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第99話 乙女の恋慕は凍らない15


「――火球ファイヤーボール――」


「――自己固定セルフフィクシング――」


 攻撃魔術と防御魔術。


 詠唱と宣言。


 炎熱が力場に防がれる。


 武闘祭本戦。


 勝ち抜けてきた八人による争いだ。


 ミズキは観戦席で見ていた。


「――土刺剣山グラウンドフロッグ――」


 また宣言。


 その通りに術式が現象を起こす。


 大地が剣山の様に突出して穿つ。


 普通に熱力学無視の現象なのだが、この世界には物理法則の理解が進んでいないためどうにもツッコミ不在の恐怖。


「――術式拡散システムディフュージョン――」


 風の魔術が無力化。


 さすがに本戦に出るだけあって、魔術の扱いも手慣れている。


「――燃焼バーン――」


 炎が奔流となって選手を襲う。


「――土壁ロックウォール――」


 また宣言。


 謳歌は終えている。


 大地が隆起し、壁となって炎を防ぐ。


 属性多様な魔術が互いに互いを浸食する。


「これは……………………凄いな……」


 ミズキは感心していた。


 そもミズキの属性は風。


 ソレただ一つ。


 多彩な魔術を扱う本戦出場者の器用さときたらどうだろう。


 とても追いつけるレベルでは無い。


 尤もソレを言えば身近にサラダという例が居るのだが。


 火と水と土の三属性に親和性を持つ優等生。


「凄いですね」


 隣の少女も感心していた。


 ギフト。


 海の国の王女だ。


 だが観客は魔術戦に熱狂している。


 ミズキは普通の服装。


 ギフトもシャツにデニム。


 二人揃ってウールキャップを被り伊達眼鏡をしていた。


 一種の変装だ。


「王女じゃなくて一人の女の子としてミズキとデートしたい」


 そんなご様子。


 結果、変装。


 ローマの休日ばりにロマンス溢れるシチュエーションではあるのだが、なんにせよそれで魔術決闘を観戦している辺りやはり学院祭のコンセプトからは容易に外れることも能わじとの御様子だ。


「――――」


 魔術の起動。


 攻撃。


 防御。


 閃光が眼を灼く。


 爆音が耳をつんざく。


 水流が斬撃となって円形闘技場の壁を切り裂いた。


 想像の埒外。


 異常者の妙。


 なるほど。


『神の設定した裏技』


 魔術だ。


 体力を魔力に変えることで、体力では出来ない現象を起こす。


 神の御業。


 世界の法則。


 その異常性を端的に表わした結果が、


「――火球ファイヤーボール――」


「――土壁ロックウォール――」


 いま視界に収まっている闘技場での出来事だった。


 火球が土壁に阻まれて着弾。


 大爆発を起こす。


「楽しそうですね」


「何が?」


「魔術を使えるって事がです」


「あまり推奨されるべきでもないがな」


「何故です?」


「消費物ですから」


 肩をすくめる。


「?」


 ギフトには分からないだろう。


 戦争と縁のない人間だ。


 麦の国と国境を争う学院生とは意識が違う。


 それはそれとして、


「はぁ……はぁ……」


「ぐっ……はっ……」


 選手たちは息切れしていた。


 魔力が体力から練られる必然、使いすぎれば息も荒くなる。


 ましてマジックキャパシティは基本的に年齢に正比例する。


 多彩な魔術の使用は、


「フルマラソンを最速ダッシュする物」


 とのミズキの意見が的を射ている。


 これがミズキになるとまた話は違ってくるのだが。


「ミズキにも勝ってほしかったです……」


「今更だな」


 皮肉っているわけでは無い。


 別に取り戻しが出来ないわけでもないが、


「面倒」


 と切って捨てるのがミズキクオリティ。


 試合が決着した。


 今日はここまで。


「明日は準決勝か」


「楽しみですね」


「席が取れれば良いが」


「そこは王族権限で」


「便利だなぁ」


 それだけ。


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