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第79話 学院祭パニック20


 引き続きセロリとのデート。


 ミズキとしても最も気安い女の子だ。


 緊張とは無縁。


 ドキドキもしないのが欠点だが。


 屋台を冷やかして歩くだけ。


 が、それだけでセロリは至福だった。


 想い人と一緒に居る。


 それが如何な価値を持つか。


 それはミズキの思慮外だ。


 本当に。


 そう……本当に。


 セロリはミズキに惚れきっているのだ。


 そのミズキはと云えば、メイド服姿のアルビノ美少女風でイカ焼きをガジガジ噛んでいたが。


「あは」


 そんな一挙手一投足に喜びを覚えるセロリ。


「――大好き」


 言葉にはしないが胸中で宣言。


 誰よりも先にミズキを愛した乙女である。


 それなりの自負は在った。


 しばらくそうやって歩いていると、


「魔術師!」


 声がかかった。


 ここは王立国民学院。


 魔術師の虎穴だ。


 珍しくないわけではないが、普遍的ではある。


 とっさに自身に向けられたとはミズキもセロリも思わなかった。


「?」


「?」


 単に、


「大声だったから」


 との理由で声の主に視線を振る。


 白と蒼。


 睨み返された。


「ああ」


 覚る。


「厄介事だ」


 そんな感じ。


「不誠実な邪神の徒め!」


 ナイフを持っている声の主。


 一般的な一市民。


「成敗してくれる!」






 ――邪神の徒




 そういうからには反神教ではないだろう。


 一神教。


 その排他的異端。


 正常主義者と言ったところか。


 思想家であるのは覚れるも、だからその思念に帰順していいかは少し法律との摺り合わせも必要になる。


「おお!」


 突っ込んでくる自称健常者。


 体の勁が練られていない。


 重心はバラバラ。


 足はもつれている。


 震脚もなく、加速も遅い。


 ナイフがミズキに振るわれる。


「勝った」


 そう一市民は確信した。


 単純に威力的なのだ。


 魔術師という存在は。


 時に畏れられ、敬われ、疎んじられる。


 その不条理さはどこでも語られるフェアリーテイルのお約束……テンプレートでもあって。


 魔術師が正常主義者に負ける。


 それを、


「正義」


 と一般市民は思う。


 最も歪んだ価値観には相違ないが。


「…………」


 ミズキの反応は端的を極める。


「煩わしい」


 とばかりにナイフを手の甲で払って、


「…………」


 逆の手で鳩尾を打つ。


「っ?」


 いきなりの激痛に意識が追いつかない。


 追いつくと、


「げはっ!」


 呼気を吐き戻す一市民。


 そこからのミズキの行動は刹那の半瞬だ。


 神速の速さで回し踵蹴りが繰り出され、


「…………っ」


 一市民は吹っ飛ばされた。


 意識を失う。


 魔術は一切使っていない。


 宣言が無いことからソレは分かる。


 が、


「マジか」


 が衆人環視の意見だった。


 魔術だけでも一般には脅威だ。


 その上で武術まで極めるとなると、


「その戦力如何ばかりか?」


 思案に値する。


「さて」


 軽やかなミズキの言葉。


「デートを再開するか」


 特に正常主義者の襲撃に思うところもないらしい。


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