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第73話 学院祭パニック14


「王女として勅命します」


 嫌な予感バリバリ。


 とはいえこれも平常運転ではあろうけども。


 すでに何度も通った道だ。


「ミズキ?」


「へぇへ」


 いい加減慣れた頃合い。


 いくら繰り返せば良いのか。


 それもちょっと分からないが、何にせよギフトの言葉も留まるところを知らず……王侯貴族の不条理さもおよそ市民の観念通りに無天で。


「添い寝してください」


「…………」


 言っている意味は分かるが、その根幹が理解不能だ。


 無論、


「ギフトがミズキに惚れている」


 は前提条件だが、


「何故に」


 との懸念も必然。


 ロマンスの神様は何かと振る舞いに克己を覚えず……悟るにしてもパーソナルディスタンスの大きさはちょっと把握に苦慮する。


「好きだからです!」


 いっそ清々しい。


「どう思う?」


 ミズキは視線を振った。


 その先には蒼色の瞳。


 セロリだ。


 愛らしく、懐いたワンコの様。


「ちょ」


「ちょ?」


「勅命ならしょうがないかと」


「そんなもんかね?」


「殿下の気持ちも分かりますし」


「そなの?」


「ミズキが好きだから」


「です!」


 誇らしげなギフトであった。


 そんなわけでこんなわけ。


 魔術による明かりが消え、ミズキとギフトは同衾した。


 単に一緒のベッドで寝るだけだが。


 そもそも此方を異性と理識しているかもかなり怪しい範囲範疇なのだが、なんにせよ理解をしていないわけでもないのだろう。


「何時でも歓迎しますからね?」


 夜這いのことだろう。


「一生待ってろ」


 ミズキの容赦無さも青天井だ。


 そんなわけで眠る。


「…………」


「…………」


「…………」


 ミズキとセロリとギフト。


 三者三様の寝付き。


 サラリとセロリも寝ていた。


 最初に意識を失ったのは当のギフトだった。


 ペチペチと頬を叩いても反応せず。


 別のベッドで寝ているセロリに問う。


「セロリ?」


「何かな?」


「お前は……」


 そこで少し言葉が途切れる。


「はふ」


 と吐息。


 そして言う。


「ギフトの横柄を許せるのか?」


 およそ聞きたいことは他に無く、地雷のような気もするがソレを気にするなら今のミズキの自己同一性をこの様に確立することもなかったろう。


「ミズキちゃんは魅力的だから」


 それがセロリの言葉だった。


「恐悦至極」


「本当だよ?」


「さいかねぇ?」


 謙遜のようなそうでないような。


 把握するのも苦慮する様な。


「世の中の摩訶不思議はいとも容易く常識を蹂躙するよなぁ。男の子としてここからどう対処するのがセクシャル的に正解なのか。ま……別にいいか」


「だよ」


 南無妙法蓮華経。


「しかしイベントの方はどうするか」


「大丈夫だよ」


「何が?」


「色々と」


「?」


 困惑。


 ミズキには珍しい。


 不遜を旨とする彼にとってはどうでもいいようなそうでないような……やっぱりどうでもいいような。


「にゃ」


 とセロリ。


 サファイアの瞳が夜光に透き通る。


 本当に、


「おまさんは可愛いな」


 そう言えるミズキだった。


「ふえ……あう……」


 赤面。


「見えはせずとも察せる」


 の領域だ。


 からかい甲斐があるとも言う。


「ミズキちゃんの意地悪」


「性根が腐ってるからなぁ。あははは。こればっかりは生まれつきの業というか三つ子の魂百までというか」


 心底からの言だった。


 事実そうだから救い難い。


「へっぽこ」


 と呼ばれ蔑まれた。


 そしてソレに安寧を覚える。


 悟り難い人格だった。


「誰の不利益になるものでもない」


 がミズキの意見だが、ヒロインたちはまた別の見解を持っている。


 気にするミズキでもなかろうが。


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