運動の法則! とライプニッツ?!
「教授ーーー!教授ーーー!」
俺の腕を掴んでノースフォード学院の中を走りながら、ガレットは叫ぶ。
「痛い!痛い!やめろ!俺の腕を張力Tで引っ張るな!」
「その本を早く教授見てもらわないと!」
複雑な学院の回廊を右往左往し、無数にあるかのように並ぶ扉の1つをガレットは勢いよく開けた。
書斎か、研究室だろうか。壁の本棚一面に重厚な本がびっしり詰まっている。
部屋の奥には大きな黒板が一枚あり、その手前の教卓には、いかにも学者めいた男が突っ伏していた。
黒板には曲線と数式が書かれており、その曲線にいくつもの接線が書かれていた。
おそらく彼は接線の方程式を求めたいのだろうが、俺には黒板に見当違いな事ばかり書いてあるように見える。
多分、この男がYゼミナール模試の数学を受験したら偏差値30も取れないだろう。
(cf.俺は45 )
余談だが、俺がオープンキャンパスで東京御理工大学に行ったとき、物理学科教授に簡単な数学の問題を出したことがある。
教授は「なつかしいな〜」と言うだけで解いてくれなかった。(cf.教授レベルになると専門分野外は高校レベルも解けないというのが良くある)
「ライプニッツ教授!起きてください」
ライプニッツ……?聞いたことがあるような……
「うるさいなガレット……私は接線問題の研究で忙しいのだ……」
そうい言いつつ、ライプニッツはガレットが差し出した名著『どきどき物理調査隊』に手を伸ばす。
彼の開いたページには簡単な微積分に関する説明とポップな絵が溢れていた。
突然ライプニッツは教卓から立ち、彼の顔は豹変した。
血走った目でポップな絵と数式を見ている。
彼の手は震えていた。
う〜ん、やはり名著である。俺の目に狂いはなかっt……
「これは……君が書いたのか……?」
「えっ、」
すごい顔でこちらを見ている。
正直チョット怖い。
「いいえ」
首を何回も横に振った。
「いいえ」
大事なことなので2回言いました。
「じゃあ、誰が書いた?!」
ライプニッツは力Fで教卓を押しのけて俺に迫ってきた。
ところでライプニッツが教卓を押したので教卓は運動した。
運動したから教卓は移動した(位置が変化した)のである。
第2章 運動の法則
第1法則:物体が作用を受けない限り、静止していれば静止したままの状態を維持し、ある速度を持てばその速度のまま等速直線運動する。
第2法則:物体の加速度は、その物体の受ける外力の大きさに比例し、物体の質量に反比例する。
第3法則:物体が作用を受けるとき、その物体はその相手に、同じ大きさで逆向きの力を作用する。
(第1法則はまるで第2法則の一部であるように見えるが、実は第2法則が成り立つ空間の採用を要求しているらしい。詳しくは知らないよ。)
第2法則を式で表すと
a=f/m
(fは力、mは質量である)
これを変形して
ma=f
これは質量mの物体が力fを加えられ加速度aで運動している様子を表す方程式である。
ライプニッツが教卓に与えた力fと教卓の質量が分かれば、
教卓の加速度aが分かる。
教卓の加速度が分かれば速度vが分かる
(∵(なぜならを意味する記号)v=v0+at)
教卓の速度が分かれば教卓の位置xが分かる
(∵x=v0t+1/2at²)
つ ま り、物理学を用いることで物体の未来を予測できるのだ!(科学ばんざ〜い)
まずライプニッツが与えた力はえ〜〜っと
「聞いているのか!」
ライプニッツに胸ぐらを掴まれた
「ひぇ〜〜すいません。著者はこの世界にはいませ〜ん。多分」
「いない……いないだと…………」
ライプニッツは少し考え込み、
「ニュートンの野郎に消されたのか……」
と言った。
「ニュートンに……消された?」
聞いたことがある。
あの大天才、ニュートンはあまり良い性格ではなかったらしい。学生時代は友人に利子付きで金貸しをしてたりしたそうだ。(クズじゃねーか)
「君、名前はなんだ?」
「結城ケンイチです。」
「いいかケンイチ君、その本に記述されている内容、法則が事実かは私は判断しかねる。だが、もし事実なのだとしたら、君とその本は王立科学アカデミーの連中に狙われることになるだろう。」
俺と『どきどき物理調査隊』が狙われる……?
この時になってようやく俺は気づいた。この世界ではどうやら未だに微積分が発明されていない。(cf.ライプニッツは微積分の創始者の1人である)
とすれば未だに物理学も発展途上のはず。
そう、この世界は俺のいた地球の1600年代とそっくりなのである。
しかし、ニュートンが王立協会の会長に就任するのは1700年代、時系列も協会の名称も現実と少々異なる。
「ライプニッツ教授、俺が狙われるとは一体……」
ドン!ドン!
何者かが研究室の扉に力積を加える。
扉が開いた。
「これはこれはライプニッツ教授……それに……ケンイチくん……」
ケイト氏だ!
ご飯できたよと言いに来たのかと思った拍子に…
「今の話を聞いてしまった以上、ノースフォード学院客員教授(非正規雇用)として……あなた方を……ただで返すわけにはいきません!!!」
「え゛え゛え゛〜〜」
敵対するなら飯を食わせてからにしてくれれば良かったのに…