第52話 モテ期は突然やってくる12
「あー」
起き上がる。
朝ははよから欠伸を一つ。
学生寮だった。
ミズキとセロリの住まう場所。
一般的には不道徳だが、
「魔術師の子は魔術師」
と言われているため、魔術師は子を為すことが国益に繋がる。
ミズキはどちらかと云えばこの意見には否定的だ。
元より親が然程の出自でもない。
とはいえ、おかげでセロリと同室できるのだから世の中は上手く回っている。
「おはよ。ミズキちゃん」
蒼い髪をリボンで結んだ美少女……セロリが声をかけてくる。
「珍しく早いね」
「なんだろな」
基本的に講義に出ず、かつ学院に在籍する身であるため、
「頭が痛い」
が講師陣の通念。
気にするミズキでもなく、本来は早朝に眼を覚ますことは無い。
とはいえ全ての肉体を意思の下で操作できるわけでは無いので、たまには早起き程度もする。
「お腹減ってる?」
「ほどほどに」
「じゃあ作っちゃうね」
いつものことだ。
概ね家事全般はセロリの仕事。
「なんだかなぁ」
と思いつつダイニングに顔を出す。
水出し紅茶とガラスコップが置かれていた。
「器用な奴め」
小さな声で賞賛を呟き、渇いた喉を紅茶で潤す。
「ベーコンサンドで良い?」
「構わんよ」
特別リクエストが有るわけでも無い。
何よりセロリの手料理は例外なく美味い。
ここは他ヒロインと比べて一日の長がある。
カノンも手料理を作りたがるが、
「ミズキちゃんの嗜好と好き嫌いを一番把握してるのは……」
と自負で語るのもセロリらしい
「はい。朝食」
「いただきます」
そんな感じでベーコンサンドと塩のスープ。
スープには豆が入っていた。
「どうかな?」
「美味い」
端的だが、それ故本心と覚れる賛辞。
「えへへ」
乙女の心の栄養だ。
「ていうかキャンペーンはもう始まってるんだな」
何かと言えばメイド服。
既に着替えているセロリである。
不足無く似合っていてオメガフレア。
「洗濯はどうするんだ?」
至極真っ当な意見だが、
「ローテーション」
が妥協地点らしい。
「さて」
ベーコンサンドをアグリ。
「俺は?」
「着て貰うよ?」
「へぇへ」
あったま悪いキャンペーンだが、
「付き合うのもしがらみか」
と諦観に片脚つっこんでもいる。
スープを飲む。
「楽しそうだな」
「うん。お祭りだからね」
遠慮無くセロリは笑う。
喜怒哀楽の表情豊かな女の子だ。
ミズキとしてもそこは評価している。
「まぁいいか」
反論も億劫だ。
今更知らんふりも出来ない。
「今日は講義に出るの?」
悪意なく。
嫌味なく。
純朴にセロリは聞いた。
蒼の瞳が白のソレを覗き込む。
「もう予習はしてるからなぁ」
駄目人間の理屈だ。
気にするミズキでもないが。
「ミズキちゃんって完璧人間だよね……」
「どこが?」
心底不思議なミズキだが、
「えーと」
少し目を泳がせるセロリ。
「勉強も運動も出来るでしょ?」
「誰だって出来るだろ」
「格闘能力も高い」
「まぁ必要だからな」
「イケメンだし」
「照れる。やめて」
「で、欠陥だと思っていた魔術については開いた口が塞がらない感じだし」
「…………」
一応学院側の評価はへっぽこだが、かしまし娘は事情を知っている。
「性格は問題にしないのか?」
「王子様だし」
オンソジリシタソワカ。




