨーソロー!」 

「前進原速、ヨーソロー!」

「気嚢内濃度上昇値高度4000、ヨーソロー!」


 アゲハ号は取り舵を切りつつ上昇し、中層貿易風を目指して空賊島を後にした。

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