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空賊姫は受けた屈辱を必ず雪ぐ  作者: 山極 由磨
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 暴風雨の中、波を被りそうなほどの低空で飛行し続けたアゲハ号は流星の追跡が無いと解ると電探に映ったサンゴ礁に一時身を隠すことにした。

『コ』の字型になった環礁は風も避けられ万が一近海に船が居た場合も目隠しになる。

 停泊するなりバシリスは機関士席を立つと。


「ちょいと船体を見てくるとするかのぉ、船長、リシバとトァムを借りますぞ」

「了解、ちょっとゆっくりできそうな場所だから、直せる損害は直しといて、波と風にさらわれない様に気を付けて」


 バシリスの背中を見送ると、アゲハは慌てて船橋後方の『悪巧み部屋』に駆け込み、椅子に縛り付けた『コケモモの壺』を無事を確認する。

 箱を開けると壺はヒビや欠けは無く全くの無傷だった。

 安心し気が抜けて床にへたり込んでいると、船酔いでげんなりしたダチュレが『悪巧み部屋』に入って来た。

 そして、壺を見るなり。


「これがお宝の壺か?思ったよりも小っちゃいな」


 と、手を伸ばして触ろうとする。

 その手から庇うように箱を抱きしめアゲハは。


「大きい小さいは関係無いの!問題は美しさと来歴よ。千年以上も昔に北方大陸への陶器の輸出で莫大な富を得て繫栄し、ある時忽然と作陶の技と共に消えた謎の古代文明、カンジュ文明の秘宝中の秘宝。ま、前借の連続でにっちもさっちもいかなくなるようなアンタには解らないでしょうけどね」


 そして自分の腕の中の艶めかしいまでの光沢を放つ壺にうっとりと見とれる。

 ダチュレはその様を呆け顔で見ていたが。


「ふ~ん。確かにすごい壺かもしれんな。時計もついているのか?」

「バカ、そんなわけないでしょ、千年前よ千年前、時計なんてある訳無いじゃない」

「けど、中から時計の音がするぞ、コチッ、コチッて」


 箱から全部出してみるが、当然時計が組み込まれている訳が無い。

 蓋を開けて懐中電灯で中を照らしながら中を覗く。

 底の方に旅行用の目覚まし時計が文字盤を上に向けて置かれており、さらにその下には粘土の塊のようなものが張り付けられ、時計と複数の導線で繋がっていた。

 絵に描いたような時限爆弾だった。

 四本目の赤い針と時針が重なるまであと3分。おそらくそこが点火位置だ。


「じ、時限爆弾!」


 アゲハの悲鳴に船橋にいた全員が悪巧み部屋になだれ込む。


「どこに!?」


 ユロイスの問いにアゲハは。


「つ、壺の中!」

 

 答えを聞くなりユロイスは壺に手を伸ばす。


「なにすんのよ!」

「海に捨てます!」

「バカ言わないでよ!25万圓よ!25万圓!」


 そして、いつでも逃げられるようにドアの陰に半分身を隠しているレイに。


「レイ!あんた元スパイでしょ!?爆弾の解体ぐらいできるよね?ねぇ!」


 千切れんばかりに首を振り。


「僕は情報収集専門で破壊工作は専門外です。アハハ」


 諦めて壺の底を見る。残り時間2分。

 時分で解体しようと手を突っ込みかけたが、すぐにひっこめた。

 口には十字型に糸が張ってあり、そこからも導線が爆薬に繋がっている。糸が切れたら点火される仕組みだ。

 レイの陰からエウジーミルが現れ、アゲハの傍らに立つと壺の中身を覗き込み。


「フムフム、ホウホウ」


 とつぶやくと、おもむろに箱ごと壺をアゲハから取り上げる。


「ダメ!25万圓!ダメ!」


 ほとんど文章に成っていない言葉を喚きつつ取り返そうと手を伸ばすアゲハにエウジーミルは。


「ご安心なさい船長。海に捨てたりしませんから」


 と言い残し、悪巧み部屋を後にする。

 その後を完全に逃げる準備に入ったレイ以外のその場の面々が付いて行くと、エウジーミルは貨物室に置かれた人の背丈ほどあるボンベのまで立ち止まり、床に壺を置いた。

 そして、慌てるでもなくボンベに備え付けられた赤いノズル付きのホースと取り出すと、ノズルの先端を壺の中に向け、ホースの根元にある赤いコックを捻り続いてノズル側のコックも捻る。

 途端に真っ白い煙が壺とエウジーミルを包みその姿を消し去る。

 しばらくして煙が晴れると、立ち上がった彼は貨物室備え付けの革手袋を持ちだし手にはめ、壺の中に手を突っ込んだ。

 全員がその場から逃げ出す。

 何事も起きないので振り返ると、カチカチに凍結した時限爆弾を手にしたエウジーミルが立っていた。

 ずれても無い眼鏡を直しつつ彼はこともなげに。


「液体窒素を掛けて見ましたが、さすが丈夫さでも名を轟かすカンジュ陶器ですな。この程度の温度差でもヒビ一つはりませんでした。爆弾はホレこの通り」


 浮素ガスを冷却し液化させ体積を減らす為に船内に置かれた液体窒素。

 火災を窒息消化するために使うホースとノズルを使って時限爆弾を凍結処理したのだ。

 差し出された時計の残り時間は、30秒を切っていた。

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