力の扱い方! プリンキピア
かな〜り適当です
ガタッ……ガタガタ……
俺ケンイチは、現在ライプニッツ教授とガレットと共に、王立科学アカデミーに馬車で絶賛連行中だ。
そう、研究室に突然やってきたケイト特任教授は、警備員を引き連れてきたのもあって、俺達は一瞬にして捕らえられたのである。
魔法で奴らをカッコよく片付けてみたくはあったが、物理法則は魔法の存在を許さないのである。
「お前の姉さん弟にも容赦ないんだな。」
「まあ、姉さんは真面目だからね。」
非正規雇用のくせして生意気では?
捕らえられた俺達は馬車の檻の中でくだらない話を延々と続けている。
そんな中ライプニッツ教授が言った。
「君、この馬車の未来を予想できるか?」
「もちろん」
俺の物理の偏差値は55、運動方程式を書くくらいどうってことはない。ちなみに『どきどき物理調査隊』は奪われてしまった。恐らくケイト特任教授がニュートンに差し出すつもりなのだろう。
(ところで、車輪の回転などを考えると一気に大学の範囲になってしまうので馬が俺達の乗った檻を摩擦のある床上で引っ張っているものとする。(ご都合主義))
第3章 力の扱い方
・万有引力
万有引力はニュートンによって発見されその法則は歴史的物理大著『プリンキピア』に記載されている。
f=G・mM/r²
(G:万有引力定数 m:質量 M:もう一方の物体の質量 r:2物体の距離)
ところで万有引力で扱う質量と運動方程式に出てくる質量(加速度に反比例するやつ)は厳密には違うものである(cf.等価原理)
・重力
f=G・mM/r²
(Mを地球の質量、mを人間の質量とする、rは地球の中心から地表の人間までの距離である。)
観測結果に基づけば質量mの人間は下向きにmgの力をうける。
G・mM/r ²=mg
i.e.
g=GM/r² ←どうやら全部定数である。
従って、理論的にも実験的にも万有引力は一定と扱える。
f=mg
これが重力と呼ばれるものである。
・(力学における)重力以外の力
・抗力
全ての物質は原子からできている。原子は原子核とその周りの電子により構成される。
物体と物体が近づくと電子同士が反発しあいお互いに退け合う力を持つ。(作用反作用である)
これを力を分解(x-yに分ける)したとき、垂直抗力と我々がよく知る摩擦力が定義されるのである。
ここで垂直抗力をN 摩擦をFとして、
μ≡F/N
( ≡ は定義するの意 μをF/Nと定義したわけだ)
これを動摩擦係数という。
現在、俺たちの乗っている檻は馬から力Fをうけ、地面から摩擦力を受けると考えられる。
俺達と檻の質量の合計をMとすると、
運動方程式(Equation of Motion(EOM))は……
Ma=F-μN
馬車はどうやらは一定の速度で移動しているようなので
a=0 (加速度=0)
i.e.
0=F-μN
F=μN
「あれれれれ〜?」
思わず声を出してしまった。
加速度が分からないのなら未来を予想できないではないか!
(cf.そう、物理学において等速運動と静止状態は相対的なもので区別しないのである。)
つまり等速運動する檻からみた景色の移動する速さが俺たちが地面に対して移動する速さなのである。
ちなみに、この馬車の檻は光が入ってくる程度で外の景色は見ることができない。
「そもそも、どうやって馬の力Fと摩擦係数と垂直抗力を測定すr……」
「口を慎みなさ〜い!」(叱るケンイチ)
ガタンッ……
突然馬車が止まった。
(ちなみに止まったということは檻の加速度a<0である。)
「着いたぞ」
馬車御者が言った。
警備兵たちに檻の外に出されると目の前には厳つい石造りの王立科学アカデミー(と思われる) があった。
目をアカデミーの正面に向けると、大きな門の前に長い金髪のなびかせる青年が立っている。
左手に『どきどき物理調査隊』、
右手にりんご(恐らく持ちネタだろう)
「本は見させて貰ったよ……」
「返せよ!結構高いんだぞそれ!」
「口を慎め!」
青年は強い口調で言う。
「自己紹介がまだだったね。王立科学アカデミー会長……アイザック・ニュートン」
「俺は…結城ケンイチです。」
「ケンイチくん、この本に記述されている法則をすべて証明できれば、私は宇宙を理解する神に等しい存在になりうる…………そう思わないかね……?」
(cf.古典物理が完成すれば科学ですべての事象が説明できると考えられていた。)
「う〜ん、」
返す言葉に困っているとニュートンは続けて言った。
「今、私はこの本に相応しい名前を与えようと思う。」
自然哲学の数学的諸原理
「えっ?!」
流石に驚いた。
ただの大学受験用の参考書が科学史上最大の影響力をもつあの大著『プリンキピア』にされてしまったのだ。
「君達には今から宇宙の真理の証明に立ち会ってもらう。連れていけ、」
警備員たちに俺、ガレット、ライプニッツは王立科学アカデミーの中に連れて行かれた。
ライプニッツはニュートンを始終睨んでいた。