表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/176

第57話 モテ期は突然やってくる17


 決闘の日。


 へっぽこのミズキと普遍的学生の試合。


 案の定……ミズキはメイド服姿で現われた。


 闘技場に喝采が奔る。


 然もあろう。


 何処から見ても可憐な乙女。


 アルビノのメイドとなれば男性諸氏の性欲を刺激すること大だ。


 彼にしてみれば公開処刑も同様で、けれども同調圧力の強さばかりは魔術の威力でも如何ともし難い。


「やっべ」


「男でも良い!」


「絶対にカノン先生の催し物に!」


 何やら薄ら寒い言葉まで出てくる始末。


 特別顧問。


 カノンが催し物をするのは宣伝で広がっていた。


 超の付く美少女……かしまし娘のメイド奉仕は夢広がリングだったが、


「ミズキもいい」


 と修羅の道に足を踏み外す輩まで出る始末。


「良いんでしょうか?」


 円形闘技場の観客席で首を傾げるジュデッカ。


「良いか悪いかなら悪いんだが」


 とは後のミズキの談。


 当然賭け事も行なわれたが、倍率は半々。


 そもミズキは指折りの実力者たるサラダを打ち破っている。


 色々と制限付きでの決闘であったため、


「勝利の結果が実力ではない」


 の典型例だが、逆に言えば、


「決闘のルール内でならミズキにも理論はある」


 と逆説的な証左でもある。


 ミズキは相手方の戦力を把握してないが、これは油断ではなく自負から来る物であって学生レベルでの決闘ならハンデの百在っても彼が勝ってしまうだろう。


 無論、知っている人間は限られるが。


 南無三宝。


 その対戦者はミズキを睨みやっていた。


「巫山戯ているのか」


 と。


「気持ちは分かる」


 それがミズキの意見だ。


 メイド服で現われること自体が非常識だ。


 決闘に於ける姿勢の誤解を招く。


「馬鹿にしているかいないか」


 ならば確実に、


「馬鹿にしている」


 のだが、学院祭への布石では譲れないところでもある。


 そもそも当人からして納得していないのだから、


「他人の説得は困難を極める」


 が本音だ。


 ミズキも中々苦労人らしい。


 言葉の応酬を何度か繰り返して、それから二人は距離を取る。


 決闘。


 一対一。


 ただし、


治癒強化ヒーリングのフォロー内での攻撃」


 が条件。


 客席が熱意で沸き上がった。


 始まりの合図がなる。


 血潮は最高潮。


「――火球ファイヤーボール――」


 宣言。


 男子生徒が攻撃を加える。


「…………」


 特に魔術を使うでも無くサラリと躱すミズキ。


 背後から閃光と爆音と熱風が襲った。


 人一人程度ならミディアムに焼き上げる魔術だ。


 治癒強化の範囲内とは言えど、場合によってはショック死も検討に入る。


「神様も意地悪だな」


 ミズキは苦笑した。


 世界の創造神が構築した熱力学を否定する法則ルール


 それが魔術だ。


 攻撃的で始末に負えない。


「そこまで人を戦わせたいか」


 は不敬ながらミズキの思うところだ。


 実際に兵力の基礎として魔術が仕組まれているので、そこは疑うべくもないものの苦笑の一つも出ようぞとの様子。


「まぁいいんだが」


 ミズキとしてもそのルールに従っているわけで、


「皮肉はそのまま打ち返される」


 の典型だ。


 結局魔術師とは業の深い存在なのだろう。


 居たら居たで、居なかったら居なかったで、


「相応に不条理……か」


 まさにその通りだった。


「――燃焼バーン――」


 さらに敵対者が宣言を唱える。


「火の属性か?」


 真っ当な推論。


 炎がテーブルクロスを広げるように周囲を覆い尽くし灼熱とする。


「中々だな」


 そう思念で論評し、


「――術式拡散システムディフュージョン――」


 風で防御する。


 するすると糸を解くように霧散する炎。


 その中を突っ切って敵対者の前の姿をさらすアルビノメイド。


「ちっ!」


 懐からナイフを取り出して襲いかかる生徒だったが、


「未熟」


 それが意識を手放す最後に聞いた言葉だった。


 ナイフの刺突を鮮やかに躱して、首筋に手刀を打ち込み意識を奪う。


「ふ」


 と吐息。


 圧勝だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ